指導対局いただいた話2:黒番
2日目。今度は黒番でお願いした。前日は後半やや時間不足になったので、2局目は持ち時間30分+Delay30秒にしてはどうか、とご提案いただき、より深く考えて対局できることとなった。
結果的に、さらに濃厚で至る所に学びのある最高の対局になった。あとから二海さんに解説頂いていっそう理解も深まった。主なポイントに絞って振り返り。
French Defense, Exchange Variation. 序盤は割と指しやすい展開になり、黒番にしてはいい感じに指せていた。一つ目の学びは、白がO-Oとキャスリングしたこの局面。私はここでO-Oと同じくKingサイドにキャスリングした。悪手ではないし、特に評価値が大きく上下することはないんだけど、O-O-OとQueenサイドにキャスリングしてもよかった。あまり経験もなく自信が無かったので避けてしまったが、盤面の状況や駒の向く方向から自然に導かれる手だったようにも思う。既にQueenサイドのKnightが退場しているし、私のKingがf3の白Knightから遠ざかるし、黒Rook2つが白Kingを狙う位置に来る。もともと2つのBishopとQueenが射線で白King方向に向いているので、Rookも合わさる形。あとはf,g,h-pawnたちを押し上げていくと良さそう。
少し進んだ次の局面。11. … Bg4に対する12. h3。ここで大いに悩んだ。最初に考えたのは12. … Bxf3 13. Qxf3 Qxf3 14. gxf3と交換してKingの前に穴をあける展開。白はKingの守りが弱体化するのに加え、Pawn Structureが悪くなる。一方で黒はいい位置に展開していたBishop, Queenが共に退場し、残りの駒を見ると展開が遅れている。g-fileに空いた穴にRookを持ってくるのに時間もかかる。もう1つ考えたのは12. … Bh5と下げてから、13. g5 Bg6のような展開。ここで14. Bxg6 fxg6はRookの道が空いて黒が良さそう。ただこの筋は相手にもBishop2つとQueenが残っているのでどこかでa3-f8のdiagonalからKingに当てられるのが気持ち悪い。
結局悩んだ末にBxf3を選択した。評価値を見てみるとどちらも同程度になっていたのでここは好みの問題なのかもしれないが、体感的にはh5の方が良かったかなと少し後悔した。二海さんも、Bishop, Queenのプレッシャーがなくなって気持ち的に楽になったと仰っていた。下は交換が終わった場面。
ここからお互いに最善手を指し続けて色違いBishopのエンドゲームに。経験の無い形で神経を使う。互いのpawnのPromotion Squareが自分のBishopに守られていない(=相手Bishopに当たっている)状態であることを気にかけつつ、駒を相手Bishopに当たらない位置に移動させた。
少し進んで以下の局面。評価値は互角。ミスなく進めばドローという状態だった。右辺と左辺での戦いは、白Kingの向かう反対側にBishopを振ることでそれぞれ守り切ることができる。f-pawnが嫌だなと思っていたが、後から解析で見てみると実はこれは試合の優劣には影響のない駒で、機会があればとることができた。変化を生み出しうる駒で動くことのできるのはb-pawnだけ、という場面。
白はKing, Bishopを寄せてからの56. b4。この時点で試合は2時間が経過。この衝突を正しく捌けばドローという局面だったのだが、ここで私がaxb4と取るミス。56. … axb4 57. a5の後、58手目で黒b-pawnをとるのはaxb6となぜか決めつけていた。白のa-pawnがb-fileに移ってしまえば、Promotion Squareはb8なのでこれは黒Bishopで守れる、と思っていた。Kxb6が完全に読みから抜けていた。
その58. Kxb6でこの盤面。a-pawnのPromotion Squareは白マスなのでこれを止める方法が無く、ここでリザイン。
このエンドゲームは最初からドローになるのではないかという感覚があったが、何度か「対応を間違えたら負ける」というポイントがあった。都度気を付けて指したが正直読めていなかった危ない筋があり、結果的に指した手が運よくその筋も回避していた、という具合に運にも助けられて最後まで善戦となったのだけれど、最後の最後でやはり実力差が出た、という感じ。特定のラインがすっぽり読みから抜けるというのは先日の大会でもあったし、最後の最後まで集中を切らさないで読み切る力、というのは大切な実力のファクターなのだと痛感。
他にも随所に学びのある大変濃い内容の試合で、二海さんには本当に素晴らしい機会を頂いた。感想戦でのご指導も的確でわかりやすく、親切なお人柄が伝わってきた。Encouragementも含まれているとは思うけれども、色々と褒めてくださって素直に嬉しかったし、負けることの方が多い中で続けていく力を頂いた。
ちなみにこの2日間の棋譜をChess.comのAnalysisで見てみると、白番でのGame Ratingが2000、黒番でのGame Ratingが2250と、見たこともないような数字が出てきて嬉しかった。強い方が相手だと、一手一手の思想が伝わってきて、こちらも考えを正しい方向に向けてくれる気がする。
後日談:この指導対局のあとChess.comでランダムに対戦したら、似たような色違いBishopのエンドゲームになった。指導対局で勘所や急所を肌で学んだので、それを活かして綺麗に勝つことができた。祝。