ミュージカル「憂国のモリアーティ」Op.3【感想】

本誌最新話、そして次の話が反映されている、そんな原作者さんのツイートを見て軽い気持ちで見始めたミュージカル「憂国のモリアーティ」。あまりにも面白かったので勢いのままOp. 3まで視聴してしまいました。

2.5次元はあまり見たことがなく、失礼ながら原作の派生くらいにしか思っていなかったのですが、いい意味で期待を裏切られました。ミュージカルも立派に一つの「憂国のモリアーティ」という作品でした。とりあえず視聴期間の一番短いOp. 3から感想を残しておこうと思います。

まず、何より歌が素晴らしかったです。ウィリアム役の方はじめ名前のついたキャラクターを演じられている方はもちろんなのですが、アンサンブルの方々の歌が本当に聞き心地が良くて、約3時間まったくだれることなく作品に集中できました。劇中、短いフレーズを繰り返す曲がたくさんあるのですが、これが物語の邪魔をせず、かつ、印象的なのはアンサンブルの方々のレベルの高さによるものなんじゃないかなと思います。

そして何より、ウィリアムとシャーロックのそれぞれの個人の心情、相手への思い、二人の関係性が歌とお芝居を通じてダイレクトに伝わってくるのが本当に良かったです。原作ではどうしても同じ場所にいることが少なく、また、最後の事件まで個人の心情の描写が少ない(特にウィリアム)と思うのですが、ミュージカルでは同じ舞台上に立ち、歌の掛け合いであったり、セリフが重なる演出であったり、二人の唯一無二の関係性が自然と感じ取れました。また、ウィリアムの孤独やシャーロックの焦燥感、アルバートの葛藤であったり個人の心情が物語上手く織り込まれており、見終わった後は原作に対する解像度が一段上がる、そんな作品でした。

そして、キャラクターの心情を織り込みつつ、ミュージカルの時間制限の中で原作を再構築されている脚本、演出にも脱帽でした。これは1,2作目でもそうなんですが、ただ劇中の入りきらない原作を削って話を作るのでなく、必要なエッセンスを残しつつ物語を新たに組み立て、さらにそこにミュージカルならではの演出、表現でキャラクターの思いを乗せてくるのが本当に2.5次元として百点満点だなぁと感じます。

最後、何人か感想を書いておこうと思います。

ウィリアム
これぞ主役という存在感と歌声。全員で歌っていてもこの方の声だけははっきりと聞き取れるのは本当にすごいなと思います。そして何より孤独を歌う演技が凄かった。仲間が大切だからこその孤独、そして悪逆の中で出会った対等な頭脳を持つシャーロックに対する希望をひしひしと感じられて、このミュージカルで最後の事件が見たいという思いが増しました。

アルバート
原作の押しなので、今回のソロが本誌と重なり心をズタズタにされました...原作では歪さを感じさせるところはあれ、あんなに飄々としていたのに...ソロの後悔と葛藤の演技もさることながら、ちょっとした笑い声なんかもまさに兄様という感じで素敵でした。

ルイス
個人的にこの方の歌声が一番好き。ソロでは主役級の存在感があるのに、はもりにまわるとスッと存在感が薄れ主旋律を彩るような歌い方をされているのが印象的でした。原作はこのところイケメンルイスなので久しぶりに兄さん狂信者のルイスが見れて可愛かったです。

シャーロック
ミュージカルでは一番の押し。今作はどちらかというと焦燥や葛藤の演技が多かったけれど、原作より純粋な変人要素?が増した演技が大好きです。一人の学生では大人として学生の背中を押すシーンが普段とのギャップもあり恰好良かったです。学生時代の自身を重ねているのかな、とも思ったり。

ワトソン先生
シャーロックの相棒が板についてきた感じが良かったです。所々シャーロックについて語るセリフがあり、直接的にはあまり出てこないけれど、シャーロックの物語を書くのはジョンなんだなと感じる演出が印象的でした。オリジナルでジョンの真面目さや正義感を感じられるエピソードもあり、ますます四つの署名が楽しみです。

レストレード警部
出番たくさんあって良かったね!正直なところ原作とはちょっと感じが違うなとは思うのですが、毎回重めの話の中でちょっとした笑いを届けてくれるお茶目な警部も好きです。まぁ原作でもパペットはやってる訳だしもともとお茶目なのかもしれない。今回は正義に熱いところも見れて良かったです。

私は伏線とかにあまり気付けない鈍感読者なので、こうしてミュージカルとして歌と演技で示してくれると原作で今まで気づけなかった要素に気づけたり、ここはこういう心情だったのかなと考えたり、しばらくはミュージカルと原作の往復で楽しめそうです。

きっとOp. 4もやってくれると信じているので是非とも生演奏で観劇してみたいなと思います。といってもチケット競争はすごいことになりそうですが...何はともあれ、2.5次元初心者が次は生で観てみたいと思えるような素晴らしいミュージカルでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?