『哲学』の散歩道 Vol.11「システム」論Ⅴ
前回は、「構造的なお話」として「基本四象限」に触れ、象限を分かつ「軸」の意義を概観していただいた。
本日は、その象限に与えられるそれぞれの「語彙」について見ていくことにする。
自分自身の居心地が、どのような要件によって支えられているのか。それを見ていくことにしよう。
1)環境の四象限
WHO世界保健機構が健康憲章として掲げている語彙について考察すると、居心地の良い環境が何によって規定されているのかが見えてくる。
以上のように、身体、社会、そして精神というキーワードが考えらえている。Mentalをどのように訳すかという問題もあるが、健康憲章はこのあと、spiritualという用語を導入するかで採択された経緯があり、現状の憲章で支障がないとしてその扱いは保留になっている。
つまりメンタルを心理的と捉え、スピリチュアルを精神と捉えれば、これは、とりもなおさず、「基本四象限」の語彙に等しくなる。
私たちは、誰しも「身体」を持っている。そして人々の関わりの中で文化的な営みを支える「社会」に暮らし、それぞれの家族や会社、組織や集団に生まれる「心理」があり、自らの意志で動く「精神」がある。
それらは、どれ一つ欠けることなく「私」を取り巻いている。
これが「基本四象限」の意味である。
2)個々人と集団、内面と外面
そして…もう一つの二面性
ここからは、基本四象限がもつもう一つの側面を解説していく。
「基本四象限」には、上記のような四つの語彙が「私」という存在を取り巻いていたのだが、ここで、さらに踏み込んだ概念的解釈を必要とする。
実は「公私」という境界が存在する。
世の中の人間関係は、私がいるなら、あなたもいる。四象限で「あなた」の存在は、基本的に「集団」という範疇に入る。
「私」あるいは、「自分」にとって、集団の中でも、より親しい関係からそうでもない関係まで、様々だ。
私的とは、よりプライベートと考えてよく、公的とは、よりパブリックとして振舞うことである。
今後の話の伏線にもなるので、ここで「私」という存在と「自分」の存在とはどう違うか、できるだけ厳密に定義してみようと思う。
一つの考えとして、「私」の存在を「公」の身鏡(*:半面教師のような役割) と定義し、「自分」を眺めるツールを「己」と定義したいと思う。
つまり、「公」とは、「私」を映し出す世界とも言える。そして「己」は、映し出された「私」を眺め「自分」との整合性を調整するツールと言えよう。
現時点では「私」と「公」を分かつ面は基本四象限自体にあり、「己」については、また詳細を解説するが、「自分」と「己」は、次に解説する内部外部を分かつ円の「境界ライン上」にあるとしておく。
「公私」の「境界」は、比較的日本人には意識しやすい。なぜなら「日本語」には「私」あるいは「自分」を表現する語彙がたくさんあるからだ。
表現する語彙がたくさんあるということは、「自分」と「相手」の関係性を意識する習慣があることを示している。
例えば「私」の他に「僕」「俺」「我」「拙者」「吾輩」「朕」など、状況に応じて使い分けをする。
これらの語彙は、自分が相手とどのような関係になっているのかを意識する機会が多く「公私」を弁える習慣があることを意味する。
そしてこれらの意識で行動様式や思考自体も変化する。
この境界自体を生み出しているのが「基本四象限」そのものだ。
つまり、私たちは、誰しも「身体」を持っている、が同時に「身体」は、私人性や公人性として振舞う。
そして人々の関わりの中で文化的な営みを支える「社会」に暮らすと同時に「社会」は、そこに帰属する私的な組織と、公的な組織の姿がある。
また、それぞれの家族や会社、組織や集団に生まれる「心理」には、私的な心理もあれば、公的な心理もある。
さらに、自らの意志で動く「精神」にも、私的な精神もあれば、公的な精神もある。
このように「基本四象限」自体に、「内面」「外面」を分かつ縦軸、そして「個々人」「集団」を分かつ横軸が存在し、基本四象限自体が、「私人性」と「公人性」を分かつ面として存在している。
3)能力としての「境界」
自分の存在
ウィルバーが示した「基本四象限」は、時間軸として原初の段階から私たちの生活する現在までの発達段階を「四点創起」の広がりで表現している。
単純に「基本四象限」に示した円を「自分」として、現時点でのパフォーマンス(能力)と考えてもよいだろう。
次に、この円の「境界」は何を意味するかを考えなければならない。
ひとまず、ここでは、「内部」「外部」という新たな語彙を使い区別していくことにする。
これについては、また次回、『哲学の散歩道』Vol.12「システム論」Ⅵ でお話しよう。
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