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UWCサバイバル日記 ~トランジット大失敗の巻 Part3~

日本の高校を2年生の夏で中退し、オランダにあるUnited World College Maastrichtで勉強している17歳のCOCOです!
UWC生活の中で巻き起こる 数多くの珍事件 を書き綴る、UWCサバイバル日記を始めます!

日本への一時帰国からオランダに戻ってくる道中での出来事 -Part3-
とうとう最終回。

フランクフルトにようやく到着したのが午後6時くらい。そこから荷物受け取り所まで長い空港内を歩いた。手荷物受取所はものすごく広くて、自分の手荷物がどのレーンに到着するのか分からず、すかさず警備の人に聞いて、掲示板の見方を教えてもらい、なんとかVeniseからの荷物が届くレーンまで来た。順調に荷物が流れ始めたものの、いっこうに自分のスーツケースが現れず嫌な想像が頭の中によぎった。これ以上は勘弁してくれという気持ちでいっぱいだった。

ふとその時、スーツケースの中にAppleのAir Tagを入れていたことを思い出した。姉と知り合いの先輩から留学前にいただいたうちの一つを、こういう時のためにいれておいたのだった。すぐさまスマホを取り出し、祈るような思いでAir Tagの位置情報を確認すると、

Venise空港の真上にピンがさされてあった。

。。。

一瞬、自分の不運続きに心が折れたが、3秒後には気を取り直して、近くを歩いていた係員さんに、「lost-baggageしたんですが、どうすればいいですか?」と聞きに行っていた。
この旅での一番の成長は、人に聞きまくれば、なんとか生きぬける。と知ったこと。なんだかんだ、みんな優しい。もちろん、嫌そうな対応されたり、英語わからんって言われたり、あるはあるけど、ほとんどの人が優しく応対してくれた。

荷物をなくした人の対応をしてくれるコーナーには5,6人の列があった。みんな災難だったね、と同情の気持ちを持ちつつ、私はジェントルマン風の年配の優しそうなおじいさんに担当してもらうことになった。パスポートを渡すと、Veniseでの乗り換えの際に荷物の移動が間に合わなかったようだ、とのことだった。彼はまず私に、連絡先や今住んでいる住所を紙に書くように指示した。言われた通りの記入が終わると、すかさず質問した。
「When can I get my laggage? (荷物はいつ届きますか?)」
はじめは分からないといった感じだったが、きっと水曜日には、と言われた。その日が土曜日だったから、4日後とのことだった。

授業は月曜日から始まり、学校のノートや書類はすべてスーツケースの中なのに、、、。

でもこの気持ちを目の前のおじいさんにぶつけても何にもならないから、ただ一人がっかりしていると、
横から中年のアラブ系のおじさんが急に近づいてきて、
「I lost my luggaeee」とほぼ泣いているような弱弱しい声で私の対応をしてくれていたジェントルマンおじいさんに訴えに来た。すごく焦った声で、どうしたらいいのかもう分からないというような風で「Help me, Help me please, I lost my luggge,」
と彼は叫ぶように訴えた。

そうだよな、めっちゃ気持ちわかるで。

という同情の気持ちでいっぱいになった。
ただ、ここに並んでいる人みんな荷物なくしてるんやで、同じやで、と言いたくなった。これだけうろたえている人を見ると、急に自分は冷静になっていった。

ジェントルマンおじいさんは、そのあと私に、スーツケースの見た目や中身について質問してきた。はじめは、スーツケースの色は?とかブランドは?とか、そういう質問だったけど、途中から、スーツケースの中にはどういう類のものが入っているの?とか、分かりやすい目立ったものはある?とか。
え、スーツケース開けるの?鍵かかってるんだけど、壊して開けるの?って思わず質問すると、荷物タグが外れた際には、中身を開けて確認するんだ、とのことだった。鍵を壊されるのは絶対嫌だと思った。来夏の帰国時に使えなくなってしまう。ロック番号を伝えたら壊さないでくれる?と交渉し、一応スーツケースのロック番号を伝えた。
あと面白かったのは、文房具類が右側に入っていると伝えたときに、本は入っている?と聞かれた時。なんで本?と聞くと、題名が分かるとスーツケースの特定に使えるから、らしい。そこで、英語の課題本が入っていることを思い出した。

【The Curious Incident of the Dog in the Night-Time】

題名を聞いた瞬間に、ジェントルマンおじいさんが笑いらした。たしかに、夜中に犬に起こった奇妙な事件なんていう本を17歳女子が持っていることが可笑しかったのかもしれない。

おじいさんにお礼を言って、スーツケースの手配を済ませたころにはすでに午後7時を回っていた。ここからマーストリヒト駅まで電車で2時間はかかる。だいぶ遅くなったな、と思いながら、フランクフルト空港駅まで移動した。
ここから学校までの道のりはこうだ。
フランクフルト空港駅⇒コルン駅⇒アーヘン駅⇒マーストリヒト駅⇒徒歩30分⇒学校
一番の問題は、フランクフルト駅からコルン駅までのICEという急行列車のチケットが、12時間前のものでも使えるのか、ということだった。私の持っているチケットは朝7時発のもので、今は午後7時。とりあえずチケットセンターに向かった。

ところが返事は意外にもあっさりしたものだった。
そのチケットでそのまま乗れるよ。
あ、そう。。そんなゆるゆるな感じなんだ。
ドイツでは列車の遅延なんて日常茶飯事だから、列車の時間指定などほぼ関係ないみたいだった。例えば私の場合、午前7時っていう朝のすいている時間帯のチケットだったから35€くらいで購入して、午後7時に乗ろうとしていた列車は超特急だったのもあって90€だったけど、35€のチケットのまま乗れるらしい。なんと得な(笑)。日本ならありえなさすぎる。

そのままコルン行きのホームに行き、満員電車を1時間ほど立ちっぱなしで耐え抜きコルン駅に降り立った。コルン駅はとても大きな駅で8つくらいホームがあった。アーヘン行きの6番ホームに行くとすぐに電車が到着し、そのまま飛び乗った。30分くらいでアーヘンにつく予定だった。20分くらいウトウトして、ふと電光掲示板に目をやると、
あれ?最終目的地がアーヘンじゃない。
何かの間違いかと思った。
いそいでスマホを取り出してGoogle Mapの位置情報を確認すると、コルンから左に移動しているはずの青い矢印は、下向きに移動していた。

違う電車に乗った。

あ、やらかした。っていうとき特有の、あの謎の時間が止まるチーンの時間が5秒くらいあって、とりあえずコルンに戻ろうと思った。今、自分がいるところがどこなのかも分からなかった。ドイツにある、どこかの駅にいる。これだけの情報でどうしたらいいのか。とにかく次の駅で降りてみると、すごく小さな駅で2つしかホームがなかった。反対側のホームに行くとKolnという文字があったから、ここで待っていたらKoln行きの列車が来るだろうと思った。

ここで一つまだ書いていなかった非常にまずい事態が発生していた。
この時、スマホの充電が5%だったのだ。
モバイルバッテリーはない。この知らない駅で、スマホはこの後のことを考えると、もう使えない。この旅一番の絶望的状況だった。
だれもいないドイツのホームに独りぼっち。こんな時間に帰ると思ってなかったから薄手のコートしか持ってない。誰かに電話することもできない。とてつもなく心細くて、泣きたくてたまらない気持ちでいっぱいだった。生きて学校に到着できるのか。そんなマイナスな感情を押し切って、なんとかギリギリのところで気持ちを保っていた。電車は体感30分くらいで到着し、他数人の乗客と一緒に乗り込んだ。乗ってすぐに年配の女性の方に、この電車はKolnに着きますか?と聞くと、Yesとのことで、少し安心した。

20分くらい電車に揺られると、Kolnに到着した。次こそはちゃんとアーヘン行きに乗らなくてはならない。その時点で9時をまわろうとしていた。またも6番ホームに戻ってきた。今度は掲示板をよくよくよく見て、時間を確認した。どうやら同じホームでもいろいろな行先の電車が来るようだった。日本だと同じホームには急行とか普通とかいう違いだけで行先は同じだから、まさかぐちゃぐちゃに電車が入り混じってホームに来ているとは知らなかった。
この時充電4%。もしもの時のために電源を残しておくため、この時に電源を切った。アーヘン行きに乗り込むと、またも満員電車だった。この疲れてどうしようもない時の30分立ちっぱなし電車はきつかった。ただ早く時間が流れることを祈った。やっとの思いでアーヘンについた時には10時ちかかった。ここで、アーヘン駅からマーストリヒト駅の直通電車がキャンセルされていることを知り、道を変更することになった。
アーヘン⇒ハースレーン⇒マースリヒト
実は行きでも同じことが起きたから、この変更は案外スムーズにいった。ありがたかったのは、アーヘンからハースレーンにはコンセントがあった。ありがたく使わせていただき、これでスマホを使えるようになった。ハースレーンで無事にマーストリヒト駅行きに乗れた時には安堵の気持ちでいっぱいだった。

その電車の中で、
もうこんなのは、ごめんだ。
と思った。

マーストリヒトには11時に到着した。見事に予定より14時間遅れてのことだった。14という数字だけ見ると大したことないみたいだけど、本当に大大大冒険の旅だった。

学校の寮に無事にもどってきたとき、本当にうれしくてたまらなかった。生きて帰ってこれたことが、本当にうれしかった。両親に無事を伝える電話をし、その日はそのまま布団に入り、眠った。(12時間ぐっすり寝ました笑)

さて、3回にわたってなんとか日本からマーストリヒトへの帰路の旅を書き終えました。書いてみて、ほんとにいろいろあったことを再実感。自分が慣れていないせいで巻き起こした事件も多かったけれど、なんだかんだよく耐えたなと思います。いい思い出ではないけれど、この経験でほんとに成長したことは事実。
諦めない強靭なメンタルと、人に聞きまくって生き延びるサバイバル力、あとは、満員電車を乗り切る足腰も、(笑)。

最後に、私のスーツケースについて。ジェントルマンおじいさん予想通り、水曜日に学校に届きました。Air Tagを入れていたおかげで終始荷物が届くのを確認できたのは、本当にありがたかった。Air Tagは必須です。

ということで、3回にわたった~トランジット大失敗の巻~はこれで終わりです!が、これからもUWC Lifeは続くので、ちょくちょくnoteの更新をしていく予定です。



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