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横断型デザイン時代が来ている-デザインを「しくみ」で捉える新しい時代へ

この30年で、「デザイン」はさまざまな場面で、さまざまな立場から語られてきました。

サービスデザイン、デザイン思考、UX、UIデザイン、UI/UXデザイナー、デザインシステム、デザインエンジニア、デザイン経営 etc…

一方で、その範囲や解釈はどんどん広がり、もはや「何がデザインで、何がデザインでないのか」が非常に曖昧になり、「デザイン」という概念が、捉えづらく、扱いづらいものになってしまいました。

「デザイン」に関する新しい捉え方が必要になってきているのです。


今回は、そんな「広義のデザイン」を捉えるには、

  1. デザインは、独立した部門や機能ではなく、横断的(学際的)なものである

  2. 「美しい見た目 = デザイン」ではなく、「人のためのしくみ = デザイン」である

と考えてみると、うまく「デザイン」を扱っていけるのではないかという話です。

Interdisciplinaryとは、「学際的」という意味で、領域を横断していることを意味します。

「デザイン」が盛り上がるごとに、その意味が広がってきた

「デザイン」という言葉がどのように使われてきたのか、「デザイン」に対して世の中がどう変わってきたのか、その一部を簡単にまとめてみました。

  • 1991年には、「デザイン思考」で有名なIDEOが設立される

  • 1998年には、「UX」という言葉がノーマン(Norman, D.A.)によって提唱される

  • 2004年には、「ダブルダイヤモンド」が問題発見と問題解決のフレームワークとして提唱される

  • 2008年には、「サービスデザイングローバルカンファレンス」がアムステルダムで開催される

  • 2014年には、Googleからガイドラインである「マテリアルデザイン」が発表

  • 2020年には、デザイン会社としてGoodpatchが初の上場

  • 2022年には、Figmaが日本進出

上記はほんの一部で、かつ、デジタルでの話を中心に出しているものです。
「デザイン」というワードの盛り上がりを感じるとともに、その広さや幅もどんどん増しているように感じます。

「デザイン」に関する書籍もここ数年で大きく増えてきましたね。

  • なるほどデザイン(2015)

  • ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版](2016)

  • UXデザインの教科書(2016)

  • Design Systems ―デジタルプロダクトのためのデザインシステム実践ガイド(2018)

  • UIデザインの教科書[新版] マルチデバイス時代のインターフェース設計(2019)

  • This is Service Design Doing サービスデザインの実践(2020)

  • デザインリサーチの教科書(2020)

  • はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために(2021)

「デザイン」はもはや1人・1チームで完結するものではない

さまざまな場面で「デザイン」が使われていくなかで、新しい動きも出てきました。

複数人でのデザイン作業

Figmaなどのデザインツールを使って、共同で作業する場面も多くなりました。

また、共同作業がしやすいようにデザインツールを提供する各社はコラボレーションや共有機能を強化しています。

デザイン組織の分化

「プロダクトデザイン組織」「コミュニケーションデザイン組織」など、デザイン組織を役割や専門性で分ける企業が登場しました。

先日開催した #コムデ組織づくり のイベントでは、SmartHRさんのコミュニケーションデザイン組織について、その変遷や現状を話していただきました。

SmartHRコミュニケーションデザイングループ(通称:コムデ)について、詳しくはこちら


新しい役割 / 職種の登場

デザイナーという職種がこれまで以上に細分化されたのはもちろん、「デザインエンジニア」「UXリサーチャー」など、役割に応じて、これまでになかった新しい職種も生まれてきました。

プレイドさんなど、いくつかの企業では「デザインエンジニア」というポジションでの求人も出されています。

プレイドデザインチームについてはこちら



いずれも、これまでの「優れた個人のデザイナーが、一人で優れたアウトプットをする」という職人的働き方から、「部署や職種をまたいで、さまざまな役割に分かれて、チームで取り組む」動き方へ大きく変わってきています。

デザインの幅も意味も広がっていくにつれ、「デザイン」を一人で担うのは無理があり、一つのチームで独立して初めから終わりまで完結させるのにも無理があるため、これらの動きが起こっているのだと思います。
これらの変化をまとめて「横断型デザイン時代」と名づけると「デザイン」が捉えやすくなります。

横断型デザイン時代では、デザインの役割が多様化する

デザインが横断的に、より広くなることで、これまでよりも多くの部署やチームに関わるようになります。

例えば…

  • プロダクト設計・開発に関わるデザイン

  • セールス・マーケティングに関わるデザイン

  • 組織に関わるデザイン

などなど…。
関わるチームが増えて、横断的になることで、デザインの役割が多様になっていきます。デザイン組織が分かれてきたのもこのような背景だと考えられます。

キーワードは「しくみ」

そのような、横断型デザイン時代では、いわゆる「美しい見た目」がアウトプットや成果物になるのは、ごく一部です。

例えば、以下のような活動。

  • デザインの原則や考え方をまとめたデザインシステム

  • ユーザーインタビューなどのリサーチ活動

  • 全社で使うスライドの運用ルール策定

  • 多くのクリエイティブをつくるための体制づくり

  • プロダクト改善の運用フローづくり

  • カルチャーを浸透させるための仕組み

これらも全て、デザイン活動です。

つまり、デザインが広く、横断的な今の時代では、デザインを「人がより良く行動できる、考えられるための『しくみ』」と捉えるのが自然なのではないでしょうか。

アプリの画面も、使う人(ユーザー)がうまく行動できるためのしくみであり、マス向けの交通広告も見る人(ターゲット)がうまくサービスを認知できるためのしくみです。デザインシステムも、社内のメンバーがうまく自社らしさを表現するためのしくみです。


そんな「人のためのしくみ」を、新しい時代のデザインを、みんなで集めていく場所として、先日Cocodaをつくりなおしました。

Cocodaのサムネイル画像

Cocoda

デザインをもっと手触り感のあるものへ

役割や意味が広がるほど「デザイン」は、扱いづらく触れづらくなっている現状に、「デザインって横断的(学際的)なものなんだ」「しくみって捉えたらいいんだ」と、新しい捉え方や考え方をまとめてみました。

デザインの世界で長く活動されてきた方からすると、当然だと思う方もいらっしゃるかもしれません。

それでも、横断型デザイン時代は、デザイナーだけではものごとを前に進めることができません。

そのため、今一度デザインをもっと扱いやすく、手触り感のあるものへとすることで、デザイナーだけではなく、デザインに触れるすべての人に、デザインとの接し方を身につけてもらえるのではないかと考えてまとめてみました。

横断型なデザインの時代が栄えることは、組織全体がデザインを扱えるようになり、人を想うしくみ(プロダクト・サービス)で溢れることなので、きっと良い社会になるだろうと願っています。

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