和田彩花とオムニバス「きいろいいえ」は何故こんなにも私に刺さるのか
「きいろいいえ」は和田彩花名義で発表され、オルタナポップバンド「和田彩花とオムニバス」のLIVEで演奏されている楽曲だ。
作詞はあやちょ(和田彩花さん)で、作曲・編曲はギターのサマーさん(楢原英介さん)。
配信されているスタジオ音源を聴いてすぐに好きになったが、LIVEでの「きいろいいえ」はさらに私に突き刺さった。
この記事ではLIVEヴァージョンの「きいろいいえ」が何故こんなにも私に刺さるのかを考えていく。
13項目書いた。
1, 10, 11は是非読んでほしい。
1. あやちょ×異国情緒×ロック
私はあやちょの声が凄く好きで、異国情緒が感じられるロックな曲が好きだ。
この曲はスタジオ音源版でも異国情緒が感じられるロックな曲だが、LIVEではハラさんのフルートが入ることによって異国情緒がグッと引き上げられる。
荒野や砂漠などを移動しながら生活するキャラバン的な大道芸集団が街道と街道が交わる交易の要所に設置されたやや風通しの良い円形のテントの中でパフォーマンスする情景が浮かんでくる。
日本のバンドで異国情緒×ロックという組み合わせだと、初期の「La’cryma Christi」、後期の「DEAD END」、初期の「L’Arc〜en〜Ciel」、時期を限定するのが難しいが「BUCK-TICK」などが挙げられる。いずれもゴシックロック、ニューウェーヴ、ポジティブパンク、ハードロック(BUCK-TICKは△)、ヘヴィメタル(BUCK-TICKは△)などの影響下もしくはそれらに該当する音楽性を持っている。
きいろいいえは異国情緒×ロックという点では共通しているが、上に挙げたどのバンドとも違った曲調で新鮮だった。
あやちょの心地よい声が堪能できる今まで聴いたことがない異国情緒溢れるロックに出会えたことがとても嬉しかった。
2. 意外性のある曲展開
歌がある部分の主な曲展開は以下のようになっている。
1番はAメロ→Bメロ→間奏
2番はAメロ→Bメロ→サビ
3番はAメロ→サビ
1番、2番、3番でそれぞれ展開に変化がある。
特に3番のAメロ→サビは意外性のある展開だ。
この曲を初めて聴いた時、淡々と進行するが故に迷子になりやすそうな曲だなと思った。特に3番は。
3. 緩急が効いた曲展開
Aメロは緊張。
Bメロは前半は緩和、後半は緊張。
サビは緩和→緊張の繰り返し。
緩急の効いた曲展開が心地良い。
曲が進むにつれて緊張と緩和の間隔が徐々に短くなるのが心揺さぶられるポイントなのかもしれない。
4. ワイルドなイントロ
軽やかなフルート、ハードボイルドなギター、ドライヴ感のあるベース。
やや薄汚れたような雰囲気がワイルドでかっこ良い。
5. 表情を変えるAメロの楽器隊
3回登場するAメロで、楽器隊のフレーズは、1番、2番、3番それぞれでその表情を変えて曲の世界の中での状況の変化を示唆してくる。特にギターやフルートは大きく変化する。
1番、2番、3番それぞれの中で、アクセントの位置や譜割りに注目すると他のパートやメロディとの関係性が見えてくる。
基本の2-3クラーヴェイのリズムに対してメロディは3-2寄りなので、それらが重なり合うことによって生まれる心地良さみたいなものもあるかもしれない。
あやちょの歌もリズムという観点でも重要なポジションを担っている。
6. Bメロ後半の上昇するベースと2/4拍子
「彼?が言ってたの」の「言っ」「て」「た」に合わせて2拍毎にベースが半音ずつ上昇していく。
階段をテンポ良く1段ずつ登っていくようなイメージだ。重力に逆らうような推進力がとても良い。
この上昇は1番は間奏へ、2番はサビへと突入する。
サビに入った時にベースの音はフッと急下降し、浮かび上がったような、もしくは足場が無くなったかのような感覚になる。
Maj7コードの響き、あやちょのロングトーンもまた浮遊感を演出している。
この曲は基本的に4/4拍子の曲だが「た」の部分は例外的に2/4拍子になっている。
4/4拍子の中に、ナチュラルに突如現れる2/4拍子が生み出す少し奇妙な感覚がこの曲のかなり大きなポイントだと思う。
7. サビでの掛け合い
ヴォーカル+コーラス+フルート対ギターの掛け合いになっていて面白い。
この掛け合いが数回繰り返される。
規則的に繰り返されるフレーズが心地良いし、繰り返しの中で生みだされるグルーヴによってさらに曲の中に惹き込まれていくような気がする。
あやちょの歌も繰り返しの中で徐々にヴォルテージが上がっていく。
8. 発展するメロディの形
Aメロとサビでは付点8分音符を用いたフレーズが多用されている。
特にサビは付点8分音符のフレーズの後に、4分音符もしくは8分音符が連続して勢いをつけた後にロングトーンへと展開する。
このフレーズの切り替えがとても良い。
Aメロに出てきた形の発展系のような雰囲気もあり、曲中での統一感が感じられるのも良いのかもしれない。
付点8部音符から4分音符もしくは8分音符が連続するフレーズに切り替わるタイミングでコードチェンジが行われているのもポイントだと思う。
9. アウトロの空間系アルペジオ
空間系の音で妖しい雰囲気が凄く良い。
妖しさのポイントは長6度の音だと思う。
この長6度の音は和田彩花とオムニバスの楽曲「みやしたパーク」のイントロなどにも登場することがある。
こちらもサマーさんの作曲だ。
このアルペジオはランダム要素なので毎回聴けるとは限らない。
10. インパクトがある歌詞
「変人扱いしたの誰?」というフレーズが今までに聴いたことがない歌詞でとても衝撃的だった。
自分にとって自然なスタンスでいた結果、周りから変人扱いされてストレスを抱えていた(抱えている)私に良く響いた。
歌詞がどんなテーマなのか気になったので、とあるLOLOETのLIVEの後、あやちょに質問してみた。
あやちょによると、
・ある選挙の後に世界は変わらないなと思ったこと
・その時考えていた自身の夢
・ゴッホが画家の共同体を作ろうとしたことを素敵だと思ったこと
などが背景にあり、これらが入り混じっているとのことだった。
2023年2月に発表された曲だが、レコーディング時期は渡仏前なのである選挙というのは2022年初頭以前のものだろう。
ゴッホが作ろうとした共同体(ゴーギャンとの共同生活)は結果的には上手くいかなかったが、共同体を作るという目標をあやちょは素敵だと思ったそうだ。
いつかゴッホが書いた「黄色い家」も見てみたい。
11. あやちょの凄い表現
LIVEでのあやちょの歌はスタジオ音源よりもエモーショナルなものになっている。
・「けど少し強引に」の「強引に」
・「答えてくれないけど」の「けど」
・「立ち去らず」の「去らず」
がとても好きだ。
特に「強引に」に関しては歴代あやちょ歌唱の中でも個人的なBEST3にランクインするほどの物凄い表現だ。
「けど少し強引に」感溢れる非常に説得力の高い表現を体感することができる。
1曲の中で2回しか聴けないし、2回も聴ける。
とても心地良い。
そして、歌う時の表情もまた、とても良い。
12. 結論
ここまで「きいろいいえ」が何故私に刺さるのかについて色々と考えてきた。
刺さるという感覚を言葉にするのは簡単ではないが、あえて答えを出すとしたら、(私が)心地良くなる要素が散りばめられた(私好みの)異国情緒溢れるロック曲の中で、あやちょの凄い表現が聴けることなのかなと思う。
繰り返し何度も聴いたり、色々な観点から向き合うことでこの曲がさらに好きになった。
今後もまだまだ色々な発見があるかもしれない。
駆け出し作曲人間の私にとって学びの多い時間だった。
13. 終わりに
LIVEヴァージョンの「きいろいいえ」はLIVEに行くことでしか体験できない。
が、
なんと、7月にBOTTOM LINEで行われたLIVEの定点の映像がYouTubeで公開されている。
嬉しい!
「きいろいいえ」は1曲目だ。
LIVEではイントロ、Aメロ、間奏、アウトロで観客が2-3クラーヴェイのリズムでクラップをするのが定番になりそうな雰囲気だ。
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↑(●のタイミング)
ちなみにこの時の衣装はヒッピーをイメージしたものだそうだ。
また、スタジオ音源は各種配信Serviceから購入できる。
ヲタク活動の傍でバンド鑑賞が趣味だった私にとって今のあやちょの音楽活動は楽しすぎる。
改めて考えてみるとバンドが2つもあるというのが衝撃的だし、「和田彩花とオムニバス」、「LOLOET」はどちらもとても魅力的なバンドだ。
30歳の誕生日を機に独立したあやちょ。
今後の音楽活動からも目が離せない。
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