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何だかひっそり
今日、サビちゃんの亡骸は荼毘に付した。午後、ペット葬儀の人が亡骸を引き取りに来てくれ、数時間で遺骨になって戻ってきた。サビちゃんは生前からほとんど存在感のない子で、いつもどこにいるのかわからないくらい静かな猫だった。
なので時々、水を飲んでいたり、トイレに現れた時「あ〜サビちゃんだ」と思うくらい。ノエルがかなりうるさく鳴く子なので、対象的だった。だが一時マロンがいなくなってしばらくは、サビちゃんもよく鳴いた。猫も高齢になると、前は静かだったのによく鳴くようになる子がいるらしい。そういうことだったのかもしれない。
その頃は少しうるさいくらいだったが、ノエルがうちに来た頃からまたほとんど鳴かなくなった。どういうことなのかよくわからないが、私はノエルの鳴き声で朝起きることが多くなり、サビちゃんの存在感はまたあまり感じられなくなっていた。
そんな感じで、私と暮らしながらも、サビちゃんは孤独に暮らしていたように思う。ノエルは最初の頃、サビちゃんを見ると唸っていたが、それでも相手にしなかった。徹底的に孤高を貫いていたのかも知れない。
そして今日、本当に私の前から姿が消えた。亡骸でもあるうちは存在を意識することがあったが、身体が消えてしまうと、おかしなことにリアリティがなくなった。本当にうちにサビちゃんは暮らしていたのだろうか。そんな変な感覚が今、私の中にある。
ノエルは普段どおりお気に入りのベッドで寝たり、カーペットの上で転がっている。撫でるとゴロゴロ言っている。普段とほとんど何も変わらないのに。存在感のあまりなかったサビちゃんがいなくなっただけで、家の中がなぜかひっそりとしている。この感覚、何だか寂しい。
いつもの森で見つけた何かの実。周りに聞いても何の実なのかわからなかった。食べられそうにはない。きっと中に種があって、これが木から落ちて、実が朽ちて種が土に還っていくのだろう。いつか花を咲かせるのかな。