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不思議な思考

 川釣りがしたい……

 そんなことを仕事中に思い出したかのように考え出す。
 なんで川釣り?
 そして川釣りって何釣りたいの?
 こうやってまとめて考えてみるとボクがその時に考えている本質が見えてくるような気がする。
 そもそも自分のことなのにその本質が見えてこないというのが、いかにボクという人間が浅はかに生きているかが分かるエピソードなのだが、それは当人が一番自覚していることなのであまりつっこまずに読んでもらえるとありがたい。

 さて川釣りと一言に言ってもいろいろある。
 イワナやヤマメを狙う本格的な渓流釣りや、アユを狙う繊細な釣りなど……淡水の釣りも実に面白い。
 川で釣ったことはないけど、ニジマスも渓流で釣れる。
 ただ……
 渓流ってなんだか釣り方がよく分からない。
 渓流というか淡水の釣りでは、あまり流れのない湖に近いところでルアーを投げてニジマスを釣るのが一番好きではある。ただボクの場合はそれすら釣れない可能性が高いので、渓流釣りというのは最初からやらないことに決めている。
 イワナやヤマメなどの魚はどういうところで釣れば釣れるのかさえ分からないし、釣り方もよく分かっていない。
 同じ理由でアユも釣ったことはない。
 大体、淡水の釣りはかなり繊細な釣りで難しいのでボクのようなヘッポコ釣り師には向いていないような気がするのだ。

 それなのにどうして川釣りがしたいのか。
 それは原点回帰というやつなのかもしれない。
 釣りを始めた中学の頃、ボクが友人でもある保井くんと最初に行ったのが川釣りであり、それに関してはヘッポコ釣行記というエッセイの『新玉川』の回で書いたと思う。

 あの釣りがもう一度したいと思うのだ。

 なんでそんなことを思うかというと……
 普段の仕事中にこんな川を見かけるからである。

 

 この川には小さなオイカワが泳いでいるのが橋の上からも確認できる。
 だから仕事中に『ああ……川釣りしたいなあ』って思ってしまうのである。

 小さなフナやオイカワを狙って渓流竿で釣ったのは実はすごく楽しい思い出なのかもしれない。
 ただ、そんな思い出の前に現在のボクの思考が邪魔をする。

 フナもオイカワも食べれないじゃん。
 それじゃつまらないなあ……。

 確かに食べれない魚を釣るのはそんなに楽しくはない。
 釣るだけの楽しみというのもあってもいいとは思う。キャッチ&リリースも考え方としてはアリっちゃアリではある。
 でもやっぱり釣った魚は食べたいとボクは思ってしまう。
 だから鯉釣りなどはあまりしたいとは思わなくなってきた。
 ブラックバスも然りである。

 それでさらにボクは思考を巡らせて考える。
 いや、仕事中なのだから仕事しろよ……という意見が聞こえて来そうなのだけど、大した介護報酬ももらえない仕事なんだからこんぐらいの楽しみは許してほしい。実際に釣りに行ってさぼっているわけではないのだ。

 ん?
 そう言えばテナガエビがいるじゃん。

 思考の先にいたのはテナガエビ。
 そう。
 唐揚げにしたら美味しいあいつである。
 しかもさっきの写真の川にはテナガエビが生息しているらしい。

 おお。
 いいなあ。
 テナガエビ。
 釣りたいなあ。

 そんなことを思いながらスマートフォンでテナガエビの釣り方やどういうところに生息しているかを調べたりしていたのだけど……。
 仕事中に……。

 そんな感じで集中力など皆無の仕事を終え……
 いざ週末へ。
 釣りに行ける!!

 よし!!
 ライトアジの船に乗るか!!

 さあ、釣りに行こう!!
 ……となったときにはボクの頭の中からはなぜかテナガエビは消えていなくなってしまう。
 実に不思議な話である。

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