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職業倫理は崩壊してしまったのか?
ヘルパー事業所から電話。
『(利用者)の肩からお腹にかけて発赤があり、疥癬の疑いがあるので明日から入室できません』
感染するのは嫌だし、他に感染させるのもいけないことだから、言っていることは分からんでもないけど……でも行かないことにしたら利用者の生活はどうなるのだろうか。
先日も金銭でのトラブルがあった利用者に対して『今月いっぱいで契約を打ち切らせていただきます』と言われた。
言われたのは月半ば。
次も決まっていない中でヘルパーが入れないという状況になったら利用者はどうやって生活していくのだろうか。
次を探すのはケアマネジャーの仕事でしょ。
そんな声が聞こえてきそうだ。
でも、見つからなかったらどうするのだろうか。
否。
見つかるわけがない。
あんたらが嫌な利用者は他の事業所にとっても嫌なんだよ。
そんなことも分からんか?
こう言ったら……
そんなことはわたしたちには関係ありません、というのだろうか。
言うんでしょうね。
はっきり言うが……こういうことを言う人はプロ意識に欠けると言わざる負えない。
そもそもどんなにしんどくて嫌な利用者であろうと仕事で関わった以上は責任というものが生じる。
基本的にはなんらかの方法が決まるまでは、対策を講じて対応していくのがプロというものではないだろうか。
これはケアマネジャーの仕事、これはヘルパーの仕事とすべて縦にぶった切って考えるのではなく、共に方法を考えていくのがチームケアという考え方ではないのか?
もちろん、疥癬やその他の感染症にしても、金銭など、なんらかのトラブルにしても、行けない事情があることは理解できる。
ただそれらの理由はすぐに断る理由にはならない。
感染症なら対策して入室すればいいではないか。
トラブルに関しても期間を定めて我慢すればいいではないか。
事業者間で連携してそういう対策をしておくことだってできる。
そのために事業者連絡協議会ってあるんでしょ?
うちはできないけど〇〇事業所に頼んだら対応してくれるそうですよ、と言ってくれたって構わない。
だけど、こうやって後先も考えずに仕事を断られると、職業倫理として利用者の生活を守ると言う義務があるという考え方に欠けていると言わざる負えない。
そんな無責任なヘルパー事業所がここ最近多くなったような気がする。
ちなみにボクが現場のヘルパーだった頃は感染症のある利用者でも防護服着て、感染対策して対応をしていた。
『感染するのが嫌だから行きません』などと言おうものなら……『じゃあ辞めれば』ときつい言葉を返されたものだ。
それが良いこととは思わないけど、日常生活でヘルパーの援助が必要な利用者に対して、よほど援助者の命の危険がない限り『入室できません』って簡単に言うのはどうなのかと思う。
そもそも高齢者なんだからなんらかの感染症の罹患するリスクは常にある。高齢者が感染症になっても安心して日常生活を送れるために我々介護職は存在するのだ。
まあ……
こんな無責任な事業所が増えた背景には、介護職の就労における条件がますます厳しくなっており、この職業を選ぶ人が少なくなっているということは無関係ではないと思う。
給料は少ない……
仕事はしんどい……
休みはほとんどとれない……
そんな状況で、感染症にこちらが感染してしまうリスクのある利用者の家など行くだろうか?
答えは『行かない』だ。
税金を使って利用者の生活を守る仕事が介護職なのだが、その税金で介護職の生活が守れないようなシステムになっている仕事なのだから、職業倫理の低下も仕方ないことなのかもしれない。