『吉祥寺少年歌劇』に思うこと

『吉祥寺少年歌劇』という漫画がpixivで連載されていた。


女性だけで構成される宝塚歌劇団に対し、男性だけで構成される「吉祥寺少年歌劇団」という架空の歌劇団についての漫画で(宝塚歌劇も名称だけ登場する両方存在する世界線)、たまたまpixivで発見した際、媒体がpixivなのもありがっつりBLだったらどうしよう…と恐る恐る第1場を読んだのだが(BLは自分からあまり進んでは読まない←)、心理描写が繊細でリアルでとても面白く、連載をずっと追いかけていた。
連載期間があまりにも短いことに驚きつつ、先日発売された単行本を購入した。(後々調べたら元々短期連載の企画だったらしい。)帯は元宝塚歌劇団雪組トップ娘役、真彩希帆さんだった。きいちゃん!!
単行本にしか最終回(+ボーナストラック)が収録されていないので、まずその部分を読み次に全体を通して読み、宝塚歌劇のファンになってから経験したことと重なる部分が多すぎて思うところが多すぎて、「これは読書メーターには収まりきらん…」となってnoteを書きなぐっている次第である。

結末の重大な重要なネタバレをしているので、上記真彩希帆さん及びその相手役で元雪組トップスター望海風斗さんの退団公演である、『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~及び本書籍を未見の方で少しでも宝塚歌劇や本書籍にご興味のある方は読む前に観てほしいし読んでほしい。どちらも、みるなら最初はネタバレ無しでみるべきものだと思うので。

この本の良かったところをネタバレありで盛大に叫んでしまいたいんですよ。
リアルで繊細で違和感がなくて、あと時勢を反映していて、今だからこそ読めてよかった作品だと思っています。ネタバレありで叫びたい。
あ、わたしは『はいからさんが通る』で宝塚に沼った華優希さん(はなちゃん)最推し、れいはな大好き、だいきほは『fff』しか観られずもっと早くに知りたかった者です。『fff』は、元々ベートーヴェンが身近で好きな曲が多いのもあり作品自体にもとてもハマりました。宝塚は全組観ます。

では、これからどんどん叫んでいきたいと思います。

『吉祥寺少年歌劇』のあらすじは以下の通り。

吉祥寺少年歌劇は「男子のみ」で構成される伝統の歌劇団。
入団へは、付属の音楽学校への入学が必須である。
進藤瑞穂は、男役に憧れて入学したのに
娘役と判定されてショックを隠せずにいた。
首席候補の白井寿に、娘役への不満をこぼすと、
「じゃあ早くやめろ」と冷たく言い放たれてしまい…。

2人はまだ知らない。その出会いは、
互いを舞台の上へ導く運命だったのだと……ーー!

舞台芸術を愛するすべての人に捧ぐ青春輪舞曲!

pixivに連載されていたのは、瑞穂と白井が音楽学校を卒業する直前の文化祭まで。
最終回では、文化祭終演後~卒業~組配属~白井と瑞穂トップペア就任~瑞穂の退団までが駆け足気味ではあるが描かれていた。
時系列で最終回の叫びたいところをば。

1.同期でトップペア就任
いやこれ「男役10年」と言われる宝塚ではあり得ないですよね!?(前例あったらごめんなさい)
音楽学校時代から切磋琢磨(ということばだけでは言い表せないけど)してきた同期で同時就任て。なんて、なんて世界だ。。。
トップコンビ始め、学年差のあるコンビも良いですけど、同期コンビも良いですよね。(トップコンビ以外だとれいまいとことせおとあーさすみれの各ペアが好きなんです…全員95期やな← 学年差あるコンビではまかキキも好きだしずんそらも良いしキキららも好き←)

2.瑞穂単独退団発表
先述の通り、華優希さんの演じるはいからさんきっかけで宝塚にハマったので、「トップ娘役単独退団」をまだはなちゃんしか経験していない。そんな身には、娘役さんがひとりで退団発表をして会見をする光景がはなちゃんに被って見えてしまって辛いし、「退団者のお知らせ」という文字列は架空の歌劇団であってもどなたのものであっても寂しい。というわけでめちゃくちゃ刺さった…というか思い出して寂しくなった…。

3.無観客千秋楽
宝塚歌劇団では実際に、華優希さんの退団公演がコロナウイルスの影響で途中でストップし、宝塚大劇場での千秋楽は無観客ライブ配信で実施された。(ちなみに、GWの少し前に出た緊急事態宣言によりこの時期に上演されていた他の宝塚の演目についても公演がストップし無観客ライブ配信が実施されたが、トップスターさん・トップ娘役さんの退団公演の千秋楽が無観客ライブ配信だったのは現段階でもこの5/10の花組公演だけである。宝塚大劇場での千秋楽後、同じ演目が東京宝塚劇場でも上演されるのだが、こちらは無事に7/4に有観客で大千秋楽を迎えた。)
無観客ライブ配信は自宅で観ていたのだが、音の響き方や手拍子が無いことで無観客なのが観ている側からも分かって悲しかった。
この本では、無観客千秋楽の様子が客席側も舞台上からの景色も含めて描かれている。宝塚のライブ配信では主に音声面でしか実感しなかったが、この本によって視覚的にも捉えてしまうと、瑞穂はじめ吉祥寺歌劇団の皆さんや、宝塚の生徒の皆さんはどんな思いで舞台に立ったんだろうと改めて考えてしまい、胸のすく思いがした。
あと、瑞穂の周りの人々が、当時わたしが思っていたことを代弁してくれていて、ジェンヌさんが笑顔で頑張っているのに悲しんでばかりいられない…と抑えていたものが噴き出してしまった。入り出待ちとかお茶会とか、コロナのせいで無くなってしまって未経験のものがたくさんあるし、はなちゃんを盛大に送り出したかったよ~~~~。(東京の大千秋楽に行けていないのは完全に自分の都合なのだが)

4.ボーナストラック

瑞穂 お前が今 この舞台に 俺を立たせている
俺の「運命」なんだ
だから俺たちは絶対にまた舞台の上で会えるよ
またな

…これ無観客で舞台上にふたりしかいない状況で音楽学校時代からずっと切磋琢磨してきた相手役に言われるのやばくないですか???
しかも、「運命」ですよ「運命」!!泣くわ!!!!

以下個人的に刺さったポイント。
①「運命」
ようやく『fff』について言及します。
『fff』は、すごーーーくざっくり言うと、望海風斗さん演じるベートーヴェンは幼少期からそばにいた謎の女(真彩希帆さん)を訝しんでいたものの、様々な困難とともに生きていく中で最終的には彼女(=人類の不幸)を受け入れて愛したことで、交響曲第9番(いわゆる「第九」)が生まれる…という話。

「お前だけがいつもそばにいた。強くて綺麗な、人類の不幸。お前の名前がやっとわかった」
「私の名前」
「『運命』…生きることが苦しみでも、俺はお前という運命を愛するよ」

こんな台詞がある退団公演、望海風斗様の「運命」は真彩希帆様だったのだ…て思うじゃないですか。(同時就任添い遂げ退団だし)
『fff』での「運命」はこの本に出てくる「運命」とは意味が多少なりとも異なるだろうけれど、歌が得意で最初男役志望だった瑞穂はただでさえきいちゃんと重ねてみてしまう(というか瑞穂はきいちゃんがモデルかな?)ところに、「運命」という繋がり。なんてこった。

②無観客で舞台上にふたり
宝塚歌劇のトップスターさん、トップ娘役さん(、二番手さん)の退団公演の千秋楽では、退団者に因む演目の楽曲を抜粋したサヨナラショーが実施される。先述の無観客ライブ配信千秋楽でも、華優希サヨナラショーが実施された。
このサヨナラショーでは、『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』より「'S Wonderful」→『はいからさんが通る』より「風の誓い」の2曲については、花組トップスターではなちゃんの相手役の柚香光さん(れいちゃん)とはなちゃんのふたりだけが舞台上にいて、「「ふたりだけの世界」」をつくりだしていた。(無観客なので余計にそう見えた。)
この本のボーナストラック、見事に「「ふたりだけの世界」」である。
「'S Wonderful」(華優希サヨナラショーバージョン)と「風の誓い」が勝手に脳内再生され、「「ふたりだけの世界」」にいるふたりの表情が良すぎて泣くしかなかった。ていうかここの白井の横顔かっこよすぎる。送り出す者の顔。


コロナウイルスの影響で無観客ライブ配信千秋楽での退団を迎えた上、本来あったであろうファンの盛大な見送りも無い状態で歌劇団を後にする瑞穂。鈴の音で瑞穂に気付く音楽学校の生徒さん(娘役志望)。
プロローグとエピローグで同じ語り(?)が並ぶ中、プロローグ直後ではとある男役スターに憧れて音楽学校に入学した瑞穂が、エピローグでは憧れられる側の娘役(元)として劇団を去っていく。
どんな状況下であっても、伝統は継がれていく。。。とわたしは読んだ。

なんで宝塚歌劇がある世界で敢えて男性だけの同じような歌劇団が舞台なのかとか、他にも色々書きたいことや思うところはあるが、あまりにも取っ散らかるしだんだん深夜テンションになりつつあるしまだ月曜日なので(わたしは月曜の深夜になにをしているのか…)、最終回とこの1年と少しで自分が経験してきたことを中心に据えた。気が向いたら追記するかもしれない。


ここまでお読みいただいた方へ。
まずはここまでお読みいただき、ありがとうございました。
現在自分の状況が不安定なため、何かしら反応をいただいても何もお返しできない可能性もありますが、全て目は通すようにします。申し訳ありませんがご了承ください。

願わくば、はなちゃん出演中の『マドモアゼル・モーツァルト』ときいちゃん出演中の『ドン・ジュアン』が無事に全日程上演できますよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?