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【対談】抗炎症痤瘡治療2023年7月
痤瘡の治療目標をどのように捉えるべきか
林先生の報告では、軽症の痤瘡も早期から瘢痕が認められ、
重症度別にみても、軽症も中等症と同等の瘢痕保有率であった。
つまり、痤瘡患者の瘢痕形成を予防するためには軽症であっても「一時的な治療で済ませてはいけない」「初診時から病態に則した積極的治療が必要」。
痤瘡治療は消火活動に例えられる
家が燃えている状態であればまずは火を消す、火の勢いを抑えるということをしなければならない。そして、ある程度鎮火した後に残っている小さな火をしっかり消していく。
つまり、急性炎症期には目にみえる炎症を徹底的に抑えて、その後再び炎症が再燃しないように治療することが非常に重要。
赤いニキビは丘疹と膿疱なので、凹凸がなくなっていれば治療は奏効しているし、赤みは時間の経過とともに消失する。その説明がきちんとされていないと、炎症後の赤みが残っていることで患者は治っていないと誤解して通院を中断してしまうこともある。
患者自身が「良くなったからこれ以上の治療は不要」と判断し治療を中断してしまうことを防ぐために、初診時に時間をかけて痤瘡の病態と「急性炎症期」「維持期」それぞれの時期に合わせた治療をしっかり続けることで瘢痕形成予防に繋がることをきちんと説明する。
病態に即した積極的治療とは
菌の消失だけを目標にしても炎症状態は抑えられない
痤瘡は単純な感染症ではない。
実際に、C.acnesは炎症を引き起こす大きな引き金ではあるが、あくまでも引き金。起きてしまった炎症はC.acnesがなくなっても完全には治らない。
集簇性痤瘡や化膿性汗腺炎で、培養結果が無菌ということはよくある。
これらの疾患はC.acnesに反応して好中球が集まり、炎症の結果として膿疱が生じているので「化膿性」と病名についているが、感染症ではない。
痤瘡も同様で、”毛包の炎症”と捉えた治療をする。
痤瘡の起炎菌であるC.acnesの増殖を抑えることは重要だが、基本的にC.acnesに対するMICが低い抗菌薬を使用したからといって炎症性皮疹が減少するわけではない。
C.acnesの菌量と痤瘡の重症度、炎症状態に相関がないことはテトラサイクリンを使用した基礎研究でも報告されている。
その理由としては、抗菌薬によってC.acnesが消失したとしても、既にC.acnesによって惹起された炎症のカスケードが止められるわけではないため。
そのため、痤瘡治療においてはMICが低い抗菌薬を選択すればよいというわけではなく、抗炎症作用がある抗菌薬を選択することで炎症が迅速に抑えられ、炎症性皮疹が減少するのではないかと考えられている。
全ての皮疹は炎症性である
従来はまず非炎症期で面靤ができ、毛穴がつまり、その後C.acnesによって炎症が起き、炎症期に移行する機序が考えられていたが、最新のデータでは、微小面靤が生じた段階で既に炎症が起きている、ということがわかってきた。
全ての皮疹は炎症性であることを治療早期から念頭におき、抗炎症作用に注目した治療を行う必要がある。
そのため急性炎症期には抗炎症作用と角質剥離作用があるBPO配合製剤を使用するのが痤瘡治療の基本。
痤瘡に効果のあるマクロライド系、テトラサイクリン系、ミノサイクリン系の薬剤はセフェム系やペニシリン系などの薬剤に比べて高い抗炎症作用があることが報告されており、クリンダマイシンも同様に活性酸素の産生を抑制し、抗炎症作用を有することが報告されている。
またクリンダマイシンは炎症の活性化を誘導する好中球走化性因子(neutrophil chemotactic factor, NCF)産生が抑えられ、皮脂中の遊離脂肪酸が減少したというデータがある。
BPOとクリンダマイシンの配合ゲルは双方の薬剤が抗炎症作用を持つため、相加的・相乗的に炎症を抑えることが期待できる。
また塗布した患部の薬剤濃度は耐性菌出現阻止濃度に達することが報告されている。
急性炎症期の第一選択薬の一つ:デュアック®︎配合ゲルの速やかな抗炎症作用
日本人尋常性痤瘡患者351例を対象とした市販後臨床試験
アダパレン0.1%ゲル+CLDM1%ゲル群を対照群として、デュアック®︎配合ゲル群の有効性と安全性を評価した。
(主要評価項目)2週時の総皮疹数のベースラインからの変化率は対照群-35.3%、デュアック®︎-42.2%でデュアックの方が有意な低下を認めた。
(副次評価項目)2週時点で60%以上の炎症性皮疹数の減少を達成。
対照群では同程度の低下を認めるまで4週を要した。
また12週時にはデュアック®︎で約9割減少した。
デュアック®︎配合ゲルの作用メカニズム
BPO→角質を剥離/細菌内の種々の組織を酸化し、破壊/活性酸素放出を抑制
CLDM→アクネ菌の増殖抑制/遊離脂肪酸を減少
参考
SUN PHARMA冊子「最初が肝心!患者ニーズにコミットする抗炎症痤瘡治療
〜抗菌薬の抗炎症作用に注目して〜」