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【映画の噺(外伝)】大国の軍事侵攻に、健気に抗う弱小国の話-「指輪物語」
邪悪な大国の軍事侵攻を察知し、周辺各国は対策を協議する。国連会議も大国を非難する言葉で埋められるが、だれも自らが邪悪な大統領に対峙する気配はない。
結局、この地球の命運を左右する大役を任されたのは、優れた容姿と能力をもったエルフでも、着実な技術力をもつドワーフ族でも、叡智の塊のような魔法使いでもなかった。
大量破壊兵器である「ひとつの指輪」を、完全に破壊する任務に選ばれたのは、体格も小さく魔法も使えない、生真面目なホビットだった。
という設定の壮大なファンタジー「ロード・オブ・ザ・リング(指輪の王)原題:The Lord of the Rings 2001年 米国」のシリーズ。
壮大なスケールが魅力の世界について、語ってみます。
(見出し画像のImage Souse=https://www.hbomax.com/geo-availability)
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原作の「指輪物語」
映画「ロード・オブ・ザ・リング(The Lord of the Rings)」は、英国の陸軍軍人だったJ・R・R・トールキン(John Ronald Reuel Tolkien)が書いた小説「指輪物語」を原作としたファンタジー。
三部作で、2001年~2003年にかけて公開されている。
舞台ははるか昔、恐竜が絶滅しアトランティスが崩壊したのち、エルフや人間など、他種の亜人類が共存したミドル・アース(Middle-earth、中つ国と訳される)。
当時は「冥王」と呼ばれた大統領が、九つの市町村、七つの県、三つの州の長に権力の指輪を贈った。それぞれの指輪は、人間、ドワーフ、エルフといった種族の有力者が所持した。
それらすべてを統べる『ひとつの指輪』は、大量破壊兵器として怖れられていたが、行方不明となる。
そのひとつの指輪を、ホビットという弱小種族のビルボが見つけたことから、争奪戦が始まる。
一つの指輪は全てを統べ、
一つの指輪は全てを見つけ、
一つの指輪は全てを捕らえて、暗闇の中に繋ぎとめる。
(One Ring to rule them all, One Ring to find them, One Ring to bring them all, and in the darkness bind them)
このひとつの指輪をどうするか、話し合う国際会議が開かれるが、エルフの大国をはじめ拡散防止条約には同意するも、具体的行動に至らない。
大量破壊兵器を持っていると、責任や報復が恐ろしいのだ。
最終的には、指輪を見つけたホビット族にその始末を一任する。
ホビット族は小柄で平和的な種族なので、これまで中つ国で注目される存在ではなかった。
大国はこの弱小種族に大任を押しつけ、兵器の供与や経済的支援は惜しまない、と言った。ひどい話だ!
ホビット族を代表して、ビルボの養子であったフロドが指輪を破棄する任につく。
主人公である従者のサムが、ナイーブなこの御主人を励ましたり叱りつけたりして、任務を遂行する姿が映画で描かれている。
ちなみに、フロドの甥がアムロである。
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映画化された「指輪物語」
それまで、「指輪物語」の映画化は絶対ムリ、とされてきた。なんせ、スケールが大きすぎるし、登場人物の数もハンパじゃない。
それだけに、ピーター・ジャクソン監督の三部作を観たときは、「長生きはするもんじゃのう!」と感激したものだ。
それほど映画の完成度は高く、満足できるものだった。
総制作費が2億8500万ドル。三部作同時撮影で、プロジェクトの期間8年もむべなるかな。
成功のもうひとつの理由は、”トム・ボンバディル”などのエピソードを、ばさっと切り捨てたから。
トム・ボンバディルは、冥王サウロンよりも強大な力の持ち主で、人気のキャラクター。彼を切ってテーマを絞り込んだため、ストーリーがわかりやすかった。
原作のラストには、説教じみた無用な一章があって不評だが、むろんそこも削られた。
日本企業がスポンサーだったら、人気キャラを出さないことは許さないし、それによって映画は総花的な、つまらない内容になっただろう。
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先立つ「ホビットの冒険」
「ロード・オブ・ザ・リング」は興行的にも成功し、三作でオスカー人形を17人獲得した。
ヒット作を嫉みがちな批評家からも、好評だったわけだ。
この好評を受けて、同監督による前日譚「ホビット」三部作が2012年~2014年にかけて公開された。
もうお腹いっぱいという感じだったが、こちらも意外に面白かった。
原作は児童向けの短い物語なので、オリジナル部分が多くある。一時期ギレルモ・デル・トロが監督とされて原案に貢献している。できればトロ監の作品を観たかった。
シリーズ中のお勧めは、人間のアラゴルンやエルフのレゴラスら、旅の仲間が大奮戦する第二作目の「二つの塔」だ。
邪悪な軍事侵攻を企てる大統領サウロンは、傀儡政権で裏切り者の魔法使いサルマンが支配する隣国に、破壊兵器の基地を移設した。
この企てを阻止するため、人気キャラの魔法使いガンダルフやアラゴルンが奮戦する。
また作者トールキンがイマイチだった、と語ったエルフのレゴラスがここにきて大活躍。そのビジュアルが女子ウケしたこともある。
いっぽう、フロドいきま~す! と出発したものの、パーティが崩壊したホビットたちも、フロド以外は活躍している。
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社会的影響はいかに?
物語を面白くする要素として、スムーズに話が転がるいっぽうで、予想外の展開を加えるキャラが必要だ。
その役を担うのが、キーパーソンで悪役のゴラム(ゴクリ)である。出自はホビットの同族ながら、外見や考え方が異なっている。一人称が「ワシら」で、頭の中に邪悪なもうひとりの自分、がいる。
ホビット族は、小柄で農業を営む大人しい種族で、過去に大量破壊兵器と遭遇している。フロドは生真面目・・・ん?
同族で悪い面が出ているゴラムは、生魚を好んで食べ、笑っているからOKかと思いきや後で文句を付けてくる。主流民族からすれば、二重人格的に見える・・・ん?
というわけで、ネットがなかった昔でも物議を醸した。
作者のトールキンは、現実世界を風刺したり特定のモデルに拠ったりはしていない、と批判に応えた。
ただし創作世界が緻密であれば、ある意味現実を写したような構造になることもあるんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ! と言ったとか言わないとか。
本作はハイ・ファンタジーのブームを巻き起こし、RPGゲームの基礎となるパーティ・バトルの概念を浸透させた。
社会的にも大きな爪痕を残した作品だ。
原作小説は、大学生のときに評論社の分厚い文庫6分冊で読みました。なじみのない言葉が多く、最初の百ページを読むのに2,3ヶ月掛かったのを覚えています。
しかしその後は、冬休みで帰った実家で徹夜に徹夜を重ね、1~2週間で読み終えました。
読み終えた後、完全におかしくなっていて「腹減った。冷蔵庫に確かレンバス(エルフの食べ物)があったはず」などと真面目に考えていた朝を思い出します。
文中に書いたように、当時はこの作品が映画やほかの媒体で観られるとは、思ってもいませんでした。
ゲームのような没頭する媒体で、このような作品に触れたらのめり込むのもムリないですね。