【猫噺#13】CoCoのハンスト顛末記
カレー屋さんで保護された猫
以前いた茶白猫は、腎不全になって最後の1~2ヶ月ほど点滴を打ってやっていたのだが、どんどんやせ細っていき、階段を落ちていくように時々止まっては悪くなる病気の進行を止める術がなく、とても切なかった。
仕事関係の引っ越しであちこち移った時期で、猫にはストレスだったろうが、ペットというより戦友のような存在だった。
長年共に暮らした猫が逝って凹んでいたときに、ネットの里親募集でよく似た茶白の仔猫を見かけたので、トライアルを申し込んだ。
保護主さんは人の良さそうな老夫婦で、この仔をもらってくれるなんて、と手放しで大喜び。トライアルだから、とは言い出せない雰囲気である。
さるカレーのチェーン店の裏で保護されたので、ココ(CoCo)と呼ばれていたその猫は、風邪で目も開かないようなぼろんちょの仔猫だった。
そして募集欄には記述がなかったのだが、左の前足の肘関節が動かないハンデがある、とのことだった。
シルエットはお猿さん?
保護主ご夫婦はネットを扱えないので、知人に依頼して募集に載せてもらったらしい。
とにかく純粋に喜んでいるご夫婦を目にして、断るわけにいかないトライアルに臨むのは物憂かったが、これは杞憂だった。
初めての環境で物陰に隠れるCoCoに、おやつのカリカリを一粒差し出すと、ニコッと笑って嬉しそうに口に入れた。
そのときコイツとはうまくいくな、という予感がした。
ハンデをもった仔は、それを補うギフトをもらっているのだろう。とにかくCoCoは可愛くて仕方ない。親バカと言うなかれ!
募集にCoCoの足のことを隠した記載をした代筆者さんに、今では感謝している(のちのトラブルの原因になるので、ハンデも含め募集猫のことはきちんと書いた方がいいとは思う)。
動物病院でレントゲンをとってもらった結果、生来のものか骨折が治る過程で癒着してしまったのかわからないが、動かない肘は治らない と言われた。
ただ悪化、進行するような病気ではない。血流が滞ると良くないので、運動させてあげなさい、とのこと。
CoCoの歩き方は、左前足が折りたためないので、外側を回すように足を前に出す、いにしえのアホの坂田歩きに似た動きである。
ニュートラルにお座りしているときは、ぴょこっと左前足を上げた状態になり、猫と言うよりお猿さんのようなシルエットになる。
ジャンプも着地もまったく問題なく、運動するのに問題はなかった。
お坊ちゃんに育てました
ウチの猫たちは食事のとき、各自がお皿の前に控えるのに対し、CoCoだけはカーテンの影に隠れて待機するので、そこにご飯を持っていく。
おそらくCoCoのような弱い猫が食べ物を持っている状態、というのは、狙われる危険のある瞬間なのだろう。
CoCoはなにか音がするたび、食事を中断して周りを警戒するように耳をピンと立てる。ここは安全やで、と言い聞かせても納得しない。
その後、保護主ご夫婦が譲ってくれた塗り薬などで、CoCoは順調に回復していった。
私は、あまりにぼろんちょだったCoCoが元気になるのが嬉しくて、どんなイタズラをしても、よしよしよくやったね、と甘やかしに甘やかした。
ハンストの顛末
さて、そんなCoCoがこの年末にハンガー・ストライキを決行した。
食べ物にうるさいCoCoが、食事をクンクン嗅いでは却下して食べないことが重なり、叱ったのが原因らしい。
叱ったと言っても、注意しながら軽くぺちんと叩いただけで、私自身そんなことがあったのを忘れていた。
翌日、いつものようにCoCoの前に食事のお皿を置くと、怯えたように逃げ回るのだ。
その目は、虐待しないでください、とも訴えるようにウルウルしている。
なにごとぞ?
思い当たるのは昨日叱ったことである。
他の猫は怒られ慣れているのでなんとも感じないが、一度も叱られたことのないCoCoにはショックだったようだ。
「あなたのせいで傷つきました」アピールをする猫はこれまでにもいたが、ここまでわかりやすい行動をされたのは初めてだ。
食事の時以外はいたってふつうなのだ。
食事もわざわざ待機したのち、お皿をもっていくと怯えたように逃げ回るのである。
夜の間に置いておいたご飯を食べているようで、ウンチもちゃんとしていた。
その後も傷ついたアピールしまくる猫に対し、オマエが憎くて叱ったんやないんやで、とありがちな言い訳をしている爺の図は、他人が見たら滑稽だったろう。
年が明け正月になって、やっと差し出したご飯を食べてくれました。ホッ!
猫って、ときどき思いがけない行動をするんですね~