【猫噺#5】高齢おひとり様が保護猫の里親になるまでの苦難(後編)
-19年いっしょに過ごした猫が急逝したあと、また保護猫を里親サイトから受け入れようと思った私だったが、保護猫を取り巻く雰囲気が変わっていて単身者不可、高齢者不可の二重苦が立ちはだかっていた。
ブラボーなペットショップ
里親、譲渡などのワードを検索すると、猫の里親になるためのハードルが高すぎることへの怨嗟に満ちている。
いまや里親になれるのは一部のエリート層のみ。単身者が猫と暮らしたければ、捨て猫を探すしかない、とばかりに捨て猫が多い場所のマップなども掲載されていた。
そのいっぽうで、転勤や結婚相手の意向などで、無責任に飼育放棄されるケースも散見され、これは単身者が敬遠されるのも仕方ない、とも思えた。
ウチに流れ着いた猫にも、飼育放棄されたりもらい手が見つからない身体的ハンデのあるものがいる。
生き物の売買には抵抗があったが、このとき私は方向性を見失っており、なんとか傷つかずにCoCoの相方を見つけてやりたいと思っていた。
ペットショップで仔猫を購入すれば、高くはつくがアフターケアや病気の心配を考えれば、大きな痛手でもない。
なにより、私のような保護猫界ではニンゲン認定されていない、高齢おひとり様すら受け入れてくるようだ。
ブラボー! ペットショップ万歳。
猫仙郷へたどりつく
めぼしい仔猫は遠隔地のショップにいた。
そこまでのルートを確認しつつ、懲りずに里親サイトを見ていたら、おひとり様でも飼育環境と本人確認で譲渡を検討してくれる団体があった。
おそるおそる連絡を取ってみると、すぐに返事がもらえた。これは珍しいことで、けがらわしきおひとり様など返事すらもらえず、1ヶ月くらいして断りメールがくるのがふつうである。
訪問日が決まり、住所を愛車のナビに入れるとそんな場所はない、とナビが文句を言う。
相手に住所を確認し、なれないスマホの誘導で現地に向かった。
迷いながらも指し示す道に従うと、やがて大きな川に沿った場所に導かれ、白い霧、靄のようなものに包まれる。
そのもやが晴れると、コンクリ打ちっ放しの無骨な建物が忽然と現れた。
ここで合ってるのか?
おそるおそる扉を開くと、カランと音がして中には猫仙人のマダムを筆頭に、数人の猫使い師の方々がいた。
あいさつののち、早速きれいな保護猫ルームに案内される。そこにいた小さな黒猫がぱっ、と走り寄ってきた。
私のように、ニンゲンの端くれにも勘定されないような高齢おひとり様にも懐いてくれるのか。
暖かい感動に包まれた。
「ここ以外もルームがありますから」
案内された先には、ネットで見た美猫がいた。
「この子にしますか?」私の様子をみて仙人がおっしゃる。
このとき、私はトラウマから脱却しておらず、こんな美猫なら私よりふさわしい里親が見つかるだろうと思った。
「真っ先に来てくれた、あの小さな黒猫を」
かくして里親になる
半信半疑ではあったがトライアル開始の日、猫仙郷から使者の方が舞い降りてケージに入った小さな黒猫を届けてくれた。
使者の方にウチの猫たちを紹介し、飼育環境を確認してもらって誓約書を交わした。
いちどは道を踏み外しかけたものの、こうして無事里親になることができた。
不平ばかりもらしたようだが、やはり単身者が生き物を迎えるには一段の覚悟がいると思う。
自身になにかあったとき、後見してくれる身内や友人がいれば受け入れてもらいやすい。
また都合で飼育継続が困難になったとき、すぐに放棄せずにNPOなどに相談してほしい、とも思う。
極端な話、日常でも事故に遭って数日隔離されれば、ウチの猫たちはピンチになる。
私は臓器提供カードに、「臓器はぜんぶ提供するからウチの猫を助けて!」と付箋を貼っている。
こうしてウチにやってきたチビの黒猫は、大人しそうに見えて実はとんでもないやんちゃ姫なことが判明する。
獣医さんにも診てもらったが、この子は保護されたのが猫仙郷でなくば生きてない、ほどの手篤い処置がされていた。
猫は神秘な動物だが、そこに係わる界隈も千差万別だ。
それらの話は別の機会に。。。
(次回は【猫噺#6】白黒猫は生命力が強いと言われるけど本当?)