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母とミートソーススパゲティ

上手く言葉にできなくて、相手に思いを素直に伝えられなくて、ただただ感情があふれてくる。

「自分の感受性くらい自分で守れ、バカ者よ」
茨木のり子の詩が私を抑えてくれる。もう大人だものね。

夕食はコロッケだったが、母が言った。
「おやつにでもミートソーススパゲティを一人分作らない?」

私は麺抜き生活をしようと続けていることを理由に断ったから、弟と半分こしていた。そそくさと食べ終わって無口な弟の隣でひとりスパゲティを頬張る。少し寂しそうに見えた。ふと思って

「ちょっと変わり種(楽しみ)が欲しかったんだよね?」
「(うんうん)」

嬉しそうに頷いていた。この時に感じた感情を、私は今言葉にできない。どういう言葉で表せばいいのか分からない。見つからない。ただただ涙が出てくる。

一見はたから見たらただの日常。内部から見ても普通の日常。でも普通って何?起きて、三食作って食べて寝る。つまらなく思うかもしれないけどその中で人はいろんな出来事に出会って考えて暮らしていく。

家族が顔を合わせて過ごすご飯の時間。その中に母は特別な思いを抱えているのかもしれない。だって、来年からはこんな生活できないでしょ?大切なものは目に見えないし、すごく近くにあるの。頭では分かってるのに、行動に素直に移せない。ごめんなさい。でも、行動しないと後悔するよ。

母はまた、明日の下ごしらえを始めている。

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