人生カタログ本

分厚い本を渡された
ずっしりと重量感のあるそして、いい素材の紙を使っているであろう、固い本。

「この中であなたが望む人生を選んでください。その通りに歩むことが出来ます。」

冷たい笑顔で言い放つ。


ペラペラっと中をめくってみる

大きなソファに座って脚を組む男性。
いいスーツを着て優しい微笑みをしている。
一目でわかるお金持ち。

かと思ったら良い具合に日焼けをしたサーフボード片手に写る若そうな人まで。

あら?
女性も御夫婦も。
年齢性別関係なく、見開き1ページに彼らのライフスタイルやかっこいい写真が散りばめられている。


人生のカタログ本
その本に載っている人と同じライフスタイルを送ることができるのだ。

お金の心配はない。
ただ自分の意思というのはなくなり、その本に載っている人とまるまる同じ生活を送ることになる。


「さて、お決まりですか?」

「…すいません。決まりません…。」

その無表情の男声はページを一枚一枚開きながらそのライフスタイルを説明してくれる。


言葉だけが、私を通り過ぎていった。


成功者と呼ばれるその面々。

何を成功したのだろうか?

お金が儲かるシステムを作って不自由なく、いや、それ以上に思った通りのライフスタイルを築けたらそれが成功と呼ばれるのだろうか?


パタン。

本をとじる。

「お決まりですか?」


あなたは人生のカタログ本があったらその中から選びますか?
不自由のない、成功者と言われるライフスタイルを。


「はい。どのコースも魅力的ではありませんでした。私は何があろうと自分で進む道を切り開いていきます。」


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