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2.就職1年目にして大きな心の支えを失う

分娩をしたくて助産師になったのに、
分娩ができず、職場で孤立した自堕落女。
更に追い討ちをかける出来事があった。

父の逝去

元々身体が悪かった。
私が生まれる前から
C型肝炎ウイルスに罹患し、
時間経過と共にじわじわと
慢性肝炎、肝硬変、肝がんに至っていた。

父は、寡黙な人だった。
多くは語らず、
でも、大切なことは繰り返し教えてくれた。

「人生はただ生きるには長過ぎるが、
何かを成すには短い。」
「自分がよいと思ったことは大切にしろ。
他の人が何と言おうと、
よいと思った心に従え。」

そんな父が好きだった。
末っ子の私は特に愛されていたし、
私が立派に助産師しているところを
見て欲しかった。

けど。

私が就職してから、
肝性脳症で物忘れが増えた。
ぼーっとして考えられないようだ。
腹水で妊婦のようなお腹になった。
寝返りすら苦しいと。
ちょっとの刺激で折れる骨。
痛みと苦しみで変わっていく父。
麻薬で無理矢理寝かされる父。

そして、就職1年目の冬。
空に旅立っていった。

穏やかな顔で、
家族に見守られながら。
亡くなった事実は悲しいけど、
できる限り笑顔で見送った。

みんなの表情は穏やかで
あたたかくて、
ちょっぴり切ない
お見送りになった。

父は闘病の末、立派に旅立った。
理想的な最期だったと思う。
私は、立派な助産師どころか自堕落なまま。

生前、母に介助されながら
私のアパートに来たことがある。
真っ青な顔をしながら
階段をやっと登って、
薄汚れた6畳の1Kをみて、
「立派だなぁ」って。

違うよ。
全然立派じゃないよ。

人生のどん底、
暗闇の海底に迷い込んだようだ。
職場に居場所はなく、
父の逝去でぽっかり空いた心の穴。

立派な助産師でありたい理想像と
醜い現実のギャップが
あまりに大きくて。

お父さん
人生って長すぎるよ。
あと40年以上働くなんて
お先真っ暗だよ。

全て投げ出して
楽になりたい。


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