青森県立美術館とミナペルホネン
青森県立美術館で開催されているミナペルホネンの「つづく」展に先日行ってきた。実は3年前の東京での展示会にも行ったので、実は2回目だった。
東京での展示を見るまでは、ミナペルホネンとはなんぞやというのはほぼ知らなかった。とにかく、tambourineというテキスタイルがなんだか可愛くて好きだった。
その、ただ純粋に「かわいい」にはとてつもない時間と手間がかかっているという事実を目で見て知ったのが、この「つづく」展だった。それからますます私は、このブランドが気になり、皆川さんの本を買ったりすることが増えた。
話を変えて、私が青森県立美術館に初めて行ったのは多分小学生のバス遠足だった。人生初の巨大な室内空間であり、美術館だった。大きく、広いその空間で私は自分がどこを歩いているのか全くわからなくなり、「ただの白い空間」という印象を持っていて、あまり好きな場所ではなかった。
大人になり、せっかく青森に戻ってきたのだから行くか、、、とあまり乗り気でないまま、土砂降りの中バスに乗って行ったのはつい1年前だ。
10年以上経ってから訪れた場所で、圧倒的な広さと静けさに圧倒された。
「ああ、この場所は青森らしい気がする」
そう感じた。それ以来、私はこの青森県立美術館がとてつもなく好きな場所になった。考え事をしたい時、ひとりになりたいときはなんとなく訪れるようになった。
そして、私にとってその好きなもの2つがコラボするということで発表された時からわくわくしていた。開幕記念スペシャル鼎談:皆川明氏+青木淳氏+菊地敦己氏に、見事当選したのでうきうきしていた。(なんと倍率は3倍だったようで!超嬉しい限りだった)
鼎談の中で特に印象的だったのは、青木さんの青森県立美術館の構成だった。小学生の私の印象は、「白い」だった。確かに外壁も白いし、大きなアレコホールも白い巨大な空間だ。
ただ、今の私の印象は「土っぽい」だった。白い空間と同じくらい、土っぽい空間が多い。左官だろうな、とは思いつつ何で出来ているのか分からなかった。
もちろん青木さんはこの白と土っぽさを意図的に切り分けていた。美術館の隣の三内丸山遺跡を意識して、掘削して出来た場所のような地中のような場所と地上の白い部分としたそうだ。
写真で伝わるといいのですが、地面より下は土っぽく、地面より上は白い壁になっているのです!
しかも発掘現場のように土を掘って出来た空間を目指して、壁の表面は通常の左官屋さんがやるように綺麗にコテでならすのではなく、吹き付けた物を削って仕上げたそう。道理で、ボコボコザラザラしているわけだ!
しかも、青森らしさのある空間を求めて、その壁の仕上げに最適な土を青森のあらゆる場所から集めては実験をして決定したそう。それはもう、誰がなんと言おうとこの美術館の空間は青森そのもの笑!
また、この美術館のもう一つの特徴は外壁の白く塗られたレンガだろう。このエントランス部分には、今回はミナペルホネンの蝶が描かれていた。他の展示会の時も、ミッフィが描かれたりしている。今年で開館16年ということもあり、外壁はレンガの目地に沿って割れが出てきている。私は、これがたまらなく好きだ。この土地で年月を重ねてきた証だ。
青木さんは、この白い外壁をキャンバスのように使われることを想定していた。次の展示会に向けて違うモチーフを壁に描くために、今回の蝶を白く塗りつぶす。そうすると白い壁は、白いまだら模様になっていく。今はエントランス部分がよく使われているけれど、できれば建物全体にやって欲しいな!と無邪気に話していた青木さん。
それは楽しい!大きく、静かな空間だけではなく、実は青木さんが仕掛けたたくさんのものがこの美術館にはまだだあるのか!それはとても楽しみだな、見たいな!と私もこれからの県美に可能性を感じてワクワクしてきた。
トークショーの中ででた素敵なキーワードは「発酵」だった。
年月をかけて、発酵していく。場所だけでなく、仕事もそうでありたい。違う場所で違う人と仕事をするけれど、自分自身がやっていることは結局は同じことをしている。それが、一つ一つ熟成されて良くなっていく。腐るのではなく、発酵していく。そうなるように、しっかりと手間をかけて仕事をしていきたい。
まさに、この青森県立美術館も年月を経て、熟成してきている。きっと、青木さんが作った仕掛けはこの熟成された時に実力を発揮するのだろう。
青森県立美術館は、デンマークのルイジアナ美術館のような場所になればいいなと設計なさったそう。青森の人の日常的な場所になるように願いを込めて。
この場所の良さが分かるようになったということは、私も熟成されてきた!と信じつつ、またふらっとドライブしに行きたい。