見出し画像

ブレイクショットの軌跡




素晴らしかった。
素晴らしい、なんて言葉だけでは到底本作の良さを伝えきれないことが、とにかくもどかしい。

ばらばらに散らばっていた物語、人物、出来事が見事に華麗にポケットに落ちていく様がとにかく惚れ惚れ、うっとり。
ながらく放心してしまう完成度。

頭の中でどんどんピースがつながっていくあの感覚は、とにかく気持ちよくて、おっきなパズルを完成し終えた達成感を味わった。

(逢坂先生の物語の構成力といい、コントロール力といい、とくに本作で感じとれた光なんて素晴らしすぎて、声を大にしてどんどん言っていくけれどわたしの声はちいさすぎる。けどね、これから著名人の方々や書店員さんがすばらしい言葉で本作の魅力を余すことなくどんどん伝えてくれるだろうと直感で確信しているので、これからスポットライトを浴びるであろう未来の出来事が現実になる日を待つ。そのことが、今はたのしみで仕方ないの。)


とにかく、感情へのご褒美読書となりました。

思い出していけば、あの時あの場面での1ピース1ピースに大きな意味があり、この言動に至るまでの人生で起こっていたこと、彼らの人生の一部をのぞきながらすっかり感情移入してしまっていたものだから、後半にかけて明かされ紐解かれ導かれ物語の全貌に気付いてからの感情の溢れぐあいは言葉など生まれなくてよい、自分の感情の中で起こったことがすべてだ、と言語化できない自分にも妙に納得できてしまうほどのものでした。

とにかく本作は、再読必至であり、
再読でさらに涙を誘われ、おおきな感情の波にひきこまれるのです。

物語の流れを知った上で、
また1ピース1ピース、はめていけるうれしさ。
こんな風に再読が感慨深いきもちで、
1ピースの絵柄をゆっくり見ながら、
さらなる気づきに感情が溢れ、物語に運ばれる経験はとてもとても言葉では言い表せないすばらしさがありました。
こういう体験を奇跡の読書体験と呼んでもよいのではないでしょうか。

常識で考えては起こりえない、不思議な出来事・現象。

だって、生まれてくる感情も、体内をめぐっていく感情も自分の想像の範疇をはるかに超えるもので、この不思議な体験、感覚は、そう呼んでもおかしくないのでは、とおもいました。

群像劇はこうこなくっちゃ!
のきもちをたっぷり満たしてくれるどころか、細部までほんと見事に...
こんなにピタッとはまって、
このピタッとはまってからのひっぱられていく感情の余韻が、すごかったの。



あるふたりの友情の描かれ方に胸はあたたかくなるし、ある親子への注がれた気持ちとは裏腹に落とし所が見つけられない歯痒さをこれでもかってほど味わったり、あっ!と驚かされたある人の登場や...
話し出すとどんどんネタバレをしてしまいそうなのでこの辺で。


そして、
あなたの夢はなんですか?

この問いになんども胸を突かれた。


夢すら持てなかった人、
夢をすべて奪われてしまった人、
夢を踏みつけられてきた人、
夢を叶える途中で自分を見失ってしまった人、
すべてを失う直前に自分が抱いていた希望、ちいさなささやかな、けど何よりも大切にしたかった夢に気づくことになった人...

いろいろな人がいて、
その人が置かれている環境ひとつで、
人生に起こっている出来事のしがらみのなかで
この何気ない、きらきら幸福に満ちた質問が残酷なものに変わってしまう辛さにも直面した。


だれかの人生をのぞいている間にも、
あたりまえなんだけれど、他の人の人生はつづいてて。日々のたたかいはつづいてて。

その場面に出会ったときには、
もう涙腺の出口の狭さを痛感していくほどの涙の量でした。
(この感じ伝わってくれたらうれしいなぁ)

点と点が繋がり、ひとつの線へと、
人生でたどる道、たどってきた軌跡を目の当たりにして、
こうして人生はつづいてきたしこれからもつづいていくことをおもったり、

そうかと思えば、ほんの一瞬で人生の軌道がおおきく変わってしまう、あとすこし時間や場所がずれていたら巻き込まれることはなかったことや、人生で起きてしまうさまざまな不可避な出来事、もっと言ってしまえば生まれた場所や環境によって人生でたどる道の違い、選択権のなさ、そもそも見える景色があまりにも違うといった皮肉さや絶望を感じたり。

その逆で、
幸運に恵まれることだって。
人とのめぐり合わせは、きっとそうなのかもしれないな、と。
出会うべくして出会う、必然性を感じられる出会いは、自分の世界でも遠く離れた世界でも、そこかしこであるものであり、これからも生まれ続けるものだろうとおもえたり。

そんな、
人生のなにが起こるかわからない不可思議さと残酷さと奇跡を知って。

そしてなにより、
人生でふりかかる出来事、災難に見舞われても信念をもって貫く努力をわすれないでいたいな、と。
自分を見失わないでいようと、自分を誤魔化すことのないよう努力し続けたいな、と。

どんなことが起きても、弾き返せるような強い意志を持って。

そして、願わくば自分の抱く想いを自分の人生の大切な荷物として運んでいきたい。

そんな、深いきもちにさせてくれた
『ブレイクショットの軌跡』。

3月12日発売です。
多くの人とこの感情をわかちあいたい。


p.s

逢坂先生の作品をこうしてリアルタイムで読めるよろこび、(感激のサイン付!)
それに一作一作ごとに飛び越え、変わっていくさまを見届けさせてもらえることが、
ほんと...贅沢な読書体験の渦中にいることを肌感でかんじとっています。

そして、三作目は、逢坂先生を不思議と近くに感じられる感覚にまで。

『ブレイクショットの軌跡』は、
読者が引っ張っていきたくなる、気持ちが前のめりになる作品でした。

みんなあつまってー!ここだよーー!って言いたくなるような、
読み終えてしばらくのあいだなんて、
道ゆく人に、声をかけたくて仕方なかったの。
ねえ!ねえ!これ!!!
すごいから!!!読んでみてーーーってね。

そんな、多くの人にこの感動や感情やらを共有したい、そんな気持ちに駆られる素晴らしい物語でした。

いいなと思ったら応援しよう!