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アフターコロナ成長戦略の両輪

令和3年6月2日、第11回成長戦略会議にて成長戦略実行計画案について議論が行われた。
成長戦略の基本的な考え方は、生産性を向上させ、その成果を賃金によって分配し、労働分配率も向上させ、消費の拡大を通じて、経済成長を実現するというもの。
具体的な施策の大枠は下記の通り。

第1に、グリーン成長戦略の実現。洋上風力、水素、自動車・蓄電池、住宅・建築物など14分野について年限を決めて投資を促進し、導入を進める。

第2に、人材投資の強化。フリーランスが安心して働ける環境をつくるための法整備を検討する。

第3に、経済安全保障の観点からのデジタル政策。先端的な半導体の開発や立地支援を行い、低消費電力のデータセンターの分散配置を行う。

第4に、スタートアップの支援。スタートアップが円滑に上場できるように、投資家保護を前提として、SPAC(特別買収目的会社)制度の導入を図る。

第5に、事業再構築・事業再生の支援。中小企業の事業再構築の支援をしっかり進めていく中で、私的整理の利便性を向上するため法制面の検討を行う。

次いで令和3年6月18日 、第12回成長戦略会議において成長戦略実行計画が閣議決定された。

注目すべきは、企業の新陳代謝にかかわる2つの施策だ。
一つは目はSPAC市場の創設、二つ目は企業の過剰債務の顕在化に備えた私的整理の整備。

以下は記者会見で有識者の発言として引用された要旨の抜粋。

”1点目ですが、SPAC制度の導入について明示されたことを評価する。日本経済にとって新陳代謝を進めることは重要。また、IPOの値決めが低めであることへの解決策の一つにもなる。スタートアップの事業環境整備を進める上でも、投資家保護にも配慮しながら、新しいSPAC市場制度についてできるだけ早く制度化してほしい。遅くとも年度内に方向性を示す必要性がある。成長戦略会議としてもフォローアップが必要である。

 2点目でございますが、日本の企業の退出コストが高いことを受けて、その問題を解決するため、今回私的整理等の利便性の拡大のための法制面の検討が記載されたと。コロナ禍でも、他国に比べて倒産率が低いなど、これまでの経済政策は成果を上げているが、ワクチン接種が進み、イギリスやアメリカでは経済回復が急速に進んでいる。日本でもワクチン接種が急速に進んでいるので、アフターコロナは日本でも思っているよりも早く来るのではないかと。この私的整理等の利便性の拡大のための法制面の検討について、スピード感を持って取り組んでいく必要がある。私的整理の利便性向上のための法制面の検討については、来年の通常国会に法案を提出するとともに、ガイドラインの整備にも取り組んでほしい。”

このようにスタートアップ企業の成長促進と、生産性の低い企業の退出を促す両輪の施策をもって経済の新陳代謝を高めようという意図のある政策が進もうとしている

これに対して、特に後者のポジションに属する方々は恐怖を抱くかもしれない。廃業となればいろいろなものを手放すことにもなり、人によっては無念が残るかもしれない。だがやはり日本経済にとってこれは必要なことだと考える。地方の商店街を周る機会があるが、徐々に廃業する事業者が出てきて商店街が歯抜けのようになってしまったと嘆く声もあった。私も街自体の消滅の危機感を感じたものだった。しかしそんな心配をよそに、最近になってみると跡地には新しい事業者が参入し、おいしそうなベーカリーやカフェが店を構えていた。新参者の努力で街の賑わいも少しは戻るかもしれないと思った。街も社会もこうやって時代に合わせて変わっていくのが自然な姿なのだろう。

少し話が逸れたが、SPAC制度、私的整理の枠組みについて次回以降解説したい。特にスタートアップ企業はSPAC制度によって多大な恩恵を受けうる。起業家は直接上場するよりメリットが大きい可能性があり、来るべき時に備えて準備をしておくべきだろう。

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