高比良くるまと平6世代を考える
今年のMー1グランプリ
今年度のM-1グランプリをご覧になっただろうか。
令和ロマンが2連勝し、若干話題になっているアレである。
私の個人としては、昨年度友人に誘われて久しぶりに観戦し、某島田紳助のいない審査員席に新鮮な気持ちになった。そして、今年度は一人で観戦し、某松本人志のいない審査員席に、昨年度とはまた違ったフレッシュな気持ちになった大会であった。
今思うと、大会ができ始めの頃は、オール巨人やら中田カウスやら、若者からするとよく知らないおじいちゃんたちが偉そうに講釈垂れながら、古い価値観の漫才を若者に押し付けている印象だった。伝統を守ってきた大人が次の世代に指導をすることは、それはそれで良さがあるとは思うものの、旧時代的な印象はぬぐえない。それに引き換え今回の審査員席は、M-1の決勝戦を潜り抜けてきた漫才師が多く、コメントの内容も決勝進出者に寄り添ったものが多かった。若手の漫才を尊重する流れや、好き嫌いで判断せずに(前述のおじいちゃん漫才師たちが好き嫌いで判断していたような書きぶりに見えるかもしれないが)点数を高めにつける風潮に令和を感じた。
とはいえこれは決して優しさだけではなく、審査員たちもまた画面の向こうの視聴者に審査され、さらに厳しいコメントをSNSに書かれるという板挟みが生み出したものであり、変に辛口なコメントをしようものなら袋叩きになってしまうという状況も透けて見えるのだが。
令和ロマン
さて、令和ロマンである。
令和ロマンはツッコミの松井ケムリとボケの高比良くるまの漫才コンビである。最近徐々にテレビでも見かけるようになったが、いわゆる「ひな壇芸人」と比べると露出はまだ少ない。
令和4年にはABCお笑いグランプリで準優勝。令和5年にはM-1グランプリで決勝初出場にして優勝。そして、今年度令和6年は、ABCお笑いグランプリとM-1グランプリの両大会で優勝した。
松井ケムリと高比良くるまは二人とも慶應大学のお笑いサークル出身。ケムリの大学卒業のタイミングで、くるまは大学を中退し、そのままNSCの門を叩いたというのだからドラマチックである。
平6生まれを考える
なぜ急に令和ロマンの話をし始めたのかというと、かくいう私が、高比良くるまと同じ平成6年生まれで、自己紹介にもってこいだと思ったからだ。
平成6年(1994年)は、「レオン」「ショーシャンクの空に」「ライオン・キング」などが公開された年である。セガサターンやPlayStationが発売された年でもあるらしい。ちなみに、前年(平成5年/1993年)は、当時の皇太子殿下(現在の今上陛下)と雅子様(現在の皇后陛下)が結婚した。また、冷害により米不足でタイ米を食べたことで記憶に残っている大人も少なくない。翌年(平成7年/1995年)には、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件が起こり、日本を震撼させた。そして、平成6年には、ここまで印象に残る出来事はなかったというのが個人的な所感である。
私が、平成6年が特殊な年だと思うのには理由がある。すでに少子化が進んでいたこの日本において、平成6年はすこーーーーしだけ子供が増えた謎の年なのだ。それも、(個人的には)誤差とは思えないほどに(少し大袈裟だが)。
平成6年生まれの著名人は、伊藤沙莉や二階堂ふみ、広瀬アリスや山崎賢人のような俳優、京本大我や百田夏菜子のようなアイドル、瀬戸大也、高木美帆、萩野公介のようなスポーツ選手など、活躍する同世代は枚挙に遑がない。とはいえ、同じ世代に有名人がいるのは決して平成6年に限った話ではない。ただ、ここで私個人が勝手にプライドを持っているのは、ここに大谷翔平と羽生結弦が入ってくることである。世界を熱狂させたトップスポーツ選手が2名も同じ年に生まれていることに、私は誇り感じている。自分の得意分野を追及しトップを目指す姿勢のある人間が同じ年に生まれていることは喜ばしいことだ。
令和ロマン、というより高比良くるまは、美容男子である。保湿に余念がない。とにかくお肌が綺麗である。旧時代の固定概念を引きずってしまっている私は、そこにも彼の令和の価値観を見出しているわけだが、くるまはM-1に向けてさらに見た目をマネジメントした。薄かった眉をアートメイクで濃くし、コンタクトを入れている目元は伊達の丸めがねをかけて目元の印象を強くした。髪の毛は襟足を伸ばし、外はねにヘアアレンジ。胡散臭い見た目にすることで、自分たちの漫才のイメージに寄せたのだそうだ。やわらかい印象のケムリとの対比がここで図られ、彼らのキャラクターを決定したのではないか。漫才だけでなく見た目の追求、しかもイロモノとしてのキャラクターではなく、性格や雰囲気が自然に伝わるような『オシャレな』イメージチェンジは令和を生きる「平6」っぽいと感じた。(ケムリもキャラクターのためにわざと体を大きくしているらしいことは追記しておく)
甲戌(きのえいぬ)な私たち
平成6年は十干十二支(じっかんじゅうにし)でいうところの「甲戌(きのえいぬ)」という年にあたるらしい。性格は穏やかで努力家な人間が多いとの傾向があるのだとか。自分のことを俯瞰しても全くそのようには思わないが、自分の生まれ年にこのような要素があることがにんまり嬉しい。
自分にはない「努力家」なところを最大限発揮した、活躍する甲戌生まれにまた一人スポットが当たったことに喜びながら、私は今日も飲み会で、そして自己紹介で、「高比良くるまと同い年です!」と自慢するのである。