どうして草は枯れるのか? - 植物を衝動買いしたときに見るページ
特に植物を育てた経験がないのに、衝動的に植物を購入して持ち帰ってしまったとき……大体の場合は枯らしてしまう。
もちろん、一番良いのはその場で育て方をググってうまくいくことだが、これがなかなか初心者には難しい。「何で調べればいいのかわからない」はインターネットの普及した今、多くの物事の登竜門になっている。
せっかくかわいい草をお持ち帰りしたのにこれでは悲しい。
というわけで、某でよく聞かれることをまとめておいた。
この記事は「どうして草は枯れるのか」から入ってもらって、園芸コーナーの「簡単に育つ」などの文言に対抗し、クソ長い記事と細かすぎる情報で最初から苦しんで覚えてもらおうというページである。
最初にすべきこと
買った植物の根本をよく見てみよう。
こういう容器に入ってはいないだろうか。
たまに鉢が二重になっていることもあるのでよく観察してみてほしい。
このポットは「育苗・出荷」の最適解であって、一般のご家庭でこれに入れっぱなすと大体の草は死ぬ。一般家庭では、農家や園芸店ほど毎日草をチェックしないからである。
植え替えよう。
だが植え替えには基礎知識が必要になるので、植え替えに必要な判断が取れるようにならねばならない。
この記事では、基本的な育て方は読者に自ら検索してもらい、ネットで出てくる育て方に掲載されづらい「草の死因から対処を先回りする」をところを目指す。
基礎知識 - どうして草は枯れるのか
よほどの希少種でない、およそ全ての植物に共通することを説明する。
温度について
最初の一つは、植物の好む気温は人間と同じということ。(湿度は異なるので注意。)
砂漠の植物も寒冷地の植物も、耐える能力を持っているだけで、Tシャツ一枚で快適に過ごせる気温を一番好む。
これは言い換えれば、日照を確保した場所で年中空調を入れれば、一室で全ての植物が生育することを意味する。わくわくナウシカランドの開園だ。ちなみに私の部屋では実際にシダ、ラン、パキポ、多肉、シュウ酸カルシウム太郎など本来一生出会うはずがない植物が共生している。
だが逆に、不適切な気温下で、植物は驚くほど脆い。うっかりすると夏は湯で野菜になり、冬は冷凍野菜になってしまう。植物も生き物なので、茹でられたり凍ったりすると即死する。
大事なことは「植物の置き場は最高気温・最低気温で選ぶ」こと。よくあるのは冬場、人のいる部屋で暖房を使っていて、夜暖房を切ると一気に気温が下がり、植物が窓際で凍死してしまうパターン。今年は寒波で某SNSで冷凍野菜のレスキュー依頼が非常に多かった。残念だが冷凍野菜になってしまったものは助からない。
水について
植木鉢の中の居候、菌類の話をしよう。
土の中には大量の菌類が生息している。土中の細菌は特定するのが不可能なほど多い。
植物にとっての問題は、菌が植物に敵対し、根っこを分解し始めてしまった時だ。
この現象を「根腐れ」と呼ぶ。
根腐れは植物飼育の重大な死因である。トリガーになる原因はいくつかあるが、その中の一つに「水やりの失敗」がある。
菌には「空気が好きな菌、好気性細菌」と「空気が嫌いな菌、嫌気性細菌」がいる。土が乾いた状態では好気性の細菌が多く、水をやると空気が遮断され、嫌気性の細菌が増える。
ミイラを想像して貰えばわかると思うが、乾燥した状態というのはそもそも菌が少なく、あまり害を為さない。主な原因は問題は湿っぽい状態だ。
植物の根っこは呼吸をしており、あまりに水没時間が長く、しかも水が不潔だと弱ってくる。すると嫌気性細菌が根っこを分解にかかる。そこから生きた部分にまで菌が侵入すると、植物はお亡くなりになってしまう。これが植物の死因筆頭と言われる、「水のやり過ぎによる根腐れ」である。
植物の水やりとは、土中の乾燥と水没のサイクルを作ること。
これは「なぜ水耕栽培は根腐れしないのか」の答えでもある。水道水は清潔で菌が超少ないからだ。無論汚い水に突っ込んだり、水に対して根っこが多すぎて酸欠を起こせば普通に根腐れする。(余談だが、普通水耕栽培できない植物も、お魚のごとくエアレーションを回すと育ったりする、興味のある人は調べてみよう)
どの程度の水没・乾燥サイクルが好きかどうかは、植物によってまるで異なる。
例えば乾燥地に適応した植物は月に一回の水やりでよく、逆に湿地の植物は水草よろしく水没を好み、一瞬の水切れで枯れてしまう。
一説には、初見でその植物の好む水サイクルを枯らすまでに見極められるようになるまで、3年かかるとも言われている。
では、逆に「水切れ」したときはどうすればいいのだろうか?
うっかり水をやりわすれたり、夏の日光を舐めていたりして植物がしおしおに……
そんなとき答えはシンプル、水を大量にぶっかけよう。バケツがあったら2時間ぐらい漬けても良い。(回収は忘れないように使用)夏場だったら屋内か日陰に一度退避させる。
水切れは、根腐れよりは復活可能性が高い。「駄目かも……」と思っても、しばらく水につけると復活することも多い。体感だと、パリパリになってしまったらお星さまだが、しんなり水気が残っているうちは復活する事が多い。ダメ元でもとにかく水をかけてみよう。
光について
植物は光合成をしている。
……ということはみんな知っているが、植物がどの程度光を求めているかは最初はあまり知らないことが多い。
植物によって求める光の強さや時間は異なる。
例えば、夏の化身ひまわりは真夏の圧倒的な直射日光が必要である。つまり、強い光に長時間当たる必要がある。
反対に、強い光が嫌いな植物というのもいる。大きな植物に光を遮られる地面のしっとりした場所では、大体別の植物が暮らしているだろう、そいつらである。
こうした植物は、人間にとって部屋の中で管理するのに最適解となる。LEDのシーリングライトだけでもりもりでかくなる奴もいるので、部屋が北側で暗い人などは、電気代で植物を飼育することができる。こういう暗がりで生きていくのがどれだけ平気かどうかを、耐陰性と呼ぶ。
直射日光が必要な植物はお部屋で育てることはできないし、逆に物陰でひっそり生えているような草を日光に晒すと(我々のように)しおしおになって力尽きてしまう。
困るのが、光の最適解は律儀に育て方を検索しないと出てこないことだ。
どういうことかというと、園芸店だと、たびたび外でしか育たない草が中で売られていたり、その逆が度々ある。代表的なのは母の日のカーネーション。屋内に陳列されることが多いが、カーネーションはお外で直射日光が直撃しないと育たない。なおカーネーションは母の日のあとに来る、夏の暑さにも冬の寒さにも弱い。道理でみんな毎年買うはずである。
一応、知識があれば推論することもできる。
例えば、ゴムの木。
ゴムの木は野生では20mにもなる、ジャングルの傘だ。森を覆って直射日光を浴びることになる。ところが、日本においては、室内で観葉植物として育てられている。これはどういうことかというと、ゴムの木は少なくとも小さいうちは耐陰性が非常に高い。天井を覆われたジャングルで芽吹かなければならないからだ。部屋で育ったゴムの木も徐々に日光に慣らすと、本来の性質として直射日光にも耐える。いきなり直射日光に当てると日光で葉緑素がお亡くなりになる葉焼けするので注意しよう。
同じノリで、ジャングル育ちの植物で、大型化するものは耐陰性と耐光性を両方備えていると想像できる。
そんなわけで、地学の知識を入れておいて、植物を見たときに原産地の気候や植生が一定のラインまで想像できれば、意外となんとかなることは多い。
草を育てるにあたって、自然科学全般に詳しいに越したことはないと思う。興味を持ったら何でも調べてみてほしい。
衛生について
植物も生き物である。不潔な状態は好ましくない。
特に自然の草は害虫や病気を持っていることが多く、自宅に持ち込まないようにしなければいけない。
外の生き物(草を含む)と触れ合ったら、手を洗うこと。
服も一回は払っておくと良い。
もう一つ気をつけなければいけないのは、不潔な土。
見た目には分かりづらいが、土にもきれいと汚いがある。一般的にその辺の土は汚く、植物にとっての病原菌やセンチュウで汚染されているリスクがある。
逆にパッケージングされて販売されている「植物用の土」は何らかの手段で殺菌されている(大抵は加熱)ので、清潔だ。きれいな土は、無菌操作して水と一緒にコンテナに閉じ込めてもカビが生えない。
……そんなわけで、具体名は差し控えるが、100円の土、あるいは異常に安い土はおすすめしない。プロトリーフ、花ごころ、ホームセンター各種など、大手メーカーから出ているものを使うのが良い。
では、次からやっと、持ち帰った草が一体何なのか調べてみよう。
この木なんの木?
生き物を調べずに飼うのは無謀である。
持ち帰った植物が何なのかを知る必要がある。
大体の植物には「タグ」とか「ネームプレート」とか「ラベル」がポットにぶっ刺さっている。
買う前にこれをきちんと見ておけよと言ってしまえばそれまでなのだが、意外と見落とすことは多い。買ったものは仕方がないので家で確かめよう。
親切なタグの場合、裏側に育て方がバッチリ書いてあるので、この下の記事はさして読まなくても良い。
書いてなかったらすなおに「名前+育て方」でググってください。
だが、タグを見れば済まない、ということもある。「タグ名前しかない」「タグに謎のローマ字が書いてある」 パターンである。
日本語でかっこいい単語が書いてあるときは、ほぼ和名か流通名である。多肉とサボテンに多い。
謎のローマ字は学名なのでラテン語だ。世界的に共通する命名法則に則った名前と思ってくれて差し支えない。解説すると長いので気になる人は調べてみよう。
単に育て方やどのような植物7日が知りたい場合は、検索欄に文字列をそのまま打ち込んで検索すれば、その植物が出てくる。
更に凶悪なタグになるとこうなる。
ちなみにこのタグ、自分もなんだかわからない……わかる方がいたらコメント欄で教えてほしい。ホムセンパフィオについていたやつなので、TM交配のなにかな気はする……
そして最後はタグのない「ナゾノクサ」を持ち帰ってしまった場合である。そんな事あるか?と思うだろうが、あります。
ぶっちゃけSNSできいたほうが早いが、一応価格から覚悟を決めることはできる。
植物には「安いほど強い」という鉄則がある。
安価な植物は頑丈で増えやすいので出回る数が多く、安いのだ。百均の観葉植物は値段に対していいものが多い。なお土。
問題は高価な草だ。こういう植物は「雑魚で全然増えない」から高い。
おおまかにだが、鉢や包装を除いた、植物本体の値段が800円前後までだったら、それほど難しい植物ではない。1000円を超えると、管理に癖のある植物の可能性がある。3000円を超えたら経験者でも枯らす難易度のものが入り始める。
次からようやく、植物の園芸分類別に紹介をする。
花苗
いわゆる「花壇で見る草」が花苗と呼ばれる。園芸店の主力である。
植物全体から見ると強健な連中が多いと思う。最も安価なパンジーは78円で手に入って、よく育つので良い。
基本的に日差しの当たる場所で風を受けているのが好きな連中。
注意点としては、家の中では育たない。なぜかというと、お部屋の窓ガラスというのは実は目に見えない日光を半分ぐらいカットしていて、こういう植物には足りない。
一般的に多かれ少なかれ虫が来るので、ものすごくこだわりがない限り無農薬はおすすめしない。植え付けるときにオルトランDXを突っ込んでおけば、当面の虫は防げる。
一年草と宿根草
お外の草の枯れ方は、「一年草」と「宿根草」で大体二分できる。
一年草は、名前の通り一年で種をつけ、暑さか寒さで枯れてしまう草。
どうしても失いたくない場合は、「夏越し」「冬越し」をすると翌年もいきていてくれるので、検索してみよう。
安価なものが多いので一年で寿命と割り切ってもいいし、夏越しか冬越しかをして、翌年に持ち越しても良い。
宿根草は逆に同じ株が毎年出てくる多年草の一種で、季節によって地上部がなくなって根っこだけで過ごし、やがてまた芽吹く草だ。
有名所ではラナンキュラスがこれに該当する。
宿根草は地上部がなくなるお休み期間を経るたびに巨大化する。2年目から本気出す奴が多い。
つまり、宿根草はパッと見いなくなっても枯れていない。枯れたと思ってうっかり処分するとものすごくもったいないので、手持ちの草が一年草なのか、宿根草なのかは調べておこう。
黒いポリポットの罠
花苗は、たいてい黒いポリポットに入っている。
すぐにどこかに植え付ける場合はいいが、時間が取れないときに、結果的に放置してしまって事故ることがある。
既に草を育てている人は、手持ちのスリット鉢に避難させることが多い。有名所は「プレステラ」と「スリットポット」。この鉢は縦方向に裂け目が入っていて、通気性が良い。
植え替える時間が取れないときは、これにならって、黒いポリポットの底を縦に切開すると、多少マシになる。
剪定
花壇の草は、かなりの割合で剪定を必要とする。
花苗は人間に魔改造されて際限なく成長する物が多く、ほっておくとべろべろに伸びすぎて自滅してしまう。よって短く切り戻す必要がある。植物の不要な部分を切り落とす行為を剪定と呼ぶ。
剪定は植物によって切り方が違うので、いちいち調べてほしい。
特に厄介なのがアジサイで、切る時期と場所を間違えると来年咲かなくなるので、初めて手に入れた人はすぐに調べよう。
ハーブ
検索すると「育てやすい」と出てくるが、それ故に枯らした人は多いハーブ。
ハーブの死因のたいていは水死である。
ローズマリー、バジル、オレガノといったハーブ類の多くは地中海周辺地域が原産で、夏場はアフリカから乾燥した熱風が直撃し、冬季が雨季という季節がサイクルしている。
したがって、雨季が夏である日本において、高温での水没による窒息が致死的になる。
なぜ外にあるものが水死するのか?鉢植えの下にお皿を設置するからである。置いている人は今すぐ撤去してほしい。
鉢植えの下のお皿を撤去してください。
大事なことなので2回言いました。
水はけが悪く、雨天時に冠水する場所に植えるのも避けたほうが良い。
水は、必ず土の表面が乾いたのを確認してあげる。
土が乾いたかどうかわからない場合は「サスティー」という超便利商品があるので、思い悩むよりサスティーを買ってぶっ刺すのが良い。
土から水死を回避する
水はけの良い土の植えることが、長生きの秘訣となる。
「水はけの良い土」とは「水をぶっこまれたらすぐに染み込んで表面に停留しない」土である。市販の「ハーブの土」を購入するか、チャレンジャーは市販の培養土に発泡した「パーライト」「鹿沼石」など水がスルッと抜けるようになる成分を混ぜると良い。
またハーブ類は鉢のサイズだけ巨大化するので、自分が管理したいサイズの植木鉢に入れるのがおすすめ。
その後の管理
先述の通り、地中海の直射日光を浴びて平気な連中なので、暗いところは苦手。屋外のよく日光の当たる場所に置く。
そして土の表面が乾いたのを確認してから水をあげる。
せっかくここまでやっても鉢の底にお皿を置くと水死するので必ず置かないか、うっかりおいた人は今すぐ除去すること。
野菜・果樹
食べ物を得るには、自然と戦わなければ生き残れない。
すなわち、野菜・果樹は、総じて植物以外の生き物の知識を必要とする。
一般的な育て方は「野菜の名前 + 育て方」で検索するとわかりやすい説明が無限に出てくるので、もっと根幹の話をしよう。
農業とは、人間による最大の自然破壊だ。
自然を切り開いて畑を作ることは、その土地の生態系を一掃するのと同義である。必然として人の管理下にない「自然」の皆さんは、人の管理する植物を襲撃してくる。
その上食いやすいよう品種改良された植物はなにかと脆弱なことが多く、あなたのかわいい草を守るためには、襲い来る捕食者や天候不順と戦わなくてはならない。
虫との戦い
農業とはそもそも虫を無慈悲に殺戮する行為である。植物を育てさえしなければ愛らしいダンゴムシですら、野菜を育て始めると脅威になる。「農薬を使わない」というのは、「人力で虫を殺す」ことを意味する。
虫だめな人は野菜・果樹はやめたほうがいいです。(直球)
大前提として、理解してほしいのは、スーパーに並ぶ無農薬・有機栽培は、幾度の草の死を超えてきたプロの農家だから安定してできる技ということだ。このページを見ている段階の人間が挑むと、十中八九虫との戦いに絶望するハメになる。
ではどの程度の力がつけば戦えるだろうか?第一に「イモムシを素手で除去できる」こと。虫が苦手な人はこの時点でおそらく挫折する。第二に、「黄色と黒のしましまの飛んでいるやつを目視で判別できる」こと。目視でハチとアブの区別、ハナバチとスズメバチの区別がつかない人間が無農薬をやるのは苦行になる。それでもやりたい人は、最初の三年は虫に餌をやるだけで終わる覚悟をして欲しい。もはや趣味の領域か怪しくなってくる。
養蜂をやっているのでないなら、「ネオニコと有機リン最高!」と言ってオルトランDXを入れたほうがよい。
そして残念ながら、農薬を撒いても虫は来るので、虫を手動で始末しなければならない日が必ず来る。
例えばそれは農薬が効かない大型昆虫だったり、農薬を雑に使って薬剤耐性害虫を大量に作ってしまった迷惑なご近所さんだったり、ここ数年で移入した、どの農薬が効くのかわかっていない新しい外来種だったりする。
信じようと信じまいと……
虫は来ます。
病気、雑草、害獣
病気もかなり多い。
梅雨時には長雨で、生きているうちからカビが生えて死ぬ「うどんこ病」や「灰色かび病」が頻発するので、カビる前に殺菌剤を撒いたほうが良い。
こういった病気は雑草が媒介することも多い。
一度「その辺の草」をよく見てみてほしい。よく見ると、雑草は以外と元気ではないことがおおい。病気だったり、虫がついていたり、栄養が足りなかったり、野菜だったら食べられない段階で生きている雑草は多い。ばっちいので雑草はしっかり退去させよう。
またみんなが想像するより多いのが、鳥害。
ヒヨドリは甘えた5cm四方の網目などは簡単に突破してくるし、カラスはドリルくちばしでスイカを破壊したりする。
これは素人が駆除する訳にはいかないので、なんとかもっと細かいネットやテグスを張って防除するしかない。
天候不順
この項目要るか?
お庭のスペースなら日照りは文明の利器上水道でなんとかなるが、梅雨が終わらず雨天続きや台風連発、これはもう趣味者ではどうにもならん、諦めましょう。
スーパーの野菜コーナーを支える農家の皆さんに感謝。
連作障害
連作障害というものが存在する。
同じ土地に同じ科の植物を植え続けると、土壌の中の肥料分や微生物が偏り、最終的に土壌と植物が破壊される、という奴である。特にナス科とウリ科で顕著に出やすい。
詳しくは検索していただくとして、大事なのは「どの野菜が何科に分類されるのか」把握しておく必要があること。
ちなみに、ナス科は重要な作物を大量に含んでいて、ナス、トマト、ピーマン、パプリカ、唐辛子、ジャガイモ、タバコは全部ナス科である。
さらにちなみに、ナスの分類はナス目ナス科ナス属ナスである。聞いてくれてありがとナス。
バラ
バラは病害虫対策・施肥・剪定といった、お外の草の管理の最終試験のような管理を必要とする。総じて初心者向けではない。だが実際美しいので、持ち帰ってしまう気持ちはわかる。
逆に言えば、バラの管理に成功した場合は、お外の草の大半は管理できるようになると思う。気合を入れてぶつかるのもいいかもしれない。
バラは、死因があまりに多種多様で、そのほとんどが「バラ 育て方」でググって出てくるもので触れられているので、ここでは特に説明することがない。
バラは人類が長らく品種改良してきた植物で、美しさだけを追求されてきたため、植物の中では野菜果樹を超えて「クソ雑魚」に分類される。
バラの中で「強い品種」と言われるのは、他の植物でいうと「普通」か「ちょっと癖がある」段階である。虫はバンバンくるし、バラの病気の代名詞でもある「黒星病」は、「雨に濡れてカビが生える」という驚くほど安易な理由で罹患する。野生なら間違いなく淘汰される遺伝子だろう。また、園芸植物の中でもガンになってぽこじゃかお亡くなりになる植物はバラぐらいであろう。
園芸コーナーにいくとバラ専用の農薬や殺菌剤が大量においてあるのは、必要になるからである。
たまに無農薬でバラが毎年咲く猛者もいるが、その人は庭に生態系を構築できる箱庭の創造主、Lv100のアルセウスなので、この記事を見ている段階のコラッタが無農薬に挑むと無様に玉砕する。
こんなクソザコ植物のバラだが、棘だけは本当に強い。けっこう気合の入った分厚い手袋をしていないと普通に怪我をする。自分の体感だと、魚のヒレの棘ぐらい鋭い。童話「いばら姫」の茨も、バラの刺突を味わったことのある人だと「ウワァ~」となりがち。
観葉植物(種子植物)
ここから打って変わってお家の草だ。
観葉植物の多くは温暖な地域の出身である。
したがって、寒さには極端に弱く、気候の変化に合わせて管理を変える必要がある。
観葉植物を迎えたら、温度計を買おう。
メジャーな品種はおおむね強健で、生育難易度が低めのジャンルと言える。
また普及種はサスティー最適解の一つなので、水やりに失敗しないか心配ならサスティーをぶっ刺しておいたほうが精神に良い。
観葉植物と気温
第一に気をつけてほしいのは、基礎知識で述べたように、「植物の置き場は最高・最低気温で決める」ということ。
観葉植物はたいてい熱帯出身で、人間がへろへろになる猛暑・高湿度でもピンピンしていることが多い。
だが夏の強さを過信すると冬の悲劇が起こる。大体の観葉植物は15度を下回ると成長を止めてしまう。「15度」というのは観葉植物にとってある種のボーダーラインで、ここを下回ると枯死するものが増える。
覚えておいてほしいのは、熱帯植物はいかに日中暖かくても、夜間の最低気温で冷えると即死するものがいる。冬季に持ち帰ったら必ず暖房のある場所に設置すること。うっかり玄関にほったらかすと深夜に5度を切って翌朝死んでいたりする。
植物を日中太陽に当てようとしてベランダや窓際に出したときの「取り込み忘れ」による事故死も多い。大事に育ててきた植物が一晩で枯れ草になってしまうのは非常に悲しいので、私はお部屋の植物は冬場無理に太陽に当てなくても良いと思う。
一番最初に、植物は植え替えなければならないといったのを覚えているだろうか?
寒いのが苦手な観葉植物の植え替えはシーズンが問われる。最適解は春から初夏、晩夏から初秋。
具体的に何月だよ!?と聞かれることもあるが、日本は南北に長いのでその問は無意味である。お住まいの夜間の最低気温が15度を上回り、なおかつ暑すぎないシーズンが良い。沖縄の人と北海道の人で、別方向のクソゲーとなる。
植え替え時期を外したら
ベストシーズンに教科書通りに植え替えるのだったら何も問題は起きない。
だが、そのまま冬を越そうと思っていたのに、冬場でも日中の気温が高くて、思ったより成長して根っこが詰まってしまうパターンがある。これはほっておくとお亡くなりになるので、植え替えを強行する。
なるべく暖かい日に、日中の一番気温が高い時間帯にやるのが良い。
・なるべく水が乾いているタイミングで
・ポットから植物を抜き
・なるべくねっこをいじらず
・一回り大きな鉢にそのままいれて
・市販の観葉植物の土を足し
・水をぶっかけ
・24時間は暖房の付いた場所で管理する
観葉植物(シダ)
種子を作らず、胞子で増える植物である。
被子植物と異なるのは、観葉植物のセオリーである「土の表面が乾いたら水をやる」が通じないところだ。トキワシノブ、ダイオウウラボシなどそこそこ乾燥に耐えるシダもいることにはいるが、基本的にシダは水を切らしてはいけない。
天下のサスティーも、個人的にはシダに限ってはあまり有効でないと思う。
テラリウム組について
最初に、植物は乾燥と水没のサイクルを必要とすると書いたが、いくつかのシダはその例外となり、常に水没していないとやる気を無くしてしまう。
自分の飼っている範疇だと、ハートファンやアンテナファーンは土がドログチャぐらいを維持していたほうが良い。
判別方法としては、販売時に「テラリウムに使える」と書いてあるシダは、だいたい水没状態を好む。
水没組は、底面給水鉢に入れておくと調子が良い。これで調子が悪くなってきたときはだいたい根詰まりしている。
木生シダについて
ブレクナム・ホニャララや、ヘゴ、ヒカゲヘゴなどが木生シダに該当する。
シダの中でも管理が難しい部類に入る。
エキゾチックな外観が魅力だが、驚くほど寒さに弱いので、冬15度を切ると良くない。
同時に空中湿度を要し、いわゆる「ヘゴ材」の部分が乾くとやる気を無くしてしまう。霧吹き必須であるが、水をやるついでにヘゴ部分に霧吹きしておけば意外と元気に巨大化する。
観葉植物(ビカクシダ)
よく聞かれるので項目を分けた。
ビカクシダは着生シダに該当するシダの仲間である。野生では、他の樹木に張り付いて暮らしている。
園芸植物の中でもかなり奇天烈な姿をしているので、インテリアとして人気。
和名のビカクシダはPlatycerium属の総称で、その下に更に細かい分類が分かれる。一番普及しているビカクシダ・ビフルカツム(Platycerium bifurcatum)、及びその園芸品種のネザーランドは姿形がよく強健で、安価に手に入り、シダの中ではずばぬけて乾燥に強い。同じくビフルカツム系品種のヴィーチーも強健だ。
とはいえ、やはりシダの仲間なので、他の観葉植物と比べると、水やりの頻度は多い。
またビフルカツム系でない他のビカクシダは耐寒性が低く、冬季は屋内での管理が必須になる。乾燥にもそれほど強くない。
特にいきなり経験者向け高額品種のリドレイの小苗を買わないこと。
何?もう買っちゃった?
初年度の冬場は24時間空調入れて植物育成ライトつけて18度維持がオススメです。水切れに注意、水苔は朝晩二回はチェックしましょう。
観葉植物(エアプランツ)
根っこがない草だが、実はパイナップルと近い親戚にあたる。
よく水やりのいらない草と勘違いされるが、エアプランツは単に根っこ以外から水を取り込む方法を持っているだけなので、水やりは必要。
野生では猛烈な霧や、夜露などを集めて暮らしている。健気だ。
どの程度水やりがいるかは、置き場の気候で異なる。
また安い草は強い法則にもれず、百均のエアプランツは育てやすく、数年維持すると素敵な姿になる。
蒸れに注意
名前の通り風通しのいい場所が好きな植物で、空気が停滞する場所だと一気に弱る。
屋内だったら無理に窓際に置くより、人間が通る場所に寄せたほうが調子がいい。
またいくつかの品種は高地性で、高温多湿状態に極めて弱く、夏場冷房のない場所に置いたり、濡れたまま日光を直撃させると、茹でられて粉々になってしまう。(エアプランツの多くは死ぬときは花が散るようにすべてが一瞬で散って無になるので、初めて落とした人は呆然とする)
即死コースが用意されているタイプの植物な上に、一番危険なのは水やりするときというちょっとテクニカルな植物でもある。
小さいうちはしっかり濡らしても大丈夫だが、大型品種になると、霧吹きでも中央に水が貯まるとアウトだったりするので、盛大にかけたら一回水を切ったほうが安心。
最適解は置き場の環境によって大きく異なるので、自宅でベストを探りながら管理してもらいたい。ちなみに筆者は単に毎日霧吹きをかけている。
胡蝶蘭
贈答に使われることが多い胡蝶蘭。
「うっかり買った」というより「予期せずもらって持て余す」ことのほうが多いと思う。
まずはもったいないけれど包装を剥いてしまおう。
大体の胡蝶蘭は、包装を解除すると、一番上にある黒いポットと同じ形状の、透明なポットに入っていると思う。
ポットの中身は土ではない。胡蝶蘭は「水苔」に植えられている。
そしてぶっといにょろにょろの根っこが見えると思う。胡蝶蘭はステレオタイプな植物とは違った生態を持っている。
彼らが現れたとき、地上はもはや緑だった
ランの仲間は植物の中でも最後にこの星に現れた。彼らが出現したとき地上のあらゆる場所にはすでに植物が住んでいたのである。居場所がなかったランは住む場所を探し、多くのランが他の樹木に「着生する」という形態を取った。
野生の胡蝶蘭は、樹木の幹に張り付いていきている。よく勘違いされるが、着生植物は、他の木に寄生しているわけではない。場所だけ間借りして、彼らは自力で光合成をして栄養を作り出している。
この性質ゆえに、胡蝶蘭は植物の中でもトップクラスに乾燥に強い。自宅の体感だとエアプランツより強いかもしれない。というかそもそも植物として強い。
鉢植えか、板付か
お察しの通り、胡蝶蘭の死因はダントツで「根腐れ」となる。
次点は「病気」だが、これもやはり空気が淀んでいると罹りやすい。
乾燥に強い植物は揃って湿気に弱い。
水をやるかどうかは「水苔を触って確認する」のが最重要になる。
水苔が濡れているうちは水をあげてはいけない。死にます。
黒いポットに同じく、透明ポットもやはり農家各位のスキルありきで管理できるものなので、胡蝶蘭も本当は植え替えたほうが良い。
普通の植物は抜いたらとにかく何かに植えなければいけないが、胡蝶蘭には「とりあえずポットから引っこ抜く」という荒業が通用する。草をかまいすぎ水あげすぎがちな人は、何に植えるか考える前に引っこ抜いてしまおう。
引っこ抜いたあとも、乾いたら濡らす管理を続ければよい。ただし乾燥した場所で根っこむき出しだと2時間で水が切れたりするので、一日数回構う必要が出てきたりもする。水が切れると例のぶっとい根っこにパサパサ感がでてきて、更に切れるとしわしわになってくるので、よく見よう。管理の幅が広い分、観察に力を入れる必要がある。
胡蝶蘭をポットから引っこ抜いたあとには、大きく分けて2つの育て方がある。
1つ目は、鉢植え。
素焼鉢に、水苔か洋蘭バークで植え直す。
植え込み材の選択は、「置き場がどれぐらい水が蒸発する環境なのか」を見計らってする。バークだと根腐れしにくいが、水切れの頻度も多いので、頻繁に水やりする必要が出てくる。
季節で空調を切る時間がどれぐらい存在するかどうかでも変わってくるので、自宅に温湿度計を置いてチェックすると良い。
もう一つは、板付。
根っこに水苔を巻いて、野生の状態よろしく板にくくりつけて吊るしてしまおうという発想である。
メリットとしては、根腐れの心配はまったくない。しかし猛烈な勢いで水苔が乾燥していくので、水やりの頻度が猛烈になり、ちんたら霧吹きを使っていると腱鞘炎になりそうになる。なった。
多肉植物
多肉植物とは、乾燥地に適応し、葉っぱのなかに水分を溜め込むタイプの植物の総称である。
この生態を持つ植物は世界中の似たような地域に生息し、実は日本にもいる。
ピンキリの多肉植物たち
多肉植物を衝動買いしたら、最初にすべきことは「名前+育て方」で検索である。
なぜなら、多肉植物という名称は「地球」ぐらい巨大なくくりであって、多肉植物コーナーでまとめて売られているものでも、育ち方がまるで違うことがものすご~く多いからである。上記の「乾燥地」にしろ、暑い場所、寒い場所、寒暖差の激しい場所、あったかいけど風が強い場所、夜露が降りる場所etc……と「乾燥」のうしろには様々な条件に分岐する。99%は先人たちの集合知で育てるため、検索が使えなければ育たない、インターネットの申し子の草。植物についているラベルは捨ててはいけない。
あるものはほとんど放任で育つが、あるものは夏の暑さで溶けて消え、あるものは冬に凍ってミイラになる。細かい分類によって管理難易度や難易度が大きく異るので毎回律儀に調べるのがよい。
また、多肉植物の多くは休眠期間を持ち、その生活サイクルに合わせて管理する必要がある。植え替えのシーズンも合わせるのが良い。
屋内管理について
よく聞かれるのは「お部屋の中で育ちますか?」。
結論から言うと、設備投資をするか、部屋の立地が超良い場合は可能になる。
基本的に多肉植物は強日照を必要とするので、屋内ではきれいに育ちにくい。先にも述べたが、透明な窓ガラスは実はかなりの量の日光を遮断しているからである。
一応、植物のベストタイムである日の出から正午までの間に日光が直撃するようなレアな立地なら、屋内でも結構きれいに育つが、この条件に当てはまる場所は稀であるし、おそらく賃貸ならいい値段の家賃が取られるだろう。そしてそこまでかけても、やはり屋外で日光を浴びて育ったもののほうが美しくなる。
どうしても部屋に置きたい場合は、「植物育成ライト」を迎えてしまう方が手っ取り早い。ただし安物だと明るさが足りなくて、あまり効果がないか、ライトをものすごく植物に近づける必要が出てきて、部屋の中にある植物がよく見えない本末転倒になり、電気代を食う金成らない木となる。
サボテン
「サボテンすら枯らした」という言葉があるが、そもそもサボテンは管理が難しい植物。なので「サボテンすら枯れた」という表現はあまり正しくない。「いきなりサボテンに挑んだら枯れた」とするほうが正しい。
サボテンを迎えたら、育て方を調べよう。
典型的な「毎日水をあげ続けたら枯れた」などはもし一度でも検索していたら回避できる。なぜなら「サボテンの育て方」でヒットするページのおおよそすべてに「水をあげすぎると死ぬ」と書いてあるからである。
意外と害虫が来る
実はネジラミやカイガラムシなど、害虫が多い。
購入して植え替えるときに、オルトランDXを混ぜたほうが良い。
基本は屋外
サボテンのトゲは本当に刺さる。
サボテン自体が風がすきな生き物であることに加え、屋内だとうっかり人間か草がころんだときに大惨事が起きることがあるので、極力外に出しておきたい。特にウチワサボテンの仲間は棘が超細かい上に返しがついているので、子供やペットが引っ掛けると最悪になる。
もしもひっくり返したら、ガムテープでしつこくペタペタして除去する。
ちなみに私はフリースの袖にバニーカクタスを引っ掛けて倒したことがあるが、すべて除去するのに4時間かかった。本当に服を捨てようかと思った。
とはいえ、やはり「蒸し暑いのがだめ」な種類と、「寒いのがだめ」な種類がいるので、気温の適性はきちんとググって確認したほうが良い。
気温差の激しい砂漠に適応してはいるものの、日本の冬は大抵の砂漠の夜より寒いので、冬季は屋内に入れておいたほうが良い。
夏場は乾燥地組の例に漏れず湿気に注意。梅雨は特に気をつけよう。
緋牡丹(ヒボタン)について
ヒボタンというサボテンがいて、これは普及している割に例外的な管理が必要なので特筆しておく。
ヒボタンは真っ赤や真っ黄色でころころしたかわいいのが、緑の棒の上に乗っかった姿をしている。これ、見た目は可愛いのだが、実は「上の部分は人間に魔改造されて葉緑素がなく、接ぎ木で台木に寄生しないといきられない」というとんでもない初見殺しである。つまり、赤い部分と緑の部分は別の植物だ。
台木はヒボタンに栄養を吸われているので、どんなに上手に育てていても数年すると台木の寿命がきてしまって、枯れる。
長生きしてもらうには、新しい台木となるサボテンに接ぎ木し直す必要がある。
サボテンの接ぎ木は園芸メーカー大手のプロトリーフさんがYoutubeに動画を大量に公開しているので、ヒボタンを持ち帰ってしまい長生きさせたい人は、いざとなったら焦らないように見ておくことをおすすめする。
サボテン?(ユーフォルビア)について
サボテンだと思って買ったら、タグに「ユーフォルビア」と書いてある……
それはサボテンではありません。
よくサボテンと誤認される植物。「彩雲閣」や「オベサ」はよく間違えられていると思う。
ここまで律儀に通して読んでいる人にはくどいと思うが、知らない植物を買ったらタグの名前で検索しよう。
サボテンとの違いで気をつけてほしいことは、樹液の毒性が強いこと。
ユーフォルビアの仲間の外見は非常に様々で、ただの草に見えるものからオベサやハナキリンのような異形まで様々だが、多かれ少なかれ毒性を持っている。取り扱うときには手袋をして欲しい。いじっている最中にうっかり目などをこすらないこと。
またいくつかの種ではすさまじく臭い花が咲くので覚悟してかわいがってほしい。
アガベについて
どうしてそんな高い草を!
テキーラの原料になる植物。酒乱の善き隣人。
荒野の乾燥に耐えるメキシコの本物の男なので、同じ本物の男であるサボテンとだいたい同じ管理で良い。
強いと思うとところがどっこい、高温多湿でカビの楽園である日本で育てるとなると、夏場茹でられたり、梅雨に病気をもらったり、まさかの日光で葉緑素が全部焼けてしまったり、よくわからないけどとにかく腐ったり、ころっとお亡くなりになることがままある。冬場外に置くと当然凍死することも。
過酷な環境に適応した本物の男は、種類の違う過酷な環境には再適応できないのだ。それと同時に、日本の気候は植物にとって非常に過酷であることを教えてくれる。
またもれなく高額であるので枯らすと心と財布の両方が痛む植物でもある。
雑菌が天敵なので、不衛生な場所に置かないこと、汚い手で触らないこと。野ざらしで管理するのはかなり勇気がいる。
屋内で管理する場合は植物育成ライトを当て、サーキュレーターやエアコンの送風などで空気を回すと良い。
またメキシコの本物の男なので、サボテンよろしく葉っぱの棘が非常に鋭い。うっかり手を引っ掛けるとバックリいく。危ない。そして人間の血は植物的にはばっちいので、お互いのために人間が怪我をしないに越したことはないのである。なるべく手袋をして扱おう。
コーデックス・塊根植物
どうして一番難しいのを買ってしまったのですか
まず、アデニウムやパキポディウムなどをはじめとした塊根植物は、上記の全てよりも格段に管理難易度の高い植物であるということをご理解していただきたい。
つまり、入門ページを見ている段階の人が持ち帰ってしまった時点で、枯らす可能性は非常に高い。
しかし、なにもせずに枯らしてしまうのはかなしい。迎えたからにはベストを尽くして、あわよくば懲りずにぜひ次に挑んでもらいたい……が、ことによっては植物自体が高額すぎるので富豪でないと次がないというハードルもある。
もっとも、最近は安価なものも出回りだしているので、見つけたらラッキーである。
なぜ難しいのか
塊根植物は非常に乾燥した地域の中でも、湿気がほとんどない場所の出身である。
乾燥地の植物全般に言えるが、彼らの原産地では湿気で繁殖する菌が生きられないので少ないか、強風で定着できない。よって、いわゆる塊根植物は湿気大国の日本で大繁殖するカビや腐敗菌におどろくほど耐性がない。
コーデックスの死因筆頭は「生きながら木の幹が腐ってしまった」である。これは場合によっては「腐敗臭でわかる」ので、コーデックスを飼っているひとはみんなやたらと草の匂いを嗅ぐ怪しい行動をする。
一人で攻略するのは非常に困難なので、どこかのSNSの塊根植物コミュニティに参加するのが良いと思う。
最初にすべきは置き場の構築
おそらく、勢いで迎えてしまった植物は、そこそこいい値段がしたと思う。迎えてしまったからには設備投資をしよう。もし最悪だめでも次の子に使える。
まず植物育成ライトの購入を強くおすすめする。
そして上記の通り不衛生になると即死するパターンが多いので、置き場は必要以上に清潔でなくてはならない。
かといって屋内では菌を定着させないためにサーキュレーターなどで空気を回すのが必須となる。
人災について
コーデックスは愚かな人間がネックになることが多い。
1つ目は「盗難」である。
悲しいことに、人の植木鉢をパクっていくカスはそこそこ存在する。高額な塊根植物の盗難リスクは非常に高い。(植物といえども命であって、盗難と呼ぶより誘拐と呼んだほうが心情的には適切だと思う)
先に植物育成ライトをおすすめした理由も盗難対策だ。外に出さずにしっかりした植物育成ライトを設置するか、二階以上のベランダで、外から見えない生育するのが良いと思う。
ちなみに筆者は治安があまり良くない場所に住んでいるので、高価な植物は一切外に出さないようにしている。部屋の窓はすべて二重鍵で、基本的には開放しない。
そして2つ目が「詐欺」である。
塊根植物は「ベアルート」と呼ばれる輸入された株が流通している。
ベアルートの通販は非常に詐欺が多いので、本当に気をつけてほしい。
なぜかというと、海外から日本に植物を持ち込むには、検疫前に土をすべて落とす必要があるので、植物は根っこを切られて輸入される。根っこを切られたら植物は当然葉っぱを落としてしまう。そうなると、いきているのか、枯れているのか、根っこも葉っぱもないネットの写真だけで判断しなければならない。初心者にこれを鑑別するのはかなり難しい。強いて言えば、このスマホカメラのご時世に、写真写りがクソなやつはだいたい詐欺である。
とはいえ元々管理の難しいものであるから、うっかり数万円で枯れ木を買わされたとしても、購入後の管理ミスとして泣き寝入りするしかない、というわけだ。
これから迎えたい人は高額な買い物をする前に、(比較的)安価なアデニウムやパキポディウム・ラメリーを育てて鍛えておくのが良いと思う。
個人的な心情だが、筆者はベアルートは好きではない、というかぶっちゃけ嫌いなのでいい感情がなく、バイアスが強めに掛かっていることは記載しておく。
なぜならそれらの産地の多くは動植物の違法取引地域を産地とし、国内に持ち込まれたあとも流通経路を秘匿するバイヤーを信頼できないからである。
アフリカ地域の希少な植物は、現地のレンジャーが銃を持って命がけで守っている。植物でこうした護衛を付けられているもので有名なのは、ウェルウィッチアの最大株であろう。
希少種の保護のために、密猟者と撃ち合いになり落命する人がいるのである。こうした事情を鑑みると、私は途上国植物の流通経路の秘匿、あるいは不詳のまま販売は、かなりの抵抗を感じる。少なくとも、私は自宅に人血を吸った植物を迎えることは、強く回避したい。私がベアルートに手を出さない理由は以上である。
無論、こうした思想は他人に強制できるものではない。途上国の採集者の中には、例えば「大企業の開発に環境ごと破壊されるなら、先進国の金持ちの元で生き残ったほうがマシだ」という思想で採取を行う人もいる。何が正しいか間違っているかが、今すぐ決まるような簡単な状況ではない。結論がどうであれ、皆自分の考えを持って購入してほしいと切に願う。
そして野生株を迎え入れたなら、大事にしてほしい。その株の遺伝子は、現地の遺伝子プールから永久に失われたのだから。
おまけ、植物が折れた!
植物が折れちゃった!
そんなときは急いで折れた部分に支柱をあてて、マスキングテープで固定するとくっつくかも。小さいものなら爪楊枝、大型の植物なら割り箸が使いやすいが、とにかくまっすぐ伸ばせればなんでもいい。
おまけ、その2
ここまでの写真全部手持ちの草だぜ!(草顕示欲)