親子の絆が自己肯定感を高める【愛着の形成】
まえがき
現代では様々な家庭の形があります。
シングルマザーやシングルファザーの家庭も少なくありません。
そんな各家庭での悩みのひとつに、
「こどもへの愛情は足りてる?」「こどもへの愛情のかけ方が分からない」
ということが挙げられます。
こどもを必要以上に叱ってしまっているのではないか?
感情的に怒ってしまい、こどもの成長の妨げになってしまっているのではないか?
そんな思いのパパやママもいますよね。
今回は、愛情不足?愛情間違ってない?という悩みを解決すべく、「愛着の形成」について解説していきます。
ぜひ最後まで読んでくださいね。
愛着(アタッチメント)の形成とは?
愛着形成とは、こどもが特定の他者に対して持つ情愛的な絆のことです。
愛着の形成は他者に対する基本的な信頼感を育て、心の発達や後の人間関係に大きく影響します。
乳幼児期に愛着に基づいた人間関係が存在することで、健全な社会性を育むことができます。
こう言うと何だか急に”何かしなきゃ”と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
日本の子育てにおいて85%程度は普通の愛着形成が成されています。
また、愛着形成が不十分であっても養育者以外との関わりと導きによって、愛着形成のシステムは再び動き出すことができます。
愛着形成の方法
愛着の形成に必要なことは何か?
これには”愛情ホルモン”と呼ばれるオキシトシンの分泌が大きく関係します。
オキシトシンは、親子の関係性やこどもの成長を促す効果があります。
オキシトシンは、こどもを「愛おしい」「守りたい」「かけがえのない存在」と感じることで分泌されます。そしてこどもが「嬉しい」「楽しい」「気持ちいい」と感じることで分泌されます。
スキンシップ
皮膚は露出した脳である。
例えばこどもの肌を触った時にどのような感情を抱きますか?
柔らかく温かいすべすべした肌を触った時、きっと「愛おしい」と思うとはずです。
自分よりはるかに小さい手を握った時、きっと「守りたい」と思うはずです。
スキンシップをすることで「かけがえのない存在」と、より強く感じるようになります。
授乳
授乳においてもオキシトシンは分泌されます。
ママから分泌したオキシトシンは母乳を通して赤ちゃんの体内に入り、赤ちゃんはリラックスして幸せな気分になります。すると赤ちゃんもオキシトシンを分泌しやすい体質に変化していきます。
ママの笑顔
こどもにとって特にママの笑顔は一番の安心です。
笑顔で微笑みかけることでもオキシトシンは分泌されます。
そもそも「見る」という行為は愛情を注ぐという行為と同じ意味を持ちます。
さらにママの笑顔にはこどもに対してこんな効果があります。
笑顔が増える
自信がつく
積極的になれる
友達と仲良くなれる
家族の交流が親密になる
総じてこれらは”自己肯定感を高める”ことになります。
言葉かけ
まだ言葉を充分に話せないこどもに対して、気持ちを代弁することも効果的です。
赤ちゃんの頃なら、泣いた時は「お腹すいたね」「おしっこ出たね」など。
パパママの気持ちを穏やかに伝えることも大切です。
「大好きだよ」「愛してるよ」「あなたが一番大切だよ」
たくさん声をかけて安心を与えてあげましょう。
共感
こどもに失敗はつきものです。
たとえこどもに非があったとしても、否定的な言葉ではなく共感する姿勢を示してください。
「よく話してくれたね」「つらかったね」と受け止めてください。
そうすることでこどもは親を自分の”安全基地”と認識し、失敗した時も嘘をついたり隠したりすることはしないでしょう。
愛着障害とは?
愛着障害とは、親などの特定の養育者との愛着形成がうまくいかないことで現れる困難の総称です。
医学的、心理学的に様々な考え方があり定義はありませんが、何らかの対人関係や社会性に困難がある大人の中に、その原因が愛着形成にある問題があると考える人も少なくありません。
反応性愛着障害
5歳までに発症し、素直に大人に甘えたり頼ったりできないことが基本的な特徴です。
0歳児の頃から親に無視されたり虐待されたりなど、著しく不適切な養育環境におかれたこどもにみられます。
【主な特徴】
・他者を警戒する
・攻撃的になる
・無表情
・同年代のこどもとの交流が苦手
脱抑制型愛着障害
5歳までに発症し、初対面の人に対してもべったりと抱き着くなど、状況にそぐわないなれなれしい言動が出たりします。「脱抑制」とは抑制が効かなくなった状態のことで、愛着を示す行為を抑制できない状態のことを意味します。
こちらも虐待やネグレクト、そして養育者の頻回な交代などが原因と考えられています。
【主な特徴】
・初対面の人にでも甘える
・相手の注意を引こうとする
・落ち着きがない
愛着障害の治療
愛着障害と認められた場合に行うことは、まずは安全基地の形成です。
愛着障害のあるこどもは養育者を安全基地とみなせていない場合がほとんどです。
そのため「養育者=安全基地」と認識できるように親族や周囲の支援者がサポートしてくことが必要です。
安全基地の形成が足がかりとなって人と接することへの安心感をや信頼感を生み、人との接し方や距離感も改善することができます。
また、愛着障害があるということは養育者も何らかの問題を抱えていることが多いため、養育者にも焦点を当てて幅広くアプローチしていくことが大切です。
また、養育者の抱える悩みや状況によりこどもを充分に育てることができず、愛着障害の症状が表れたということもあります。
そういった様々な状況を総合的に捉えて、例えば養育者との距離を一旦遠ざける、養育者へのカウンセリングや心理療法、生活保護や育児・家事サービスの利用などを視野に入れるなど、愛着障害を取り巻くすべての要因から解決策を探しだすことを支援者と共に考えていく必要があります。
ひとつ言えることは、
愛着障害の治療は”どの発達段階でも可能である”ということです。
そして医師やカウンセラーだけでなく、深くかかわる機会がある人であれば保育士や教師など誰もが治療にかかわることができます。
親の責任として放置したり、親の領域には立ち入れないと思って見過ごされることのないよう、社会全体の認識を改める必要があるように思います。
愛着障害の誤解
愛着障害に対しては誤解や偏見、タブー視も多くみられます。
正しく愛着の問題を理解し、こどもへの関わりを持つことが大切です。
そこで愛着障害に対しての誤解を以下にまとめました。
産んだ母親の責任
必ずしも母親が愛着形成しなければならないというわけではありません。パパや親戚、周囲の人も含めて、誰かが愛着形成の機能を果たしていれば問題ありません。
育て方の問題
どんな人間関係にも相性というものがあります。
親の育て方だけに問題がある、こどもだけに問題があるというものではありません。
その子の特性、特徴と親の育て方が合わない、つまり相性の問題として捉えるべきものです。
実際、同じ親が同じ育て方で育てた兄弟、姉妹の一方でのみ愛着の問題が起こることも多いのです。
親の養育を受けられない場合や親から虐待を受けた場合だけにみられる現象
不適切とはいえない親の養育を受けた通常の家庭のお子さんにも愛着の問題を抱えるケースも増えいます。
また、こういったケースの親御さんは困っていることを認めないことも多くみられます。
世代間伝達
虐待などでもよく指摘されるように、愛着障害のこどもの親も愛着障害という事例も確かにあります。
しかしその育てられ方だけが影響しているのではなく、親が子育てをする際に再度自分の親(祖父、祖母)から脅威や苦痛と感じられる関わりがあったことが、自身の子育てに影響しているという調査研究があります。
適切な子育て支援の介入が、愛着障害の世代間伝達を防ぐのです。
取り返しがつかない、もう遅い
以前では臨界期(生後1歳6か月)までに愛着形成は完了するという考えがありました。
現在でも敏感期といって、こどもが大きくなると鈍感になり愛着形成、治療が難しいという考え方がありますが、大人になってからの治療の成功事例があることから否定したいと思います。
愛着形成は生涯発達するもので、適切な支援や関わりによって治療が可能です。
他者による愛着修復支援が親子関係を悪化させる
愛着形成は生涯1人の人とだけ結ぶ絆ではありません。
肉親、教師、親友、伴侶など、生涯多くの人と結ぶ関係です。
親子間での食い違いが多い場合、他者と愛着を形成することでどういう関係かを経験し、親子関係は修復しやすくなります。
あとがき
子育ての多くはしつけや教育などの方法論に注目しがちですが、最も大切なことであり基礎となるのが「愛着形成」です。
睡眠不足、精神的肉体的な疲労、毎日イライラしてもう限界。
そんな時こそ「愛着の形成」を思い出して、
優しく微笑んであげてください。たくさん抱きしめてあげてください。
こどもだけでなく、親も気持ちが穏やかになるでしょう。
こどもの自己肯定感を育むためにも、まずはそこから始めてみましょう。