民営化の違和感
民営化という言葉に、最近、違和感を感じます。
国営と民営というような対比でよく使われます。
小泉元総理大臣は、郵政民営化! と声高らかに改革を実行しました。
なんとなく、国営よりは、民営化した方が良い印象を与えました。
ところが、僕らが思っている民営化と、実際の民営化は違っているのではないでしょうか。
民営化 ≠ 市民化
どういう言葉を使えば、適切なのかは難しいところですが、民営化されるということは、一般市民の手に運営が委託されるようなイメージを持ってしまいます。
国が運営するよりも、民間で運営した方が、より効率的で、無駄なく、民間のためになるサービスが提供されるに違いない、と思ってしまいます。
国の天下りなんていうのもなくなるんじゃないかと期待します。
でも、実際は、違います。
民営化というのは、多くの場合、株式会社になるということです。
上場すれば、一般の人も株式を買うことができるので、株主として参画することはできます。
ですが、一般の人も株式を買えることが、一般市民のためのサービスになるのかというと、そういうわけではありません。
民間化=株式会社化=実質的な所有者、支配者が存在する
少し、過激に書くと、株式会社になるということは、大株主が存在することになります。
基本的には、大株主の議決件数が多ければ、その大株主の意向に沿って株式会社が運営されていくことになります。
ちなみに、日本郵政株式会社の一番の大株主は誰だと思いますか?
僕も知らないので、検索して調べてみます。
「日本郵政株式会社 株主」っと。ポチッとな。
日本郵政株式会社の大株主は、財務大臣だった!
なんと、日本郵政株式会社の大株主は、財務大臣でした!
財務大臣 2,559,524
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 107,363
日本郵政社員持株会 73,831
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 61,082
STATE STREET BANK WEST CLIENT - TREATY 505234 35,986
株式会社日本カストディ銀行(信託口5) 32,659
GOVERNMENT OF NORWAY 23,448
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 21,879
JP MORGAN CHASE BANK 385781 21,464
JP MORGAN CHASE BANK 385771 18,453
計 2,955,693
※数字の単位は、千株
どこかの会社か、政府系の法人なのかな、と思っていたのですが、「財務大臣」という謎の文言が出てきました。
財務大臣が2,559,524千株(つまり25億株)、全体の 63.29%を所有しています。
財務省とかならまだわかるのですが、財務大臣というのはどういう意味なのでしょう?
財務大臣は、法人扱いなのでしょうか。
財務大臣が変われば、そのときの財務大臣が所有することになるのでしょうか。
それとも、麻生さん個人が所有しているのでしょうか。
日本政策金融公庫を調べてみる
気になったので、政府系株式会社の代表格日本政策金融公庫がどうなっているのかを調べてみました。
ちなみに、日本政策金融公庫は100%国が保有することになっています。
日本公庫は、国が株式の100%を常時保有することが法律で定められている特別な株式会社で、一般の民間会社や民営化を前提とした特殊会社ではありません。日本公庫が株式会社の形態をとっているのは、株式会社のガバナンスの仕組みを活用して、透明性の高い効率的な事業運営を行うためです。
株主構成は、次の通りとなっていました。
財務大臣 97.13%
経済産業大臣 2.54%
農林水産大臣 0.30%
厚生労働大臣 0.03%
主要子会社 アグリビジネス投資育成株式会社
ここでも、各大臣名が出てきました。
なかなか不思議ですが、国が保有するということは、財務大臣をはじめとする各大臣が株主になるようですね。
民営化とはいったい何なのか
よくわからずに書いているので、話が財務大臣とは何なのか、に脱線していきました。
財務省ではなく、財務大臣が株主として位置づけられているというのは新しい発見でした。
まぁ、それはそれとしても、郵政民営化と声高らかにしたとしても、実態は、財務大臣が所有しているのだとすれば、それは民営化と言えるのでしょうか。
なんとなく、国の手から離れたような印象を持っていましたが、これだと実質国営のまま、一部の財産権を手放したに過ぎません。
しかも、なぜかノルウェー政府がそこそこの割合を持っているという謎。
いろんな企業の株主を調べるのは、新しい発見がありますね。