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THCO のケテン問題について

アメリカ化学会の雑誌Chemical Reserch in Toxicologyに掲載された論文でvapeでTHCOを吸った際の熱分解生成物を解析した論文が発表されました。

論文の要旨


THC-Oは近年インターネット上で入手できる精神作用のあるカンナビノイドである。いまだに多くの国において規制されていない成分であるが、THCOに含まれる酢酸エステルは毒ガスであるケテン発生のリスクが示唆される。実際に、よく似た構造を持つVitamin E(ビタミン E)の酢酸エステルはケテンを発生するということが知られている。本研究では、Δ8-THCOおよびCBN、CBDの酢酸エステルを蒸発させケテンの生成が調査されている。

Kaelas, R et al. Chem. Res. Toxicol. 2022, 35, 1202 Vaping Cannabinoid Acetates Leads to Ketene Formation

Vape流行で話題になった健康問題

2019年にVapeが流行した時に電子タバコによる肺炎の問題が世の中で取り立たされていました。電子タバコでビタミンを摂るなど、さまざまな製品が出回っている中で、肺の病気になった人がかなり多く出ました。日本のニュースでもかなりの記事が掲載されています。これらの原因となった物質はどのようなものだったのでしょうか?その原因は学術的にも広く調査されました。

[FT]ジュールと電子たばこの悲劇 日本経済新聞2019年10月3日付


電子タバコ関連の肺障害、酢酸ビタミンEが関与か/NEJM ケアネット2020/01/14

ビタミンEアセテート、THCOどちらも酢酸エステルになりますが、これらの化合物からはどのくらいケテンが発生するのでしょうか。続きでは構造を載せながら解説しています。またどれくらいケテンが出ると健康に害があるのでしょうか。アメリカの健康基準のデータも併せて載せてありますので是非ご覧ください。

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