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おかやまサムライ巡りに行ってきた【前編】

日本刀好きならきっと一度は行きたい場所、岡山。
岡山県では古くから日本刀作りが盛んに行われており、特に長船という地域は日本刀の聖地として知られています。

私も行ってみたいなーと思いつつ、東京からは距離があってなかなかタイミングをつかめない日々でした。そんな私の背中を押してくれたのが、現在開催されている「おかやまサムライ巡り」。その内容は岡山県立博物館、岡山城、林原美術館の連携企画で、それぞれの施設でサムライに関連した展示を行っています。もちろんその中には刀剣も含まれているわけで……。「今行けばたくさんの刀に出会えるじゃないか!岡山に行くなら今だ!!」と思ったのが、岡山旅を決めたきっかけ。

結論から言うと、すっごくすっごく楽しかったです!!!帰ってきた今、「日本刀面白いな、楽しいな、もっと知りたい!」そんな気持ちでいっぱいです。その想いを文章として残しておこうと思います。

旅のスケジュールはこんな感じ。
【1日目】夜、新幹線で岡山へ
【2日目】後楽園→岡山県立博物館→岡山城→林原美術館
【3日目】備前おさふね刀剣博物館
二泊三日ではありますが、実質一泊二日です。今回は長旅なので、前編後編にわけて書いていきます!



一日目

旅の始まりは夜7時から。
仕事終わり直行で岡山に向かうスケジュールです。連休だったので翌日からでもよかったのですが、明日一日めいっぱい使うために前日夜に行く作戦。ですが、途中人身事故で新幹線内で2時間足止めを食らってしまいました。

そんなわけで、岡山駅に着いたのは日付けが変わる頃。道が真っ暗だったら怖いな~と思いながら改札を出ると、大通りがどどーんと広がっていてびっくりしました。岡山駅、めちゃくちゃ栄えてますね!岡山駅に降りたのは今回が初めてだったので驚いてしまいました。
夜中だけど明かりがあることの、なんとありがたいことか。予約していたホテルが通りに面していたおかげもあり、こわい思いをせずに到着することができました。あとは明日に備えて寝るだけです。

二日目

後楽園

最初に訪れたのは日本三名園のひとつ、後楽園。
開園時間が早いので、朝早くから行動したい人はまず後楽園から巡るのがおすすめです。旭川に跨がる月見橋を渡って、そこから川沿いをぐるりと歩きながら正門へ向かいます。

橋の上から見た旭川と岡山城
月見橋を渡ったところにある石碑
川沿いの道
柵に誰かが置いた花が。


正門前でチケットを購入。岡山県立博物館・林原美術館との共通券もあるので活用するのがいいかと思います!後楽園のみのチケットを購入しても、各施設でチケットを提示すると割引してもらえます。

正門をくぐり少し進むと、ぱっと視界が開けました。

綺麗に整えられた芝が遠くまで広がっていて、なんて爽やかな景色……! 心がふっと軽くなるような開放感を味わうことができます。この日は薄く雲がかかっていましたが、快晴だったらもっと素晴らしい景色なんでしょうね。まぁでも、雨女の私からしたらこれくらいの天気でもかなり嬉しいです!

中央あたりには小さな丘があり、そのふもとには花々が咲いていて華やかです。自然と身体が引かれるように、丘を目指して歩いて行きます。

丘(唯心山)
丘から見た景色①
丘から見た景色②

その丘には唯心山という名前がついていて、最初からあったわけではなく完成後に造築されたようです。看板に「唯心山の完成により平面的だった庭園が立体的になった」というように説明されていました。
たしかに、丘があるとないでは庭園の印象がだいぶ変わる気がしますね。

そして私のお気に入りスポット、花交(かこう)の滝。

花交の滝


水がじゃぶじゃぶ音を立てているのは、庭園内ではおそらくここだけな気がします。ここは草木が茂っていて自然そのままの姿に近いです。静かな庭園のなかで勢いよく流れる滝音にとても癒やされました。いくらでも聞いてられる……。

続いて、こちらは園内にある大立石。岩を割って、それを再度組み立てて作ったらしいです。割るのも、組み立てるのもかなり大変そう。

大立石


帰ってから調べたのですが、この岩は陰陽、つまり男女を表しているそうです。中央でぱっくり分かれているように見えるので、どちらかが男性でどちらかが女性ということでしょうか。
男女を表すことで、子(跡継ぎ)が生まれることを祈願しているのだそう。

園内からは岡山城も見えます。大きくて黒い姿に胸が高鳴り、早く近くに行きたい気持ちになりますが……、その前に!まずは刀に会いに行きます!

岡山県立博物館

庭園で朝の空気を堪能したら、いよいよ日本刀巡りスタートです!岡山県立博物館は後楽園の正門前にあるので、移動が楽で助かります。

旅のお供・堀川国広と

展示室は一階と二階に分かれていて、一階は岡山県で発掘された遺跡などが展示されていました。その中には古墳時代の太刀も。古墳時代のものでこんなに形が残っているのかと驚きました。サイズも大きくてとても迫力があります。

二階に上がると、刀剣がずらりと並んでいました。現在開かれているテーマ展『名刀 福岡一文字の光彩』ではもちろん、隣室の平常展でも刀の展示がありました!

ではまず、平常展(第3展示室)の刀剣から印象深かったものを書いていきたいと思います。
展示物の撮影は禁止されているので文章が続きますが、よろしければお付き合いください(^^)

脇指 無銘 伝久国

後鳥羽上皇が集めた御番鍛冶のひとり、久国。彼は刀剣乱舞でもおなじみ粟田口派の刀工なのですね。(知らなかった)
キャプションには「上皇に鍛刀の手ほどきをする師範役」をしたと書かれていました。上皇様の師範役ってかなりすごいことですよね。

こちらの作は梨地肌と呼ばれる地鉄です。つやつやできめ細やかでとっても綺麗。これが鉄なのか……と思ってしまうほど美しいです。日本刀は鉄の芸術とも言われますが、まさしく芸術の域。
↓こちらの写真が分かりやすかったので参考に貼らせて頂きます。


久国は在銘の刀が少ないようで、こちらも無銘。本阿弥家によって茎(なかご : 持ち手の部分)に金象嵌銘が入れられています。

ちなみに、金象嵌銘は「磨上によって銘が無くなってしまった刀」にいれるもので、朱銘は「生茎で無銘」にいれるという違いがあります。つまり鑑定銘の色を見れば茎が生(うぶ:打たれた当初のままの部分)かどうかが分かるということですね!おもしろい。

話を戻しまして、こちらの脇指は刀身が黒っぽく見えるので金象嵌がすごく映えてます。つまりそう、かっこいいのです。(これが言いたかっただけ)

脇指 銘 近江大掾藤原忠廣

こちらの脇指は「小糠(こぬか)肌」と呼ばれる地鉄。これがまた本当に綺麗で……。名前の通り糠を撒いたような肌という意味なんですけれど、私は砂浜みたいだなぁと思いました。

ここで「梨地肌と似ているけど、どう違うんだろう?」と思ったので前述の伝久国と見比べてみたのですが、これがなかなか難しい。
私の個人的な印象でいうと、梨地肌のほうが若干細かいのかな。あとこれは研ぎによるところかもしれないけれど、みずみずしくて艶があるように見えました。
小糠肌も細かいけれど、粒のような模様が割とはっきり見えた気が……しなくも…ない……って感じです笑

刀を見比べるのってすごく面白いですよね。
一振りだけ見ていたら分からなくても、他の刀と比べてみたら分かることって多いと思います。例えば、「身幅が広い」と説明されていても自分にはそう見えない時もあります。でも、隣の刀と比べると「たしかに!」って思ったり。

私が刀を見始めた頃は、違いが全然分からなくて全部同じように見えてたんです。でも、だんだん目が慣れてくると、少しずつ ”見える” ようになって。そして、同じ刀は一つとして無いということに気づきました。人の手で作られているからそれは至極当たり前のことではあるんですけど、私にとってはそれがとっても大きな発見でした。だって全部同じに見えていた人間ですから(笑) 
そして、そのことに気づいたときに「刀ってこんなに個性あふれるものなんだ!」と雷に打たれたような衝撃を受けました。それが私が刀剣にはまった理由でもあります。


さて、ここからはテーマ展『名刀 福岡一文字の光彩』です!

太刀 銘 則宗

トップバッターは福岡一文字の祖とされる則宗。
茎がかなり朽ちているように見えて、長い年月を感じさせます。鋒が小さく刃文もそんなに派手ではないけれど、肌の模様がよく見えるせいか、上品さとたくましさのどちらも併せ持ったような印象を受けました。

一文字と聞くとどうしても華やかな丁子の刃文を思い浮かべてしまうのですが、こちらの刀は違いますね。正直「えっ、これ一文字なの?」と思ってしまいました。
則宗の太刀は以前日枝神社で見たことがあるのですが、そちらも落ち着いた刃文に優美な姿だったと記憶しています。それが則宗の作風なのでしょうか。

(少し調べて見たら、福岡一文字のなかでも、鎌倉時代初期と中期に分かれているようですね。つまり初期と中期で作風が異なるということかな。次に一文字の刀を見るときは時代に着目して見てみます!)

太刀 銘 一

こちらはいかにも一文字!という印象を受けました。丁子の先がとがっていて、炎が立ちのぼっているみたいに見えます。戦場でこの刀を持っていたら、すごく強い武人に見えそう。

そして目釘穴が5つもあります!きっといろんな人物の手に渡ったのでしょうね。ただ茎があまり錆びていないように見えたのが少し不思議でした。
話が派生しますが、茎の錆びの色が刀によって違うのは原材料の違いなのでしょうか。茎が赤っぽいのもあれば、黒いのもあるのでちょっと気になっています。

太刀 銘 吉房

こちらは国宝の太刀。
吉房は私が日本刀巡りをはじめてすぐに覚えた刀工なので、出会うたびに「あっ吉房いる!」ってなんだか嬉しくなります。吉房は割といろんな所で見かける気がする。

刃文は大丁子乱に重花丁子、大房丁子とインパクト大の存在感ですね。丁子の先がとがっていないので、派手さはあるけど物々しい感じはしませんでした。丁子の刃文であることは『太刀 銘 一』と同じなのに、こんなに雰囲気が違うんだなぁ。

太刀 銘 助吉

そしてこちらが今回の私の一番のお気に入り、助吉!
沸と呼ばれる細かい粒子がよく見えて、すーっごく綺麗でした。刃文が波のような形をしている部分があり、その周りに粒がきらきらと光って見えます。それはまさに水しぶきを上げる波のよう……!動的な刃文に目が釘付けになりました。
刃文に光りが当たるように自分の頭の位置を調節して左右に動かすと、沸の粒が浮かびあがって見えるので、それが楽しくて夢中になって頭を振ってました。(平日の空いてる時間だからこそ出来ることですね…笑)

ちなみに助吉は吉岡一文字派の祖といわれる人物のようです。吉岡一文字は福岡一文字に次いで、鎌倉時代末期から栄えたのだとか。一文字の中にもいろいろ派閥(?)があるのですね、難しい……。


前編まとめ

ここまで、出発~2日目(岡山県立博物館まで)をまとめてみました。
岡山県立博物館に展示されていた刀はどれも本当に素敵で、観るのが楽しくて堪らなかったです。今回山鳥毛の展示期間には間に合いませんでしたが、行ってよかったと心から思います。絶対また行きたいです…!


【後編につづく】



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