看取りの準備
三日月を眺めながら自転車をこいだ。
母の命の終わりが近づいていることを主治医から伝えられ、自分の目でもそれを感じた6月の初め。
それから1週間ほどで満月の日があって、その満月が三日月になるほどの時間、母の身体は痛みや苦しみと闘ってきたのだと思った。
本当にろうそくがどんどん短くなるかのように時間を追う毎に母の身体は目に見えて消耗していった。
今、母は何を思うのか。
今日はそれすらも聞き出せないほどに衰弱していた。
これまでは血液検査の数値が日に日に悪くなっているのはあったけど、その数値とは裏腹に見た感じではそこまで悪化していることを感じさせなかった。
ギリギリまで自力でトイレにも歩いて行っていた。
しかし昨日の夜、吐血したそうだ。
出血は止まってひとまず落ち着いてはいる。
痛み止めの薬の作用で少し朦朧としているものの意識もある。
血圧もこれまでと同じくらいで安定はしているとのこと。
ただ、血液中の酸素飽和度は90%前後なので苦しそうではある。
幸い、これまでもあった腰の痛みはまだ緩和できているようだ。
痛くはないかを聞いたら首を動かして辛うじて伝えてはくれた。
あとどれくらいの時間が母に残されているのかはわからない。
残された諸々のことは全部こちらで引き受ける。
いつでもすぐに行ける準備はしておく。
振り返ると親不孝ばかりだったと思う。
でも最期はしっかり見送るつもりだ。
今できる最大の親孝行として。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?