リバーサイドビルの見どころ
co-ba NAKANOSHIMAは、高度成長期に建てられた、贅沢なつくりのビルに入っている。贅沢と言っても、きらびやかなインテリアなど、パッと見てわかる贅沢さではない。おそらく時間をかけて丁寧に考えられ、一つの大きなコンセプトを実現するために過剰スペックな構造躯体が実現した、劇渋ビルなのだ。
リバーサイドビルディング
[建設年]1965年
[構造・規模]RC造5階、地下1階
[設計]岸田建築研究所(岸田日出刀)
国登録有形文化財
普通のビルじゃん!という声が聞こえきそうな、奇抜さのないビル。
だが、川と道路に挟まれてた細長い形状の土地にて、長手方向に水平連続窓をとるために、部屋内に大きな柱2本が出ており、そこからキャンチさせた構造は、まさに高速道路の高架のようである。
高速道路の高架のイメージ。柱がちょっと内側にあるので窓が分断されない。
大きな柱が大胆にも内部化されたことによって、細長い空間はさらに細分化されているのが平面図からもお分かりかと思うが、そんな内部空間のことよりも、窓からの途切れないパノラマ眺望を勝ち取る。これは設計者だけではない、発注者の器のデカさも感じるところである(ちなみに大きな声では言えないが、この発注者の息子にあたる現ビルオーナーは、とても頑固なタイプの方。そういう方々の尽力によって、取り壊されずに踏ん張っている建物があるのだと思うと、歳を重ねた方の揺るぎない芯に尊敬の念を感じる)
また、屋上に防水をせず、構造躯体の厚みを通常の倍、40cmもの厚さにしているらしい。川辺なので、土圧に対応する、という役割もあるようだが、それにしても、ただでさえ高額になりがちな鉄筋コンクリート造の建物において、通常の倍の構造躯体でGOできるだなんて、本当に豊かな時代だったのだろう。
細長い空間、両側が窓という空間で、川の流れを見ていると、まるで船に乗っているような気分。このストイックな水平連続窓のおかげで、㎡数ではあらわせない空間の広がりと外とのつながりを感じることができる。
奇抜さはなくとも、この時代の典型を牽引する存在。リバーサイドビルはまさに、そんな価値を持つ建物なのである。
なお、毎年大阪で行われている10月最終週末の「生きた建築ミュージアムフェスティバル」というイベントでは、一般公開建物として参加してましたので、そちら関連の書籍にも掲載されています(コロナ期間中につき今年も開催の可否は未定)
(ホリノ)