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マグマと手をつないで

マグマは、いつだって僕らの真下にある。

普段、僕たちは、生活においてそれを意識することはない。空を見上げることはあるけれど、地面を掘り始める人なんていないし、ましてやマグマを目にする人なんていないだろう。

それでもマグマは、そこにあり続ける。知らず知らずのうちに、僕らにパワーを与えている。

・・・

どんよりとした雲が、空一面を覆っている。

「ねぇ、この道で本当にあってる?」

僕は運転をしながら、隣に座る妻に尋ねる。

「あってるはず」

「ほんとかよ」

さっきからずっと、同じような道を走っている。けっこうな速度を出しているけれど、僕らのほかに車は一台もない。不安だ。

時刻は夕方になる前。ざっと見た感じ、あまり外灯もない気がする。もし日が暮れたら、けっこう怖い。

・・・

そんな感じで不安だったが、なんとか日が暮れる前にたどり着いた。秋田県にある「玉川温泉」という場所だった。

市街地から車で何時間も走らせたところにあり、文字通り「僻地」と言ってよいだろう。

何が楽しくてこんな場所に来るのか。ホテルに入って目につくのは、ヨレヨレのおじいさんと、おばあさんたち。

実はここ、若いカップルのデートスポットというよりは、むしろ、老人たちの湯治スポットとして注目を集めている。

何やら、がんが治るとかなんだとか……。真偽はいかほど、という感じがするが、これだけの湯治客がいるところを鑑みると、一定の効果はあるといえそうだ。

・・・

僕たちは、東北をドライブで旅行しているところだった。

この妙ちくりんな温泉地にやってきたのも、その目的は湯治ではなく、観光である。

しかしここ、本当にすごい。単一の湧出口から、毎分9000リットル(!)の温泉が湧き出しており、湧出量としては日本一と言われている。

源泉が湧き出ている場所は、圧巻だ。これまで、草津がすごいなぁと思っていたが、そんなレベルじゃなかった。

スケールが違う。

・・・

さて、チェックインを済ませて、さっそく風呂場に向かった。

ひのきで一面を囲まれた大浴場は、趣がある。この「新玉川温泉」では、打たせ湯や蒸し風呂、そして飲泉など、様々な種類の温泉を楽しめるようだ。

そんな中で、僕は、源泉100%と書かれた温泉に入った。

じんわりと暖かさが広がる。しかし、なんだろう? 痛い。痛いぞ?

何が痛いって、酸度が強すぎる。しゅわしゅわしている。

温泉に入って、「痛い」という感想を持ったのはこれが初めてだ……。

でも、痛みに慣れてくると、とても気持ちよく肌に馴染んでくる。ドライブで疲れた身体が、ゆっくりと癒やされていくのがわかる。

・・・

こういう温泉に入ると、僕は「地球」を感じる。僕らの下にはマグマが流れ、人間やその他の生物にパワーを与えてくれている。まるで、地球の声が聞こえてくるようだ。

湯治、だったっけ。

たしかに治っちゃうんだろうなぁ。いろんなものが。地球からパワーをもらって、治せないものの方が少ないんじゃないだろうか。

・・・

温泉に入ることは、つまり、地球と会話をすることだ。

明るい人と話すことで元気をもらえるように、地球と会話をすることで、生命の神秘に少し近づける気がする。

秋田の僻地で、僕はそんなことを考えた。

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コボ・コボボ
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