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美しきシャーマン、銀座に現る (1)

「うふふ、ちょっとエネルギーがもれていますね」



銀座の街中で、真っ白な光を発し、輪郭がくっきりと浮きたった女性が、とある老舗のカフェに入っていった。

そこはわたしが銀座で最も愛してる空間のひとつで、誰かとゆっくり話をしたいときは、だいたいココにくることにしている。

お店に入った途端、催眠術にかかったかのように、自分の意識が今ココに収束し、普段は見えない何かが見えてくるような。さらに、回転ドアをくぐってすぐ右手にある階段をあがった瞬間に、そこは魔法の世界に通じていて、よくみたら魔女や呪術師が珈琲色の何かを飲んでいるのを目撃してしまうような。そんな感覚におちいる、怪しく不思議な空間なのである。

その白く発光していた女性を追いかけて、吸い込まれるように、その不思議なカフェに入った。

彼女とあうのは5年ぶりだった。知り合ったキッカケは、大学生のときに、ある学生ファッションショーに一緒にでたこと。なんちゃってモデルな私にくらべて、彼女の表現者としての才能や実力はまさにプロ級で、皆が羨望の眼差しをむけていた。

彼女の作品は、5年たった今でも大好きで、要するにわたしはモデルとしての彼女のファンである。写真ごとに七変化するその表現は、彼女の内面の豊かさや謎の深さを、そのまま視覚化したようだった。話すと笑顔いっぱいで優しい言葉をかけてくれるのだけど、どこか何かを知ってしまったあとの哀しみや覚悟みたいなものが、瞳から感じ取れる不思議な存在でもあった。

そんな彼女と再会した瞬間、私たちはハグをした。実はその朝シャワーを浴びそこねていたので、内心ヒヤヒヤしながら、ちょっと隙間を作ってハグしようとする。彼女は、わたしが作った隙間はそのままに、じーっと長い時間ハグをしてくれた。なんとなく汗腺が閉じる気がして、わたしは息をひそめていた。

飲み物をたのんで、簡単に互いの近況報告をする。すると、そうすることが当然であるかのように極めて自然に、「ちょっと見させてくださいね」と彼女はいって、ゆっくり瞼を閉じた。

余談だけど、わたしは個人で活動(仕事)している方に、友人だからといってそのサービスやモノに対して「(無料で)ちょうだいー!」というのが、あまり好きでない。例えば、マッサージ師、カウンセラー、作家、ダンサーなど、なんでもいいのだけど、その人がプロフェッショナルであればあるほど、「(無料で)やってー!」とは言えない小心者なのである。理由は、友人が最も多くの時間や生活をかけてやっていることを尊重したいから。

そんな堅物(?)なわたしをよそに、まさに彼女のプロフェッションである神事が始まり、わたしはちょっと動揺した。ただ、最近の私の人生のテーマはサレンダー(ゆだねる!)なので、申し訳なく思う代わりに感謝しながら、彼女の心遣いをいただくことにした。

補足すると、彼女は厳しい修行の末、神人(かみんちゅ)という仕事をしており、御祈願、御祓い、神託、地鎮祭などを行いながら、日々全国の神社を巡礼している。彼女が神様とつながって、神様の言葉をおろす、日本版シャーマンといったところだ。ところで、日本人というのは(いや、日本人に限らないかもしれないけれど)、集団では宗教や目に見えないものを避けがちだけど、いざ一人になると"神様ごと"や目に見えない神秘を切実に求めている民族だなあと思う。元々人間同士では心のうちを言葉でさらけだし辛い民族だからこそ、”圧倒的な神の力”みたいなものの前ではじめて、一人でひっそりと鎧を脱げるのかもしれない。アメリカの大統領や経営者がメンタルコーチをつける話をよくきくが、日本の経営者の場合はお抱えの占い師がいるのをきくのも、なんとなくうなづける。

さて、30秒くらいたっただろうか。
彼女は依然リラックスして目を閉じている。きっと意識の深いところへ向かっているのだろう。彼女の言葉を借りると、そこで彼女を守る神様の言葉を聴いている。一見無防備な状態なんだけど、その佇まいから威厳にみちた神々しさみたいなものが溢れ出ていて、彼女がパワーアップしたようにも感じる。

彼女が神様とコンタクトしている間、手持ち無沙汰だったので、わたしも瞑想してみることにした。ゆっくり自分の呼吸に意識を集中させながら、わきでてくる思考を眺める。そこででてきたテーマはこんなものだった。


(頭の中の声)
・彼女が神の言葉として授かっているメッセージを、彼女の思い込みではなくて、神の言葉であると証明するには、なにができるだろうか。
・そもそも神ってなんなんだ、少なくとも人格をもった神ってあるのかな。
・宗教でいう神は、一つのメタファーで、たとえばユング心理学でいう集合的無意識に近いものなのではないだろうか。
・目に見えないものである時点で、直接的にそれを証明することはできない(その効果を脳波やMRIで可視的に測ることはできても)。
・目に見えないものについて、何を信じるかは、"正しさ"でもって探求するとゴールが見えない。自分が心地よく生きるのに合理的かどうかっていう視線の方が、生に実践的でいいのではないかな。
・世の中には天才(ユニークで研ぎ澄まされた感性をもった人)にだけ感知されている情報がたくさんある。
・そういった点で、仮に神様の有無に自信がもてなくても、彼女を通じて彼女の神様から言葉をいただくこと(彼女の言葉と捉えてもいい)には、代えがたい価値があるのだ。
・そして心理学的にみると、彼女に何をどう言われたか以上に、彼女から贈られた言葉の中で、特に何に意識がとまって、どう感じたかが、とても大切なのだ。
・うーん、神々しくて美しいな。

そうこう思考している間に、さっと彼女の目が開き、こぼれるように、(私にとって)衝撃の言葉があふれでた。

(続く)

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