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幻の花束
「今まで人生でもらったプレゼントの中で、最高のものはなに?」
と母に聞いてみた。
ちょうど数日前に本をプレゼントしてもらって嬉しかったので、隣にいる母にも聞いてみた次第である。
「バラの花束...かな」
「定番だね!どんなバラの花束なの?」
「それがわからないの」
「??」
「幻のバラの花束だから」
「!」
「昔お父さんがね、ママのためにバラの花束をかってくれたらしいの。それはそれは大きくて立派で最高の花束...だったらしいのね。でも、もらってないのよ。だって、お父さん、それを電車の網棚においてきたって言うんだから!」
(・・・いかにも父らしいミスだな、私もやりそう)
「でもね、お父さんは、花束を渡せなくても、買ったことに既に満足してるの。で、ずっと言ってくるのよ。君のために本当に素晴らしいバラの花束をかった〜って。その度に、いやいや私もらってないし・・って文句をいうんだけどね。本当におかしいでしょう?どんな素晴らしい花束だったかいまだに気になるの!」
そう言ってなつかしそうに、母は笑っていた。
私だったら、「そもそも買ってないんじゃ・・」って相手を勘ぐりそうだけど、確かに私の父のことだから、嘘はついていなさそう。でも、代わりの花束、買ってあげてよって心から思う。
結局わたせてないプレゼントが、(どんな尺度かはさておき)最高のものになってるなんて、滑稽な話だ。多分、それをネタに一番笑ったり怒ったりすねたりしたプレゼントの一つが、その渡せなかった花束だからかもしれない。
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