うこん4

ウコンだよ

父が母に贈ったもので、一番私の印象に残っているものは、ウコンの粉である。

東京で単身赴任中の父が、金曜日の夜に新幹線で帰宅するなり、金塊を掘り当てたくらいのドヤ顔で、「日々の感謝と愛をこめて・・・じゃじゃーん!!」と差し出したのが、なんとウコンの粉だったのである。

「いつまでも健康で美しく!」

そういって、父は、オレンジ色の粉がつまった、怪しい瓶をテーブルのど真ん中においた。

「ウン◯じゃないよ〜ウコンだよ〜〜」

といってきゃっきゃと盛り上げる父と私。
それをみて呆然としている母と兄。

「・・・こ、これはないやろ!!」

と言って、兄が口火をきった。母はあきれて笑っている。
わたしはまだウン◯じゃなくてウコンであることにウケている。

うちの兄はスイッチが入ると大変しつこいので、父が本当に反省するまで、攻撃をやめない。いい歳して、誕生日に健康食品(しかもウコンの粉!)を贈るなんてありえないと、ひたすら父を責め立てている。

さすがに事態を飲み込んできた父は、チラッと母を見て、「ママ、嬉しいよね?」と懇願するようにきいてみる。
そして、「ママはウコンとかもらって喜んでくれるような女性なんだ!」と急に明るくのたまう。その見当違いな自信はどこからわきでるんだ。

私は昔から、器用な兄に比べて、あまり空気がよめないので、シリアスな空気を破るべく叫んだ。

「あゆこは嬉しい〜!ウコンて響きが〜!」

「だよな〜?あゆこはセンスがいいぞ!さすが半分はお父さんでできてるだけある。」

再び嬉しそうにする父。母は温厚な性格なので、もういいやーって顔をしているが、そこは兄が譲らない。

「おかん、誕生日のプレゼントが、このよくわからんウコンの粉じゃなくって、ティファニーのダイヤのネックレスやったら、どんな気持ちやった?」

ティファニーのダイヤってワードで、父と母の表情がさっと変わった。

「あはは、それは嬉しいね〜でもウコンも嬉しいよ。ママの健康を考えてくれたんだよね。」

「あかん!そんなん言うと、おとんは勘違いする。ティファニーとウコンやったらどっちなん?はっきりしよう。」

「そうだねえ、昔お父さんにもらったティファニーのネックレス、とても嬉しかったなあ」

ほれ見ろといった顔で、兄が父の顔を見る。

「女性にわたすプレゼント、しかも誕生日の贈り物に、ウコンはさすがにない。花束とかティファニーとかあるやろ。」

父はさらにしゅんとした。

結局、父がプレゼントを買うときは、事前に子供達(というより兄)に相談するというルールが新たに設けられて、金曜日の夜は幕を閉じた。

父が心の底からウコンこそ最高のプレゼントと思っていたのか、あるいはちょっとズレたプレゼントとわかりながらも、それを母が受け入れてくれるのが幸せだったのか、いまだによくわからない。

でも母にとって今までで最高のプレゼントは、父が電車の網棚に置き忘れて渡せなかった幻の花束なのだから、これもまあ良しなのかもしれない。

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