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◆凸凹ギフテッドの生態◆ 創造性-文章 「夜空の白紙」


ーーずいぶん大きい星だな。
僕はふと、そう思った。
昨日まであんな星あったっけ。
さらに、形もなんだか歪で、
まるで星じゃないみたいだ。



だけど僕は受験生で、忙しかったのもあって
そんなことは頭からすぐに消えた。
しかし次の日、またあの星のようなものが
空に堂々と浮かんでいたんだ。
しかも、昨日よりだいぶ大きくなっていた。
むむむむ。
なんだこれ。
調べてみたけど、どこにも何も出てこなかった。
ニュースにもなっていない。
心に何かが引っかかったまま、
明日が来てしまった。



次の日の夜になった。
だが・・・・どうしたことだろう。
また、その白い物体は膨らんでいて、
本来漆黒のはずの夜の闇を、
真っ白な絵の具でどんどん飲み込んでいっている。



こうなったらもう無視はできない。
というか、みんなはこれが見えないのだろうか・・・

「・・・さん、・・田さん、蒲田さん。」
「・・・あ、すみません。ちょっと考え事をしておりまして。」
「大丈夫かい?勉強ばっかりしてないで、ちょっとは休んだらどう。
ちゃんとご飯食べてるかい。よかったら、肉じゃが作ったから食べてね。」

ーー高木のばあちゃんだ。
親切で、いつも僕を気にかけてくれるけど、
ちょっとおせっかいなところもあるんだよな。
高婆に聞いてみようかな。

「・・あの、あれって、見えますか?」
「ん?なんだい、あれって。」
「ほら、あそこに見える白い・・」
「何を言っているんだい、大丈夫かい?
 やっぱり、勉強のしすぎで頭がまいっているんだよ。
 帰ったら休むことだね。」

そう言うと、高婆は僕に肉じゃがを押し付けて
姿を消してしまった。

ああ・・やっぱり僕以外の人にはこれが見えないんだ・・・

これは大変なことになってきた。
これ以上こいつが広がっていくようであれば、
信じてくれなくとも、なんとかして皆に伝えなければ・・・・・


次の日。



僕は絶望的になった。
やはり、あの穴が前より確実に広がっている。
どうすればいいんだろう・・皆を避難させるか。
いや、避難させるってどこへ・・・・・・
・・・・・そういえば、さっきからいやに明るいな。
・・はっ!まさか!

おそるおそる顔を上げると
目の前の白い物体がさっきよりもさらに大きくなっていた。

これじゃあ、「白いものが黒い空に浮かんでいる」と言うより
「黒いものが白い空に浮かんでいる」状態だ。

そんなことを考えていると、一気にあたりが明るくなった。
まぶしくて閉じそうな目をなんとか開きみてみると
白い物体が絵の具のように完全に空を染め上げていた。

せめて走馬灯を見る余裕くらい残してくれよな・・・

そう思いながら僕は意識を失った。


僕が再び目覚めたところは、
暗くてじめじめしたところだった。

・・・・ん・・
僕は・・何をしていたんだっけ・・・
なんでこんなところに・・
そもそも、僕は誰だっけ・・・

フワフワとしている僕の前に
猿と猫とを組み合わせたような生物が出てきた。

「やあ、どうもこんにちは。突然のことに驚かれたことと思います。」
「・・あぁ・・あなたは誰・・ですか。」
「私は「粒子センター」の山本と申します。どうぞお見知り置きを。」

・・・粒子センター?

「僕は・・どうなるのでしょうか・・」
「はい。あなたはこれからイコジクス神の餌となっていただきます。
 あ、決して痛くも痒くもないのでご心配なさらずに。」

・・それは、痛いと思う前に死ぬからでは・・・・・

「イコジクス神とは・・誰のことですか。」
「この宇宙のことです。そして餌とは、まあ、
 この宇宙の粒子になると言うことですかね。
 地球人の肉は美味しいとイコジクス神はおっしゃりますので
年に一度この方法で地球人だれかひとりを頂いてくるのです。
 そうでもしないと、この宇宙は明日までもつかどうか・・」



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2023年4月9日より、1日1話ずつ執筆し、ブログに投稿。
主にショートショートや掌篇に自作のイラストやオリジナル写真を添えて。
小学生で自費出版。中学1年生になった今も連日投稿記録更新中。
こあの掌篇集「こあのみずたまり」/note(中1)編 2024年10月現在で500作以上!
*今作は、小学生時代に執筆した、こあの掌篇集「こあのみずたまり」/Fc2編 2023年5月投稿文より抜粋。

写真・文・絵/ coaqua


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