
ゆでズガイ
どこに置こうか迷っていたゆで卵を
くり抜かれた眼にはめると、あら、ぴったり!
それから、うちの煤まみれの頭蓋骨の、かつて目玉があった場所は食卓に欠かせないエッグスタンドとなっている。
それからは、ゆで卵の黄身が、どうにも血の気の失せた色をしているのが少し気になるところだが。
二つ以上のゆで卵を作ってしまった時は、その、かつて口があった場所に卵を並べたりするのだが、かなりの確率で気づいた時には消え失せているのだ。
そうだよね。
頭蓋骨だって、お腹空くよね。
面倒見の良い娘には、それから頭蓋骨のご飯担当になってもらった。
そのせいか、頭蓋骨の目の穴に置いておいたゆで卵が煤色に変色することも減った気がする。
だから。
頭蓋骨が消えた日、娘と二人で泣いた。
・・寿命だったんだよ、仕方ない。
きっと、死ぬところを見せたくなかったんだね。
しゃくり上げながら、そう言葉を交わした。
どうにか、頭蓋骨がいない暮らしにも慣れなければいけない。
でも・・
これから一体、ゆで卵をどこに置いたらいいというのだろう。