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アリの恨み

「しまった」

僕は自分の家の前で佇んでいた。
かなりこれはまずい状況だ。

「か、鍵がない…

かっこを閉じるのを忘れる程度に僕は焦っていた。

鍵をなくした僕が、家の前でウロウロしていると、

「どうされましたか」

と図太いようなか細いような声が聞こえた。

「ええ、鍵をね…って、あなたは」

「こちらですよ」

よく耳を澄ますと、カサカサという足音が聞こえてくる。

それは、ドアによじ登っているアリの行列から聞こえてくるのだった。

「ああ、あなたたちでしたか」

僕が納得していると、アリたちは、次々に鍵穴へ入っていった。

「これで、私たちが内側から鍵を開けますので、どうか、これから、少しだけ食べ物を分けていただくことはできませんか。特に冬」

「もちろんですとも!」

僕は、家に入れるならなんだってしてやろうという勢いだったので、快く引き受けた。

すごい数のアリが、ぞろぞろと鍵穴へ入っていく。

ここまでたくさんのアリを見たのは初めてだったもので、僕は少しぞわっとしつつ、事の成り行きを見守ることにした。


その後、ドアは無事に開いたが、その場でアリ恐怖症を発症してしまった僕は、アリとの約束を果たすことはできなかった。

なのでそのうち、アリが仕返しに来るのではないかとびくびくしながら暮らしている。





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