そらにこぼね
空に穴が空いているのはもはや常識で、だから僕は今日、別に驚きもしなかった。
家の屋根の上に、ぽっかりと、いや、ぷっこりと、穴が浮かんでいる。
うん、これは、ぷっこりだったのだ。
別に穴が開くのは珍しくもないのだけれど、穴はどうしても不吉に思われる。
つまり、今日、家にパキバンさんらがいらっしゃるにあたって、それはどうにも失礼極まりないことなのである。
灰色の穴は、時々、鹿の耳鳴りのような音を立てて収縮したかと思ったら、また伸び上がっていく。
そして僕は見てしまった。
その穴に、朝、僕が残した魚の頭が、小骨をおっことしながら入っていくのを。
穴は、その白目が白濁した魚の頭が、完全に入ったのを確認すると、迷うことなくぱっと消えた。
ああ、これでパキバンさんたちに顔向けができる。
やはり、朝食に食べた魚の頭が後々、恩返しをしてくれるという迷信は、迷信ではなかったのだ。