コアラのすっとんとん拍子
コアラのすっとんとん拍子に合わせて、歌いましょう。
先生は、指揮棒を振った。
教室中の歌声がひとつになる。
これが一ミリでもずれたりしたら、先生に齧られる羽目になることは、この前の授業で把握済みだ。
先生といっても、今日はコアラ先生だ。
無駄に丸みを帯びたもふもふの顔が、なぜか僕には無機質に見えて仕方がない。
しかも、コアラのくせに無駄に美声なのが腹立たしい。
そんなことを考えていたら、僕のテンポだけがずれていた。
コアラ先生は、歌うのをやめて、いきなり指揮棒を真っ二つに割り折った。
ばきっ、という音に教室中が静まり返る。
僕の方に、無機質な丸い顔が近づいてくる。
あーあ、やっちゃった。
やはり、コアラのすっとんとん拍子に合わせて歌うのは難しい。
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