白猫の渦
目を開けたら、白猫に囲まれていた。
にゃあとも言わず、白猫たちはぼくの鼻の頭をじっと見ている。
ぼくの鼻の頭に何かついてる?
ぼくは猫語が喋れないので、仕方なく日本語で問いかける。
やっぱり白猫たちはにゃあと言わず、ただただじっとぼくの鼻の頭を見ている。
あむふ。
突然、一匹の白猫が、そう呟いた。
あむふ。あむふあむふ。
途端に、その鳴き声は波紋のように広がっていき、ぼくを取り囲む白猫の全てが鳴き出した。
もしかすると、このひとたちは猫ではないのかもしれない。
あむふ。
今度はぼくの声だ。
あむふあむふ。
鳴こうと思っていないんだけど、勝手に口が動く。
まるで、周りの白猫たちの輪に加わるように。
その時のぼくがちゃんと人間だったかなんて、今ではどうでもいい話。