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びせいぶろ
クマムシ風呂に入りたいよお、と、今年生まれた娘は言った。
普段は、あ、とかう、とかしか言わないのに、たまげたものだ。
「よし、クマムシ風呂な、わかったぞ」
だが、それはなかなか難しいものだった。
世界中のクマムシを採取してきて、風呂桶に閉じ込めても、なかなかいっぱいにはならない。
一年半かけてやっと、風呂桶の底1センチほどだ。
何か茶色い物体の集合体がウヨウヨと蠢いているのを見て思わずため息をついた頃、娘が、生まれてから二言目の言葉を発した。
「ミジンコ風呂に入りたいよお」
思わず持っていたクマムシの瓶を床に落としてしまった。
仕方ない。
まだ一歳の可愛い娘の頼みだ。
こうして、僕のミジンコ集めライフがスタートしたのだった。