HC代行として戦った1ヶ月②〜チームスタッフ〜
*いつも素敵なお写真ありがとうございます!今回も大事に使わさせていただきました。
こんにちは!吉永です。
前回はファーストミーティングまでについて書いていきました。
今回は練習の環境作りについて書いていきます。
僕らの仕事は良いチームを作ること!
そのための環境作りはとても大事な仕事の1つです。
僕らコーチの言動がどれだけチームや選手に影響を与えているのかを知っていただければと思います。
チームスタッフの現状
僕がHC代行を引き受けるまでのチームスタッフはというと、正直に言えば僕はあまり良いとは感じられていなかった。
練習中には選手を鼓舞するわけでもなく、選手を指摘するわけでもない。全くやっていないわけではないが、僕には全く物足りなかった。
それどころか選手に混じって話をしている。
HCが話しているときでさえ選手と話しているチームスタッフもいた。
これは非常にマズい状況だ。
なぜなら、僕らコーチは選手に対してハードワークを求める。それなのに選手が練習に集中できない環境を作り出してしまっているからだ。
いろんな種類の選手がいる。
①コーチがなにも言わなくても常に集中できる選手
②リラックスと集中を自分でコントロールできる選手
③良くも悪くも周りの雰囲気に流される選手
④誰かに誘導してもらわなければ集中できない選手
⑤自分の感情にのみコントロールされる選手
本当に様々な選手がいる。
僕らコーチはこのような選手たちが集中できる環境を作らなければならない。
僕らが注意しなければならないのは③,④,⑤の選手だ。
これらの選手たちは、すぐに集中力が切れてしまい、近くにいる人と話始めてしまう。簡単に言えば私語が始まる。
(*誤解を生じないように。。。ここでいう私語は、集中力が切れた状態で話していること。集中力が高まった状態で話しているのは私語ではなく、チームをより良くしようとしているコミュニケーションです。)
この私語がとても厄介なのだ。
私語と言ってもバスケットの話なのだが(バスケットと関係のない話はしてないと信じている)、基本的にはネガティブな発言が多い。最悪の場合、チームを攻撃する発言まで出てしまう。
例えば選手発信であれば
こんなの上手くいかないよ!
コーチ発信であれば
俺はこうしたほうがいいと思うんだけどな!(チームのシステムとは違う自分の意見)
こう言った発言が自然と発生してしまい、チームで進もうとしている正しい道が見えなくなってしまう。
するとどうなるかと言うと
その道間違ってるよ!
元の道に戻そうとしても
俺たちが正しい!
それがまかり通ってしまう。
なぜなら、間違った道に寄り添っているチームスタッフがいるからだ。
チームスタッフの仕事は正しい道に誘導すること。
そのスタッフが一緒に間違った道に進むと必ずこのようなことが起きてしまう。(だから自分を律することが必要だ)
そして選手から見ると、正しい道に誘導している人が悪になり、間違った道に寄り添っている人が正義になる。
そうやって簡単にチームが分裂してしまう。
特に僕らは連敗中ということもあり、チームへの信頼度が低下しつつある状況の中にいたから尚更だ。
ACの時にも僕はこの状況を変えようと努力していた。
しかし、ACという立場では発言力が足りずどうにもならないこともある。
その結果どうなるかというと。。。
間違った道を進む人たちからすれば、僕は悪と認定されることになった。
(ここで大事なことは、例え自分が悪と認定されてもチームにとって正しい道を歩けられるかどうかだ。
そのためには必要なスキルがある。それは自分を律することができるかどうかだ。)
それでも多少の改善は見られていたが、満足する状況までには至っていなかった。
チームスタッフの意識改革
HC代行として新しくチームを作り上げて行く中で、まず最初に取り組んだことがこれだった。
そしてACを呼んで
「以前から何度か言っているが。。。」
まずこのコメントから始めた。
なぜなら、これから言うことは君たちには何度も伝えているからね!つまりこれが最後の変わるチャンスだよ!っていうことを自覚して欲しかったからだ。
それと、何度も言うぐらいとても重要なことなんだよ!それを理解させるためだった。
「良い練習にするかしないか、やるかやらないかは選手の責任だ。だけど、良い練習ができる環境を作るのは僕らコーチの責任だ!」
続けて
「これからは練習中は選手と物理的な距離を取りなさい。君たちの仕事はコートの中で選手を鼓舞したり、指摘することだ。フロア上で困っている選手を助けることだ。フロアの外(練習の順番待ち)で困っている選手は、選手から君たちを尋ねにくる。そういう環境を作りなさい。」
どういうことかというと
上に載せた図のような形だ。
このようにして、全員の意識をフロア上に向けるようにするのが僕らコーチの仕事だ。
これらと全く同じ話を僕がACのときから幾度としている。しかし今回は明らかに今までとは違う顔になっていた。
なぜなら僕がHCだからだ。
ACのときとは違う発言力がある。この発言力を正しく使う必要があった。
チームスタッフのやる気を上げる
そもそもなぜチームスタッフからネガティブな私語が生まれるのか?
選手からでるネガティブな発言に流されてしまうのか?
それはチームスタッフが現状に満足していないからだと思う。
これは僕も経験があるが、コーチとしてチームに所属しているが、結局やっていることは雑用みたいなことばかり。(この雑用みたいなことも大事な仕事です)
これだとHCやチームからコーチとして必要とされている実感は持てないし、自分はただの雑用係のような感覚に陥ってしまう。
しかし逆に必要とされていると実感できれば、この雑用みたいな仕事も立派な仕事だと思えてくる。
つまり、HC(僕)がACをコーチとしてリスペクトできているかどうかが大事なのだ。
僕は彼らに仕事を与えた。そしてその仕事が柔軟に進められるように発言力を与えた。
仕事とは
①自チームのディフェンスを任せる
②自チームのオフェンスを見るときは、見る対象(ポジション)を分担して任せる
③試合中は2人に自チームのディフェンスを任せる
この3点だ。
①に関しては、ディフェンスシステムの選択やそのシステムを構築するドリルは僕が考えて実行するが、そのシステムの習熟度を上げるドリルは彼らに任せ、彼らのアイディアを取り入れ実行させる。
相手チームのスカウティングビデオの作成、ビデオミーティングの進行、相手のプレーの対策もACに任せる。
②オフェンスシステムの練習のときは、ビッグマンは葉山くん、それ以外は藤丸くん。というように担当を分け、システムの動きを遂行できているかどうかチェックさせる。
また練習中のシューティングは、彼らがそれぞれのポジションに対してコーチングする。
③試合中は自チームのディフェンスのことは全て任せる。
このようにして彼らに責任ある仕事を任せることで、僕のリスペクトを示した。
最も大事なことは、彼らに発言力を与えることだった。
僕がACをリスペクトしていることを見せることで
”HCにリスペクトされているAC”
というように選手から見られるようになる。
これは発言力を与えるにはとても重要なことだ。
だが、見せるだけでは足りない。
「ディフェンスに関しては全てACの2人に任せている。何かあればACに相談しなさい。彼らは僕のシステムを完全に理解している。つまり彼らの言葉はHCの僕の言葉と同じだ。」
このようなコメントをミーティングで付け加えることで彼らの言葉に力をもたせた。
さらには
「葉山くんが!藤丸くんが!良いことに気づいてくれたんだけど。。。」
っていう前置きを所々に混ぜるようにした。
こうすることで選手からACへの信頼を高められる。
そして。。。
彼らが発言しているときは割り込んでいかない。仮に間違ったことを言ったとしても、その場では否定しない。
これらのことを実行することで、彼らに発言力を与えた。
リスペクトと発言力を与えることで彼らの意識は驚くほどに変わった。
私語はなくなり、常に自分の仕事に没頭するようになった。
最終的にこの2人は、
僕のチーム作りを理解してくれて遂行してくれた。
僕のバスケットのシステムを理解してくれて、それがより良くなるように最大限の努力してくれた。
忙しい中でも相手の分析を細かく行ってくれた。
選手の成長のために遅くまでワークアウトもやってくれた。
自分の意見を僕に言ってくれた。
本当に頼りになるACでした。
しかし最後まで改善できなかったこともある。
それは指摘するということだ。
どれだけ環境を整えたとしても、練習や試合が上手くいかない日はある。
そんなとき指摘できるかどうかが、コーチとして大きな差が出てくると僕は思う。
だからこそ僕はそれを育てたかった。
しかし、これは僕のエゴだったと思う。
指摘というのは選手を不快にさせてしまうこともある。俗にいう嫌われ者的な存在になってしまう可能性もある。
そんな辛い仕事をACに求めていたこと自体が僕の間違いだったと今は思う。
僕はACの立場のときでも指摘はできた。
それは選手よりも年齢が上だし、それなりの経験値もある。僕には年齢的にも経験値的にも指摘しやすい環境が整っていた。
しかし葉山くんは年齢的には選手よりも上になるがコーチとしては未経験。
藤丸くんは選手よりも若い。
そんな2人には荷が重すぎる。
そこの配慮が足りなかったと今は反省している。
あとがき
今回はチームスタッフについて書いていきました。
HCを含めるチームスタッフ全員が環境を作る!ということを少しでも知っていただけたら幸いです。
そしてチームスタッフの環境を作るのはHCだということも。
チームスタッフ、特にACというのはとても難しい立場です。
コーチとしての仕事を求められるが、コーチとして扱われないことも多い。
この矛盾がACの意識を低くしてしまいます。
そしてそれをコントロールできる唯一の人がHCだと僕は思います。
僕は大学で約5年間、Bリーグで3年間ACを経験しました。
僕がラッキーなのは、大学でACをしていたときにHCから使ってもらえたことです。
これって当然のように思うかもしれませんが、実はそうじゃないんです。
ACを使うHCはまだまだ少ないと僕は感じています。
実際に使ってもらえず、自分は一体何をしているのか?って思うシーズンもたくさん経験しました。
仕事は待ってるだけではダメ!
自分から仕事をさがなくちゃダメ!
今できることをする!
もちろんそうです。
ですが、組織の中では自分ではどうにもならないこともあります。
自分が何を期待されているのか。
チームはどこを目指しているのか。
これらのことは与えてもらわなければどうにもならないことです。
だからこそ、HCはACを使わなくてはいけないと思います。
これを読んでくれた人が
ACは使わな損!
ぐらいでも良いので思ってくれたら嬉しいな!
僕もACを使えるHCになりたい!
っていうか、ACの助けがないと僕には何もできない😁
今回はいつも以上に実際の現場について書いているので、もしかしたら不安を抱かせてしまったり、不快に感じたり、幻滅してしまったこともあるかもしれません。
しかし
コーチが環境を作る
ということは、コーチングではとても重要なことです。
そしてそれを教えてくれる人は多くいません。
コーチングを学ぶ人には絶対に知ってもらいたい。
そのためにはリアルな状態を曝け出さないと伝わらないと思い書きました。
シーズン終わってから
良いチームになったね!
というお褒めのお言葉をたくさんいただきました。
とても嬉しかったです。
では、良いチームに見えたのはなぜか?
それは全てチームスタッフのおかげです。
チームスタッフがチームのために最高の環境を作ってくれたからです。
チームスタッフのみんな!
ありがとー!!
今回も長ーい文章に最後までお付き合いしてくださりありがとうございました!
それではまた次回!!
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