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"コンパッションが導く深い対話 ~早紀ちゃんとのエピソードから~"

あなたは、心から相手とつながれていますか?相手とつながれず、対話がうまくいかない理由は、もしかするとコンパッションが不足しているのかもしれません。

コンパッションとは、自分や他者の苦しみに気づき、共感し、その苦しみを和らげるために行動しようとする思いやりのことです。 優しさだけではなく、勇気や強さも求めます。


コンパッションと出会い、その素晴らしさに魅せられた私は、2025年に10年来の友人でもあるコーチの植田早紀さんとコンパッションを広める会社を立ち上げました。2人の間で起きたエピソードを通して、コンパッションが、人間関係でどのように働くのかをお伝えします。(以後、植田早紀さんのことを、「早紀ちゃん」と表記します)


私たちが一緒に活動してきた、大人の成長について考える「成人発達理論」の講座の、ある出来事がコンパッションが持つ力を実感させてくれました。

想定外の質問に試される瞬間

2年前、講座の終盤で受講生から難しい質問が投げかけられました。抽象的で、正解・不正解があるわけではないその質問の回答を、私はその場で必死に考えました。「納得感を持って講座を終えてもらいたい」という願いがあり、とても集中していたのを覚えています。

私と早紀ちゃんは、講座の終了後、いつも振り返りをしています。
その日の振り返りの場で、早紀ちゃんがとても言いにくそうに切り出しました。

「さっきのファシリテートだけど…気になることがあって。良子ちゃん、1人でファシリテートしていた気持ちになっていたんじゃない?」

私は驚きました。自分ではベストを尽くしたと思っていたのに、早紀ちゃんには「1人で進めてしまった」と見えていたのです。

信頼関係が揺らぐ?

私と早紀ちゃんは、講座を「コ・リード」と呼ばれる珍しい形式でファシリテートしています。

「コ」とは、英語の「Co」のこと。「共に」「共同」という意味の通り、2人のどちらがメイン、サブ、というわけではなく、パートナーシップを持つ掛け合いで進めていきます。


早紀ちゃんの言葉を聞いた瞬間、私は複雑な気持ちになりました。


まずは「図星だ」と思いました。

確かに、私は1人でなんとかしようと頑張っていた。そして、それが当然のことだと思っていました。無意識ですが、「それが回答できるのは、自分しかいない」という気持ちもあったように思います。受講生が納得した顔をしていることに達成感や満足感さえあったと思います。

でも、2人でファシリテートしている意味は、難しい局面になった時、助け合えるからなのです。相手の力を借りればよかったのに、それが思いつかなかった。それではコ・リードの意味がありません。

気づいたと同時に、自己嫌悪が襲ってきました。大切な早紀ちゃんを傷つけてしまった。そう思いました。彼女は苦しそうに話していました。私は、まだ何が起きたのかわからないから、心は混乱しながら、その苦しみだけは感じ取れていました。

また、自分の視野の狭さが嫌になりました。ずっと以前から、私は自分にファシリの能力がないと自己嫌悪していました。「やっぱり才能がない」そんな声が聞こえてきます。

そして、もう一つの感情——怒りも湧き上がりました。

「私はベストを尽くしたのに。」
「自分から前に出て助けてくれてもよかったんじゃないの?」

もしコンパッションを学ぶ前の私だったら、この怒りの感情がもっと強く出ていたかもしれません。

あなたは、対話の中で「本当はこんなことを言いたいのに」と思いながらも、感情に流されてしまったことはありませんか?私の怒りの感情は厄介です。人と争うのが嫌だから、表面的には穏やかに謝るけれど、それは心からのものではなく、その場を丸く収めるための行為。その後、少しずつ距離をとってしまうことがありました。

向き合う「決意」

この時、「今こそ、コンパッションを実践するときだ」と感じました。

コンパッションは、気持ちを落ち着け、相手の言葉をありのまま受け止める力をくれます。私は、この瞬間こそコンパッションを実践すべきだと感じました。

「以前のように、つながりを感じないまま謝ったら、私は早紀ちゃんと距離を取ろうとするだろう。それは嫌だ。コンパッションの“つながる力”を信じよう。」

そう思った私は、深呼吸をしました。呼吸が心を穏やかにすることをコンパッションの学びから知っていたからです。

ゆっくりと息を吸い、吐き出すと、肩に力が入っていたことに気づき、力を抜きます。体の重心が静かに下腹に降りていきました。そして、私は改めて早紀ちゃんの顔を見ました。

その時、彼女が感情に任せて話しているのではなく、慎重に言葉を選び、私を傷つけないように配慮してくれていることに気づきました。彼女の美点である「思慮深さ」が現れた表情が読み取れました。どうすれば自分の真意が伝わるかを深く考えてくれている様子も見えました。

それに、彼女の声が震えていました。

その瞬間、私は「これは本当に大切な場面だから、しっかり相手の気持ちに焦点を合わせよう」と思いました。

共感の力

以前の私なら、まず傷ついた自分の内面に注意が向いていたでしょう。自分について「大切な人を傷つけるような、自己中心的な人物だ」とか、「何にも気づいていなかったなんて恥ずかしいやつだ」と自己批判してできた傷です。でも今回は違いました。

私は、傷ついている自分に「あなたは悪くないよ。その時できるベストを尽くしたんだよ。一生懸命、受講生のことを考えたんだよね」と優しく語りかけました。

すると、心が落ち着き、早紀ちゃんの言葉がすっと入ってきました。

彼女が「1人で受講生の前に立つより、2人で立つことが、これからの自分たちに大事だと考えてくれた」ことが痛いほどわかりました。

私は心から「ごめんね」と謝り、「これを話したら、どうなるのか、迷いながら言ってくれたね、ありがとう」と、伝えました。

謝罪だけではなく「こんな気持ちもあったよね」と相手が口にしてない言葉を付け足して、共感も示しながら謝れたのは、私にとって初めての体験でした。

ただ謝るだけなら、これまでもできました。でも、相手の気持ちを想像し、共感の言葉をかけることは、プライドが邪魔をしてできなかったのです。

つながりの実感

私たちの間にはもう重苦しい雰囲気はありませんでした。

私は、公園の青空の下で「そっかー、わかんなかったなー」と、世の中の新しいことを知った幼児のような声を出している自分を面白く感じました。

早紀ちゃんがこの話をしてくれたことが、ありがたかった。彼女が、これからも2人で一緒に講座を主催していくために必要だと思って」と思って伝えてくれたのが嬉しかったのです。

最近、早紀ちゃんと世間話をしていた時、「良子ちゃんとは話せばわかる」と言ってくれたことがありました。私も同じように感じていたから、心の底から嬉しかった。

お互いがコンパッションの知恵と、培った勇気と強さで向き合っていると感じられています。

コンパッションの循環

この出来事から、私はコンパッションの力を強く実感しました。コンパッションには様々なメリットがあります。

【コンパッションのメリット】
・コンパッションは、気持ちを落ち着けるのに役立つ
・気持ちが落ち着くと、目の前の事実がしっかり見える。恐怖や怒りのレンズを通して相手を見るのではなく、ありのままを見れる
・心がオープンでいられる。防御しなくても良いと自分に言ってあげられる
・防御がないと、相手の思いやりを受け取ることができ、こちらも思いやりを送れる
・そうすると、コンパッションの循環が起きる

コンパッションは、対話の質を深め、人とのつながりをより強くする力がある。

そして、その最初の一歩は、自分自身へのコンパッションから始まるのだと、私は実感しました。

すべてのつながりは、まず “自分自身を思いやる” ことから始まるのです。


この記事は🌎3/20の世界幸福デー🌏に向けた「#コンパッションアドベントカレンダー2025春」の6日目の投稿です。コンパッション・マインド・トレーニングを受講したメンバーで書いています。各回共通のテーマは「日常で見つけた幸せ」「あなたと私の幸せ」。ぜひマガジンをフォローして、幸せを受け取ってください。


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