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L'Absinthe House とおじいの思い出 Neuchâtel

ご存知の方には有名な「社会人としての私を育てた3人のおじ(い)さん」の中のおひとり、
横浜のおじいは東海道新幹線の試運転に乗っていたエンジニアで、世の中にあるいろんな機械(たとえば自販機)を
「それ、僕が作った」としれっと言って周りの度肝を抜くのが特技の超大手メーカー研究所長をつとめた(たぶん
上皇陛下と同じ歳の)おじいです。

私も40年後はあんな感じで働きたいなあとずっと思って目標にしているのです。

そのおじい、ヨーロッパ愛好仲間でもありまして、よく出張の思い出を話してくれました。(私が旅行に行く時は「現地のCDを買ってきて、ダウンロードしたあとで僕にちょうだい(もちろんおじいが買ってくれる)」をやっていました)

その話の中で「ヌーシャテル」がよく出てきていたのです。

私てっきりドイツだと思っていたんですけど(話聞いてないな)
スイスに来て電車に乗っていて、あら可愛い街だことと思ったところがNeuchâtelだったのです。うちから1時間くらい。もちろんスイス、まだフランス語圏。

これは行っとかんといかんなあ、と思って行ってきました。

でもね、ほんと別になにもないんですよ。
他になにかないかな?と地図を見ていると近くの街に L'Absinthe Houseがあるではないの。アブサンのミュージアムです。

アブサンってご存知ですか? 一応、日本でも買えるようですが、そんなに普及はしていないと思います。スイスのNeuchâtel付近で生まれたいわゆる薬草酒(養命酒的な感じで作られたよう)なのですが、その時代の人々を魅了し、それが度を超えたのでしょう。幻覚作用があるとか(諸説ある)、粗悪品で中毒症状が出るとか(諸説ある)、依存性があるとか(諸説ある)で、ヨーロッパ各国で禁止されました。
しかしベルエポックの芸術(家)には欠かせないもので、たとえば映画「ムーラン・ルージュ」(ユアンマクレガーかっこよいね)にも登場する緑色のお酒です(透明もある)。

私は先日チェコで買ってみた程度にアブサンには関心があるので、スイス発祥と知ってこれは知らねばと思っていたところに発見したL'Absinthe House
テイスティングもできるならこれは行きましょうと思い、ついでにLausanneでお買い物もすることにして、初夏の遠足してきました。

地図でもわかる通り、近いっちゃ近いけど結構戻るっちゃ戻ります。これはほぼ並行した別の路線なので、ミュージアム最寄駅の Môtiers に行くには必ずNeuchâtelまで行かないといけないのです。線路の間には山がありますので、なかなか超えられないです。

さておき L'Absinthe House

関心のある人はぜひ行ってみてください。アブサンの歴史(行政文書とかまである)、周辺文化、器具、素材(乾燥したAbsintheはラベンダーのような香り)、蒸留方法など、一通りのことを知りました。古道具とかベルエポックとか好きな人も楽しいと思います。

素材としてのアブサン
これも。グランドとプチがある。

ところで、私がアブサンを初めて知ったのは「ベルサイユのばら」だったと思っているのですが、バスティーユ陥落が1789年、アブサン誕生は1797年なので、ベルばらの世界にはアブサンはないはずです。
オスカルが「宮廷はアブサンの香りに包まれている」とアンドレに愚痴ったり、女性の姿で社交の場に行った時に「アブサンの香り」が嫌なものとして描かれていた、ような記憶は間違ってる?(ま、フィクションだし堕落の象徴にしやすくもあるけど)
そして私がベルばらを読んだり宝塚歌劇で観たりした時(90年代初頭!)には、スイスではまだ禁止されていた(2005年解禁)んだなあと思うと感慨深いものです。

緑の妖精(アブサンの象徴)の下にある花冠に注目

私が住むMorgesはVaudというカントンに属しており、
1番有名なポスター「緑の妖精の終わり」に書かれている、アブサン禁止に反対した2つのカントン Neuchâtel(産地だから?)とGenève(フランスみたいなもんだから?)の間に位置します。反対運動のきっかけになった事件が起こったのは 我がVaud の Copet (船に乗りました。いい街)だという展示と合わせて、地域史としてもなんとも興味深いものだ (ちょっくら何かしてみるか)と思っています。

事件の様子が書かれています(Google翻訳様様)


さらにこのポスターの横に、特にキャプションなく展示されていたジャグのような緑の容器が。ここにMorgesと書いてあるんですよ。さらに時計の意匠も(ポスターの時計=禁止令施行時刻 の10分前)。

なにか意味があるのではと思うやん?
もしかしたら、Morgesのカフェに配られて、最終日にちゃんと回収しましたよ!みたいな形で役場に持って行ったのかな?なんて想像しますやん?

スタッフのマダムに聞いたところ、モノとしては水差しだ、と。
トップ画像にもあるように Absinthe を飲む時には Fontaine からグラスに水を注ぎますが、水差しから注ぐこともあったと。なぜMorgesと書かれているかはわからない、とのこと。そっかー。

なお別情報で、こういう水差し(動物の注ぎ口と時計)は結構あって、時計は「さあ、Absintheの時間だよ!」を示しているという説もありました。


1ml×3種類がおすすめ

知的好奇心を刺激したらテイスティングです。

3種類を試しました。透明、透明、みどり。どれも地元産。

ちょっとフルーティーだったりアルコール度数の違いとかはありますが、基本はアニスの香りの蒸留酒やなあ!というかんじ。原料で嗅いだAbsintheの気配は分かりませんでした。チェコののど飴の味に似ている。そして独特のつるっと感があります。特に1つめ。これなんだろう、上あごに感じるつるっと感、経験したことある、これ。

甘みはありません。おすすめに従って、みどり用にはお砂糖をもらいました。こーれーは、食後酒なんかにいいんじゃなーい?幻想的!そりゃあ夢中になるのも分かるわ。

こうやって飲みます。水を落とすと白濁するところを見てください。(動画アップできなかったらごめんなさい)


Absinthe コレクションをひとつ増やして帰ってきました。ああいいもの見せてもらった。スタッフの方々もとても親切ですよ。

左が今回買ったスイス産のアブサン。色付きはプラハにて。


Tシャツなどのグッズもあり
アブサンセット買ってきました

Neuchâtel はどうしたって?

お城と街並みは車窓から眺めるのでいいかなーと思っています。
スイス領土の面積としては最大のヌーシャテル湖も、うん、まあはい(私レマン湖民なので)。降り立ったことに意義があるとしておきましょう。

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