ティール組織#03 「上司もミドルマネジメントもない」
通常10名ぐらいのグループができると、それをまとめる人がいて、そのグループメンバーの上司になる。支店が増えたり、機能が複数になってくると、「◯◯地域マネジャー」のようなミドルマネジメントが生まれる。
しかし、ティール組織には上司がいない。ミドルマネジメントもない。
ほとんどの権限が10〜12名のチームに委譲され、モチベーション高く仕事に取り組んでいる。ごりごり上司にやられて気を病んだことのある人にとって、夢のような世界ではないでしょうか?(私はその一人です)
しかし、階層構造ができたのにも理由があります。全員が対等な関係だと、平等主義に陥ったり、人同士の対立から組織が崩壊しがちです。
コミュニケーションチャネルを考えても、100人のフラットな組織では4950本のコミュニケーションチャネルがあるのに対し、10人x10組にわけると495本に減らすことができます。
だからこそ、組織が階層構造になるのは、必然のように感じます。では、真逆のティール組織がうまく機能し、各チームが自主経営していくポイントはどこにあるのでしょうか?
(1)ティール組織には上司がいない
ティール組織は1チーム10〜12名で構成され、ほとんどの決定権を持っている。実務に加えて、採用、事務、プランニング、コールセンターなどを行う。マネジャーはいず、決まった決定権者はいない。
では、どのように意思決定していくのか?
全員がファシリテーションや対話、メンバー同士のコーチングスキルを学び、一人ひとりが意見を言える場をつくっている。
一つ注意が必要なのは、チームメンバーは「平等ではない」ということ。ピラミッド状の序列はないが、全員が能力、専門性、性格、モチベーションの違いがあり、評判や影響力、スキルに基づく、自然発生的で流動的な階層がある。
(2)ティール組織にはミドルマネジメントがない
10〜12名のチームの上には、ミドルマネジメント層はない。あるのは本社機能のみ。しかも、9,000名に対して28名しかいない本社スタッフ。評価は自分たちで作成したコンピテンシーモデルに基づき、チーム内の相互評価で行う。
地域マネジャーの代わりに「地域コーチ」がいる。地域コーチは、一人で40〜50チームを担当し、チームの課題解決と成長をサポートする。重要なことは、地域コーチに「チームの業績への責任はない」ことだ。業績に応じた報酬もない。必要以上に面倒を見ない。チーム結成初期に、面倒を見すぎたチームは、その後も自主性が低く、依存性の高いチームになったという事例が紹介されている。
(3)管理部門を置くメリット・デメリット
なぜ、ほとんどの組織で管理部門があるのか。
それには2つの理由が考えられる。
1つ目は効率性。
規模が大きくなると、管理機能を集約したほうが専門性が高まり、重複もなくなり、生産性が上がる。
2つ目は経営幹部の満足感。
声を大にしては言われないが、おそらくあるだろう(と本では書かれている)。社内を歩けば本社スタッフがいる。本社スタッフへの指示を通して、現場をコントロールしている感覚を持てる。
デメリットは、管理部門から指示や制約を受けることで、現場のモチベーションが下がる。金銭的なコストは数値として表しやすいが、モチベーションの低下は数値化しにくいため見落とされている。そして、管理部門からの指示は、現場が必要とする的を外していることが多く、経営幹部が感じるコントロール感は幻想だ。
私は本社部門と現場の両方を経験してき。現場にいると、本社から指示を受けるのは不満のタネになる。特に一方的に通達されると。このとき、うまくコーチングを入れて、こちらの考えも聞いてもらえていると受け入れやすくなる。
本社部門は、管理方法の強化やルール変更で自分の存在価値を出そうとするという記述があった。これも納得。
本社部門がもたらすデメリットはよくわかる。一方、メリットである効率性や専門性をどう補っていくのかは、まだまだ不明な点が残る。
キーポイント
上司が部下から答えを引き出す、コーチング型マネジメントやサーバント・リーダーシップが拡がりを見せていますが、上司だけでなく、全員がコーチ力を高め、相手にコーチとして関わり、自分をセルフコーチングできる組織が、階層構造なく成長していくティール組織の要だと読み取った次第です。