「世界で感じる積極性」

2017年の電動車椅子サッカー第3回ワールドカップの舞台はアメリカです。
今回のワールドカップは南米のアルゼンチン・ウルグアイが初参戦。
サポーターがサンバを踊りだし選手たちを応援する…日本代表が今まで見たことがない光景が目の前に映っていました。

アルゼンチン代表のエースは当時12歳?のValentino Zegarelli選手
ウルグアイ代表のエースはJuanchi Platero選手
この2チームは10代の若い選手たち中心に構成されていました。

彼らに共通しているのは「積極性」です。レフリーに対しても自己主張をしっかり行う。目の前にいる対戦相手を倒してやるぞという熱意がプレーや身振り手振りはもちろん目からも伝わってきます。私は彼らを「少年」と思って戦えば必ず返り討ちにあうと感じました。若くして代表を背負い気持ちを強く持って戦う姿勢を見せる選手たちを甘く見ること自体失礼な話です。試合では年齢関係なく1人の選手として捉えて甘く見ることなく戦う、相手の本気に対抗するには自分の本気で対抗するしかないのです。

私はゴールキーパーとして南米の選手たちの強い気持ち・プレーを全身で受け止めつつ、そしてそんな相手を倒そうととにかく必死でした。激しいプレーに対しては言葉で気迫を見せ、主張することも忘れませんでした。

試合自体は勝ちました。しかし、4年後が恐ろしくも感じました。私の幼少期は南米の選手たちのような気概を持ち合わせていなかった、もっと言えば「積極性」というものが今の日本の電動車椅子サッカー選手に圧倒的に足りない要素ではないかと感じたわけです。

比較するわけではないですが、ある練習で自分の希望するポジションやストロングポイントを監督に直接伝える時間を設けてもらったことがあります。何人かの選手が思いつかず、他の選手が〇〇という点が良いよね!とフォローしていました。

自分のことを自分の言葉で伝えられない選手が現地で戦えるでしょうか。言葉がうまい下手ではなく、選ばれたいという熱量が伝えられないと監督がそれを感じ取れないと思うのです。そして他の選手が〇〇という点が良いよね!とフォローすることは「優しさ」だと思いますが、それをしてしまうと選手が自分の強みを考え、自分の言葉で伝える成長の機会を奪ってしまうことになると思うのです。あえてフォローしないことも大切な気遣いだと思います。

ワールドカップから帰国後不思議な偶然がありました。私がお世話になっている作業療法士の方がたまたまウルグアイに長期滞在していて、その方のFacebookにウルグアイ代表の選手たちが映っていて驚きました。こんな偶然があるのかなと。せっかくの機会だ、彼らから学んだことを伝えてもらおうと下記のような文章をスペイン語で伝えてもらいました。

「みんなと同い年くらいの日本の障害者の子は自分の思いを表現する力が弱い。でもウルグアイ対日本戦ではウルグアイのみんなの試合に勝ちたい気持ちがとても伝わってきた。日本の若い障害者の子たちにウルグアイのみんなを見習って欲しいと伝えたいと思っています。対戦してくれてありがとうございました。」

メッセージを聞いたウルグアイ代表の皆さんはみんなとても喜んでくれたようです。それだけでなくウルグアイ代表からfacebookを通してお礼のメッセージもいただきました。

思い切って伝えたことで心の繋がりができました。

ワールドカップと聞けば遠い存在に見えるかもしれませんが、ワールドカップは意外とすぐそこにあります。Facebookには世界の電動車椅子サッカー仲間がたくさんいます。是非交流していきましょう。

若い電動車椅子サッカー選手のみんな、積極性を持とう!若いからといって周りからの特別扱いに慣れてしまうと、成長は難しいです。かつての自分のようにサッカ-以前の問題でつまづいてほしくない思いがあります。選手として登録した瞬間にみんなは「1人の選手」であり、若いというのはおまけに過ぎません。

若い選手を支える周りの人々もあまり若いが故の配慮・フォローをし過ぎると選手の成長機会を奪ってしまいます。成長のしかけを作ること、これが自分が指導者になった時にチャレンジしたいことです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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