あの頃の僕よ。こんにちは
幼い頃の僕。
まだサバイバルが始まる前。
その子はずっと僕といて、
小学校に入っても
何かを恐れていた。
その子が僕自身だったといえるけれど、
あることがきっかけで
僕はその子と決別する。
それは、
小学校の高学年になった頃、
クラス替えで
はじめて会った嫌なやつとの出会いのこと。
そいつは、
おとなしい僕をからかっては、
何もしてこない、何も言わない僕を見て、
どんどんエスカレートしてきた。
毎日毎日、なにかしら
嫌なことをしてくる。
イスを後から蹴ってみたり。
振り返ると知らん顔。
言葉尻の言い間違いを
みんなの前で、しつこくからかってみたり。
そこで、
母親のスカートの後ろに隠れていた
「その子」の前に、
(幼い頃の僕のことだが)
突如、ヒーローが現れる。
「黙っていることなんてない」
それは「僕は嫌だ」と言えるもう1人の僕だった。
僕は嫌だ、というその子は、
即座に態度と行動で示す。
授業中、より効果的な方法で。
突然、椅子から立ち上がった僕は
その意地悪な奴のところへ静かに近づき、
あっけにとられているそいつを真正面から
蹴り飛ばしてやった。
真後ろにひっくり返って天井を仰ぐそいつ。
静まり返る教室。
驚く先生やクラスメイト。
次の日から
世界は一変した。
その後、
僕はおとなしい僕のことをすっかり
忘れてしまう。
それだけ
この世界を生き残るための
サバイバルは厳しいものだったから。
恐れに屈するくらいなら、戦え。
というのがもう1人の僕だったから。
しかし、
ずっと忘れていたけれど
会社を辞めて、起業して
順調だったのに
ある日、立ちあがれなくなったとき。
その子が、
僕をじっと見ていた。
どうして君のことを
忘れてしまったのか
それを思い出す機会が何十年ぶりに訪れた。