はじめての「パパ育休」、あるいは「パパ活」
たんごさん、明日から「パパ活」頑張ってね!
満面の笑みを浮かべながらクソデカ爆弾発言をくり出す上司に、わたしは苦笑いするしかなかった。
周囲はザワつき、わたしを怪訝そうな表情で見ている。
努めて明るく、冷静に上司に答えた。
(パパ育休…?)
また周囲がザワついている。
まぁ、無理もない。
「パパ育休」というフレーズはこの世に登場して日も浅く、子育て世帯でも一部の人しか知らないものと言っていい。
ましてや50を過ぎた上司からしたら、「パパ」につながるフレーズとしては「パパ活」の方がよっぽど馴染みがあるのだろう。
エヴァ最終回を観たときのような複雑な表情をしたわたしの肩をポンと叩き、上司は去っていった。
上司のトンデモ発言に精神をえぐられつつ、明日以降の引継ぎを終わらせるべくわたしはPCに視線を落とした。
今年2月、待望の第2子が産まれたわたしは、その子の育休を先日1週間取得した。
その育休こそが「パパ活」、ならぬ「パパ育休」である。
「パパ育休」とは、正式名称を「産後パパ育休(出生時育児休業)」とする、従来の「育休」とは異なる制度である。
2022年10月に施行され、主に男性の育休取得促進を目的としている。
制度の詳しい内容は厚生労働省のホームページを見ていただければと思うが、要は子どもが産まれて8週間以内に最大で4週間の育休を2回取得できる制度、ということだ。
世のお母さん方からこんなクレームが来そうだが、わたしのような日和見サラリーマンからすると「パパ」が付いただけでも幾分育休取得がしやすかったのも事実だ。
第1子のときは1日も育休を取らなかったこともあり、次機会があれば必ず取ろうと決めていたので休むことにためらいはなかった。
制度のMAXである8週間フルでの取得を考え、出産予定日からこんな感じで休みます的なスケジュールを上司に提示したところ、思わぬ答えが返ってきた。
確かにわたしが今いる部署は少数精鋭で成り立っており、人1人が欠けると苦しくなるのはわかる。
ただ、妻の妊娠を報告したときは「子どもは日本の宝だ!」なんて言ってくれたもんだから、てっきり両手を挙げて育休取得を賛成してくれるものと思い込んでいた。
わたしはとっさにこう嘘をついてしまった。
結局、仕事や諸々の事情でわたしの「パパ育休」は1週間となり迎えた育休初日。
いきなり子どもが高熱でダウンしてしまう。
名探偵ばりの「あれれ」が飛び出す事態が起きた。
慌てて駆け込んだ病院での診断結果は「ウイルス性の風邪」。
育休期間中に企画していた全てが初手から崩された瞬間である。
そこから数日間家族全員家に缶詰めとなるのだが、ここでとんでもない事態が!(ガチンコ風)
子どもが患ったのは「ウイルス性」の風邪。
そう、家族全員に感染したのである。
まあ、よく考えれば至極当然のことだ。
毎日ずっと同じ空間で過ごしているし、赤ちゃんなんて抱っこやなんやで超絶濃厚接触せざるを得ない。うつるのはもはやわたしが投げる渾身の火の玉ストレート(82km)を大谷翔平が打ち返すよりも簡単なことだろう。
わたし自身は軽症で寝込むほどではなかったが、妻や上の子は辛そうで育休期間のほとんどを寝て過ごした。
日本の某総理大臣が「育休中のリスキリング」を提唱したとかで炎上したらしいが、まぁ無理もない。
赤ちゃんといると日々いろいろなことが起きるし、自分の時間なんてあるようでない。ちょっと時間ができたら休みたいし、のんびりテレビやスマホでも観ていたい。
もともと1週間しか取っていないわたしがリスキリングできたとは思えないが、子どもや妻の看病もあり全くと言ってよいほど自己研鑽に充てる時間はなかった。
そんなこんなでわたしの「パパ育休」期間はあっという間に終わりを告げた。
幸い仕事に復帰する頃には家族全員回復し、いつもどおりの生活が送れるようになっていた。
企画していた実家への帰省も、毎日の早朝筋トレも叶わなかったが、わたし以外の家族全員が体調を崩すタイミングで長期休暇を取れたことはよかったとも思える。
ただ、正直1週間では足りなかった。
子育てはこれからもずっと続いていくもので終わりなんてない。
できることなら1カ月、なんならそれ以上の期間休みを取って家族とのんびり過ごしたい。
わたしの「パパ育休」期間はすでに終了してしまったので、次取るとしたら従来の「育休」となる。
あの「パパ活」上司をどう攻略し、どうやって「長期の育休」を獲得するか。
これがわたしの喫緊の課題であり、果たすべきミッションなのだ。(かっこつけ)
世のお母さん、お父さんはじめ全て子育て中のみなさまに最大限のリスペクトを込めて。
以上
▼ 本日の一曲
Rod Stewart - Young Turks