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ゴールは人生の様々な側面に複数を設定する 〜バランスホイールの使い方〜

コーチングでゴールというと、一つだけのゴールや、一つのメインのゴールとその他のサブゴールをイメージする人がほとんどです。けれども、ゴールは一つでは絶対に足りませんし、最初からメインとサブに分けてしまう必要もありません。

ゴールが一つしか設定出来ないのであれば、ゴール設定自体が非常に窮屈なものになってしまいます。ゴールが一つなら、多くの人は職業のゴールを選ぶと思います。趣味や社会貢献を、たった一つのゴールを設定するカテゴリーとして選ぶ人はたぶん少数派です。一方で、もし複数のゴールで良いなら、職業、趣味、社会貢献の3つ全部にゴールを持ちたいという人がきっといると思います。

メインとサブという設定の仕方は、メインで設定したつもりのゴールが実はそれほど心が動かされるものではなかったり、サブと考えていたゴールを後から本当のゴールだと気づくことがあったりするので、そのようなやり方はお勧めしません。最初から「これがメイン、こちらがサブ」と決めつけることでスコトマを生むことになるので、まずはフラットにゴールを設定してみましょう。


複数のゴールを設定するためのツール

それでは、ゴール設定の方法について詳しく見ていきましょう。

ゴールは人生のあらゆる領域に満遍なく複数を設定します。「人生のあらゆる領域」とは、例えば、職業、家庭、ファイナンス、社会貢献、趣味、生涯学習、健康など10個前後のカテゴリーが含まれます。その複数のゴールを上手に設定するための便利なツールとしてバランスホイールを使います。

バランスホイールを使うには、まずノートやA4サイズくらいの白い紙を準備して下さい。

その紙に大きな円を一つ描いて、それを丸いピザやケーキを10〜12個位の部分に切り分けるように線を引けば出来上がりです。特に難しいことは何もありません。

円を切り分けた一つの扇形の部分を一つのカテゴリーに対応させるので、先ほど紹介したカテゴリーの例を参考にしながら、自分に必要なカテゴリーを吟味して、足したり減らしたりしながら、扇形の部分に一つひとつ小さく書き入れます。(この後に記入するゴールのためのスペースを確保しておいてください。)

バランスホイール

ここから頭を使っていくことになります。なぜなら、各カテゴリーにゴールを設定しようとすると、「このカテゴリーにはどのようなゴールが相応しいだろうか?」とじっくり考えざるを得ないからです。現状の外側にゴールを設定するのはとても難しいことですが、そもそも各カテゴリーはどのように定義されるのかを考えたり、ゴールがどのカテゴリーに属するものなのかを決めたりするのもかなり頭を使います。

それでは参考までに、私がコーチングのクライアントにどのように各カテゴリーを説明しているのかをご紹介します。

職業のゴール

職業とは、まず、親、兄弟、親友や同僚、そのほか誰に止められても心からやりたいことであることが大前提としてあり、出来れば誰よりも得意なことで、社会に対して何らかの機能を提供した結果、金銭的報酬がもらえるものの事を言います。

心からやりたいことであれば、最初はあまり上手にできなくても、数年もすれば誰よりも得意なことになり得るので、「誰よりも得意なこと」というのはそれほど気にしなくても良いかも知れません。

それから、いま私たちが住んでいる社会は資本主義を採用しているので、社会の役に立てば概ね金銭的な報酬が得られます。ただし、職業を通じて得た報酬が、バランスホイールに設定したすべてのゴールに近づくための活動に必要なコストを十分に賄えるかどうかは別問題です。もし、報酬が活動コストに見合わないなら、別のファイナンスの手段を確保しなければなりません。それが、ファイナンスのゴールを設定する意味です。

ファイナンスのゴール

ファイナンスのゴールは、職業のゴールを目指すことで十分に報酬が得られるなら、すでにゴールを達成していることになります。けれども、職業とは別にファイナンスのゴールを設定しなければならないこともあるでしょう。

ファイナンスの活動は、バランスホイール上のすべてのゴールを目指すために必要なコストを賄うためのもので、お金を稼ぐというところに重点をおきます。けれども、ファイナンスのゴールであっても、心からやりたいと思うことでお金を稼ぐというのは変わりません。職業のゴールとは、質的に少し違うかも知れませんが、やりたいことをやるという点は同じです。

例えば、俳優を職業とする人が、若い時はなかなか俳優業で稼ぐのが難しくてコンビニでアルバイトをして生活を繋いでいるという話をよく聞きますが、これもファイナンス活動の一つと言えるでしょう。(もちろん、この人はコンビニのバイトが大好きです。)

また、どこかで雇ってもらわなくても、人の役に立つものを提供すれば金銭的報酬が得られるというなら、自分が得意なことをベースに、職業として選んだことの周辺領域や職業とは全く関係のない別の分野で商品やサービスを売り出してお金を稼ぐのもいいでしょう。

ところで、ファイナンスのゴールは、職業や趣味などの大半のゴールとは異なり、大きければ大きい方が良いという訳ではなく、収入と支出のバランスが大事です。収入が支出を少し上回り、かつ、長い目で見て、資産が少しずつ増えていく位がちょうどいいのです。

そういう意味では、ファイナンスと健康のゴールは似ていると言えます。健康もファイナンスと同様に、大きければ大きい方が良いという言い方は適切ではありません。健康のゴールは、健康な状態でバランスが取れていればいいのです。それから、ファイナンスも健康も、それ以外のゴールの達成を支えるものとしての役割があるというのも、この二つのカテゴリーの共通した性質です。

趣味のゴール

それから、職業のゴールがなかなか見つからない人は、趣味のゴールを考えてみるのがいいでしょう。ここで趣味とは、心からやりたいことだけれども、自分にも自分以外の誰にも役に立たないものとします。お金もかかるし、誰の役にも立たないのだけれど、心からやりたいと思うことです。

趣味を誰の役にも立たないことと定義すると、かなり趣味を探すのが難しくなります。例えば、普通の感覚であれば、スポーツとか読書を趣味のカテゴリーに入れたくなりそうですが、人によってはスポーツは健康のためとか、読書はただ楽しいだけではなく教養が身につくからなどど、実用性が入ってくると趣味のカテゴリーではなくなります。

実際は、趣味とするか、それとも生涯学習や健康のゴールとするのかを迷うことになりますが、カテゴリーの分類はこうでなければならないというものではなく、自分の頭の中で、どのカテゴリーに分類するのかを吟味すること自体が重要なポイントです。

社会貢献のゴール

社会貢献のゴールは、いわゆるボランティア活動を含みますが、他のゴールとの関係で時間やリソースが割けずに活動としては何も出来ていなくても、頭の中で自分の住む地域社会のことや、もう少し大きな社会のことについて気に掛けることでも十分かも知れません。

なぜなら、そもそも職業のゴールを追求することで社会には役に立っているはずなので、「社会に貢献する」という部分は職業のゴールによって満たされていると言えるからです。

ではなぜ、わざわざ職業とは別に社会貢献というゴールを設定するのかというと、職業のゴールを追求する過程で発揮する能力以外の能力を、職業とは別の社会貢献活動において発揮できる可能性があるからです。

職業は、他の誰よりも得意なことを生かすのが理想と言いましたが、自分では気づいていない別の優れた能力があるかも知れません。ただその能力は、まだ未発達であるかもしれないので、職業の場面で発揮するには心許ないのです。それなら、職業のように報酬を頂くわけではないけれども、社会貢献することが自分の能力を試したり、自分でも気づいていない能力に気付いたりする機会になるかも知れないということです。

生涯学習のゴール

生涯学習というのは、常にさまざまな方面にアンテナを張って興味を持ち、この世界をよりよく知ろうとしたり、自分でできることを増やしたりすることです。職業を通じて提供する自分の機能を拡張することにつながるかも知れませんし、社会貢献活動をする時に役に立つかも知れません。仮に職業や社会貢献には何の役に立たなくても、学び続けることはあなたの人生をより豊かなものにしてくれるでしょう。

その他のカテゴリーのゴール

その他のカテゴリーとしては、人間性を高めることや、会社や組織の中で期待されるリーダーシップに関するものなど、それぞれの置かれた立場により関心の高いゴール設定の領域があると思います。冒頭に挙げたカテゴリーを参考にしつつ、ご自身で自分に合ったカテゴリー群を見つけてください。

ゴールを設定した後は?

自分が決めた各カテゴリーに満遍なくゴールを設定したら、ここからがゴールへ向かうプロセスの始まりです。その複数のゴールを書き込んだバランスホイールをひとつ上の視点から眺めて、未来にゴール達成した自分を思い浮かべてみて下さい。ハッキリとはイメージ出来なくても、今の自分とは随分と違って大きく成長しているでしょうし、今とは全く違う環境で活動しているはずだと感じるでしょう。

そして、その未来の自分から逆算した、今現在のあるべき自分の姿を、今度は具体的にイメージして下さい。その新しい自分のイメージをリアルに感じられれば、楽々とゴールに近づいていくはずです。もし、全く変化がない、もしくは、たいした変化が起きない場合は、現状の外側にゴールが設定出来ていない、または本当に心からやりたいことがゴールに設定出来ていない可能性があります。その時は、もう一度プロセスの最初に戻って、ゴールを再設定してみて下さい。

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