まず理解に徹し,そして理解される|第5の習慣
『7つの習慣』でも聴くことの重要さについてしっかりと書かれています。叙述的な聴き方と共感的な聴き方の二つを対比させつつ,共感的に聴くことでWin-Winを考える習慣(第4の習慣)への具体なアプローチを示しています。
まず理解に徹し,そして理解される|第5の習慣
聴くということについてはカウンセリングでもコーチングでも,キャリアコンサルタントの勉強でも繰り返しその重要性を説明され,まぁとにかくなんでも最初は「聴く」ということをしっかり勉強しなさいと言われます。
これはつまり「聴く」ということがいかに僕たちは日頃できていないかということを如実に示しているのでしょう。
そりゃ確かにわざわざ「聴く」を練習することもありませんし,具体に「聴く」を向上させるのはどうしたらよいのか,みたいなことを学校で習った記憶はありませんから,みんなそれなりに下手くそなんでしょうね。
聴くと言えば,カウンセリングが想起されます。
しかし,カウンセリングとコンサルティングやコーチングでは,趣旨からして異なるものなので,聴くことがすなわちカウンセリングかというとこれは少し違います。
そういえば,キャリアコンサルタントの学習に入ったときに,キャリコンってコンサルじゃなくてカウンセラーじゃないの?と最初は思ったものです(今でも思ってます)。
なのでまぁ聴くことの重要性は重々承知しておりますし,近代カウンセリングのお父さんとも言える来談者中心療法のカール・ロジャース先生が言う
1.無条件肯定
2.共感
3.自己一致
の三つの条件は常に意識してはいます。
しかしながら,話し手が身内だったり,部下だったりすると,教えたい気持ちの方が大きすぎて,ただひたすら聴くという行為がなかなかうまくいかないのです。
ちなみにキャリアコンサルタント要綱では,聴くことに徹しなさいとは言っていません。必要に応じて助言や提案をすることがコンサルタントたる所以なのだと思っていますが,なにしろアドバイスとかチャレンジングなフィードバックって伝えるタイミングがめちゃくちゃ難しいのです。
信頼関係がどこまでできあがっているかを見極めて,挑戦していかないと,普通ひとは他者の助言をそのまま聞き入れることはせずバリアをはってしまうので,こちらの助言提案はスルーされるか,跳ね返されるか,懐疑的に思われてしまうものです。
信頼関係ができあがっていれば受け入れてもらえる可能性はあがります。レセプターをつくるまでの過程にしっかりと時間をかけるのはこのためです(その意味で,傾聴は最重要要素になります)。
しかし一方で『7つの習慣』ではいわゆる積極的な傾聴とか,アクティブリスニングみたいなテクニックのことを指して,共感的に聴くのだとは言っていません。
共感的に聴くというのは,相手の目や耳を心をつかって聴くことだと言うのです。
わかんないでしょ。
わかんないんですよ。
相手の目や耳,心をつかって聴いてしまったら,自分も悲しくなったり,辛くなったりして,問題解決しないんじゃないの?と思うんです。
ところが,そんなふうに共感したとしても,自分は他の人間にはなれませんから,完全に一致するわけじゃあないんですね。共感しても,同情や同調をしてはいけないと言っていますから,あくまでも自分というカウンセラーを保ちつつ,相手が観ている風景を,共に観て感じる努力をすることが,必要なのだと説いているのかもしれません。
いずれにしても「聴くこと」が大事です。
信頼を得るには,全力で聴いてみること。
他を差し置いてでも,まずこれに全霊を傾けてみるとよいでしょう。
そのとき,技術的なことは無用です。
うなづき,あいづち,おうむがえし。ペーシングに言い換え。
いろんな事言いますけれど,一番大事なのは聴く姿勢です。あなたを理解したいのだという気持ちです。
自分の考えを伝えたり,感想を述べたりすることなく,とにかく聴くことに,理解することに徹してください。本気ですべてを理解しようと取り組んでみましょう。
相手があなたに信頼を示し,理解をしてもらえたと心から感じたとすれば,そのときこそ,共感による傾聴ができていると言えるのかもしれませんね。