傾聴という技芸 ―初心者向け
キャリアコンサルティングだけでなく,いわゆるカウンセリングやコーチングなど,対人支援職としての技芸を考えるとき,まず最初に浮かぶのが傾聴です。
中でもActive Listening(積極的傾聴)という,ちょっと攻めた感じの傾聴というわかったようなわからないような技芸ですが,これの落とし穴には初学のひとはもちろんのこと,実際に業務としてこれを積み重ねてきたひとたちにとっても案外ハマっているものです。
傾聴という技芸の落とし穴。
一つは,話し手に見透かされてること
もう一つは,技芸に注力して肝心な傾聴がおろそかになること
その結果,話がぐるぐるし始めたり,進展がなくなってしまったり,クライエントの信頼が得られずに頓挫してしまったりします。
そうなると立て直すのに一苦労です。
立て直すのに必死になると,一方的な質問攻撃になったり,一問一答といういちばんハマりたくないパターンに陥ったり,あるいは価値観の押しつけのようなことになります。
聴き手からみたとき,自身が受けた感情や想いをフィードバックすることは,もちろん悪いことではないのですが,その背景として信頼関係ができあがっていることが条件なのです。
それができていない状態で,フィードバックを行えばもうどう転がるかわかりません。フィードバックやクライエントの価値観へのチャレンジ(矛盾を指摘したり,提案をしてみたり)はそうでなくてもタイミングが難しくて,慎重にかつ大胆に運ばなくてはならないものです。
心理的安全性の確保は何にも増して重要なのはそういう点からもうかがえます。
技芸としての傾聴はいずれにしても必要なものではあります。
一方で,その土台としてのマインドセットもまた欠かせないものです。どちらか一方しかないとすれば,あるいはいずれもまだ自信が持てないのであれば,どちらかと言えば僕はマインドセットに注力したいと考えています。
クライエントに寄り添い,支援する。信頼し,共に問題を解決していきたいというマインドセットです。
うなづき,あいづち,オウム返し。
とおり一辺倒の技は,あっという間に見透かされます。
次にどんな質問をしようか?次はどんな展開にもっていこうか?
などと考えていれば,相手の話が入ってこなくなります。
心配しなくても練習を重ねればいずれ自然にそういった技芸は身につきますから,まずはとにかく相手の話を,相手の感情を,しっかりと受け止めてあげることに注力しましょう。
以下おまけ
傾聴技術に偏っていると,基本,話し手はそれに気が付きます。
(なんかしてますー?とか,僕は言われたことあります。)
いつもと反応が急に変わるからです。オウム返しなんて不自然極まりない反応が続いて,やたら相づちが増えて,そのうえ一言話す度に派手に頷かれてたら,違和感だらけで話す方も嫌な気持ちになります。
派手に頷くなら要所だけでOKです。
オウム返しなんて意識しなくても,話を一生懸命聞いて,ながーい話の語尾だけとらえて返せばOKです。
そんで一段落ごとに,まとめて確認すればOK(要約)。
キャリアコンサルタントの実技試験と現実は全然違うので,実際の面談のときにはとにかく相手の話をしっかり聴いてあげることだけに全力を注げば大きな失敗にはなりません。
技術的に失敗だとしても,一生懸命は絶対に伝わります。
自分のことに一生懸命なひとに対して,ひとはどうしたって感謝の気持ちを感じるのです。
試験が終わったら,実践経験をどんどん積んでいきましょう!