学習塾のためのコーチングを学ぶ#3
もう少し具体的な話をしましょう。
学習塾向けのコーチングと、一般的なコーチングでは、セッションを継続するうえでの戦略が異なります。
一般的なコーチングでは、初回1on1の多くをラポール形成(信頼関係の構築)と目的や目標、方針の合意形成に使います。
コーチングのコアですから、丁寧に、時間を掛けて行うのが普通だと思いますし、少なくとも僕がこれまでやってきた「多重関係のない一般的なコーチング」においては、最初のセッションはとりわけエネルギーを注いでいました。
その後、月に1回のセッションで、それまでにとった行動を振り返り、改善点や新たな行動ポイントをコーチと相談して決めていきます。
普段どういった行動をしているのかをコーチは確認することができませんから、対話によって本人が普段の行動を振り返る際、様々な質問をしていくことでクライエント自身も気が付かなかったことに意識することで認知が拡がっていきます。
したがって一回一回の1on1セッションの負担は相応に大きく(それがコーチングなのですから当たり前っちゃ当たり前です)、エネルギーを使うところです。
また、行動は基本的にクライエント任せになりますし(これも主体性を求めている以上、当たり前っちゃ当たり前です)、フィードバックがもっとも効果を発揮する行動の直後には行えません。今まさに行動した直後のフレッシュな気持ちや想いにはアプローチできないことになります。
対して学習塾向け(上司と部下や親子のコーチングでも同じです)のコーチングでは、普段から関わる時間も長く、対話を行う回数も多いので、1回毎のセッションの負担を減らすことができますし、行動に対するアプローチも少しずつ行えるので理想的です。
行動の直後にフィードバックができますし、ひとつの行動に対して、ひとつの問いかけができるため、マルチ質問を避ける意味でもとっても効果的です。
現場でその行動を実際に見ていれば、その時の状況や感情を察することもできるかもしれませんし、そういった機微に気が付きやすくなるかもしれません。
逆に言えばこの普段の関わりが短く、断続的に行えることがウィークポイントでもあります。
つい余分なことまで口を挟んでしまったり、言わなくてもいいことまで言ってしまったりすることでラ・ポール形成が壊れてしまったり、承認度合いが少ないとモチベーションを下げることに繋がりかねませんし、反対に関わりすぎてしまって依存度をあげてしまうこともあるでしょう。
したがって、学習塾におけるコーチングを成立させるためのポイントは、普段の関わりをどうコーチング寄りにしていくかということです。
そして、もうひとつのポイントは自身のポジションをカウンセラ(セラピスト)寄りに置くことです。
学習塾の講師や塾長、教員といった職業の方は、おそらくティーチングやコンサルティングが身についてしまっていると思います。
理由は2つ。
子どもはまだ未熟で、大人に教わったり、しつけられたりする存在であるとしてこれまで接してきているだろうこと。
そもそも教科書の内容を教えるのが仕事であること。
ですね。
ここでこれらの正誤を議論する必要はありません。
コーチングにおいては、これらの考えが邪魔することがよくあるのだということだけ覚えておいてください。
コーチングは万能ではありませんから、これらの考え方が必要なタイミングもあるでしょう。一方でコーチングを学習塾に導入したいのならこれらの考えは早期に手放すことをオススメします。
それがすなわちカウンセラ寄りに身を置くことをポイントにあげた意味です。
大人や子ども、年齢、経験値、などによらず、ひとは基本的に対等です。
僕のコーチングではそこがスタートです。
こういうのを横の関係性と言っています。
横の関係性を推奨する理由は、縦の関係性では、主体性を育むことが難しいからです。主体性を求めておらず、単に「知識を詰め込んだり、問題を解くことができるようになること」を目標として掲げているのならコーチングは不要なのです。
無理矢理やらせるだけでなく、誘導や脅迫などを含めた広義の強制性を一切持たないこと、コーチが教えたり、伝えたり、やらせたり、指示したり、するのではなく、基本的に「聴く」姿勢を持つこと。
これがカウンセラーのポジションです。
横の関係性を意識したカウンセリングポジションを基軸に考えてみてください。
《#4へつづく》